2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26288011
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
坪井 泰之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00283698)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズモン / 光ピンセット / 顕微鏡 / 蛍光スペクトル / 共鳴励起 / 熱泳動 / シアノバクテリア / 光マニピュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は光共鳴効果に基づく(1)色素会合体ナノ微粒子の選択的捕捉、(2)DNAのサイズ依存による空間選択的捕捉、(3)シアノバクテリアの捕捉と固定、以上の三つを推進した。 (1)色素会合体ナノ微粒子の選択的捕捉: 光ピンセット技術を用いて微粒子を選択的に捕捉したい。我々は分子配列が分極率の違いを通じて 捕捉挙動に影響を及ぼすと考え、J会合体とH会合体が混合している蛍光性色素溶液を用いてプラズモン光捕捉を行った。蛍光強度のプラズモン励起光強度依存性を詳細に調べた。プラズモン励起に伴いJ会合体の蛍光強度がH会合体よりも増加した。この結果から、J会合体の輻射圧がH会合体よりも大きく、J会合体が優先的に捕捉されていると考えられる。本研究では、分子配列に基づく捕捉挙動変化を追跡することで選択的光捕捉の新しい手法を見出した。 (2) 2)DNAのサイズ依存による空間選択的捕捉: 貴金属ナノ構造のプラズモン増強電場で分極した粒子には強い輻射圧が働くため、効率的な光捕捉が可能となる。一方、光照射に伴う光熱効果の影響で急峻な温度勾配が発生する。その結果、粒子には輻射圧と逆方向に熱泳動力が働く。これら輻射圧と熱泳動力はDNAの塩基対数に応じて変化するため、大きさの異なるマイクロリングを形成する。このリング径の違いを利用し、塩基対数の異なるDNAを分離するプラズモン光クロマトグラフィーの実証を目指した。まだ完全ぬいは達成できていない。熱泳動力を定量的に評価するため、マイクロメートルスケールの局所温度マッピングを行い、温度勾配と熱泳動力の定量に成功した。 (3)シアノバクテリアの光捕捉と固定: マイクロバブル形成を制御することで、リング形状に集合・固定化するシアノバクテリアの個数の制御だけでなく、シアノバクテリアの1個のみを固定化することにも成功した。固定化された細胞の蛍光スペクトルより、細胞損傷は殆どないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に示したように (1)色素会合体の光共鳴効果に基づく選択的光捕捉に成功している、(2)サイズの異なるDNAの空間選択的捕捉に成功している、(3)新たな捕捉対象として光合成色素を内包したシアノバクテリアを開拓した。 これらより概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
分子光マニピュレ―ションでは、理想的には、永らく光化学の対象であったポルフィリン類などが光捕捉できれば面白い。我々が使用してきた貴金属ナノ構造基板は、輻射圧の増強効果は104程度にまで達する。一方、光共鳴効果によるは理想的には104にまで達すると予想される。この二つの効果を合わせれば分子レベルの捕捉も原理的は可能であるが、まずは近赤外色素をペンダントしたビニルポリマーで、分子量が10万以上のものを対象にし、「光共鳴分子マニピュレーション」の端緒をつかむ。これに成功すれば、徐々に分子量が小さくても捕捉できるように、ナノ構造の最適化や励起波長の制御を行う。さらに、そのような一連の研究において、我々は、プラズモン光マニピュレーションでは、単純な輻射圧の増強だけではなく、熱対流や、極端に大きい温度勾配(非平衡場)に基づく物質輸送力(熱泳動力、)などの副次的な効果が増強輻射力と競合して発生し、時にはその効果は輻射力と拮抗しうることをつきとめた。理想的な分子マニピュレーションを実現するには、輻射圧を増強するだけでなく、このような非平衡場に基づく効果を精密に制御しなければならない。輻射圧とこのような競合する力を定量的に評価する手法を開発し、それらを制御する手法を編み出し、ナノメートルサイズの分子、高分子の安定な光マニピュレーション法を確立する機構と特徴の本質的理解も目指す。捕捉の様子は、「単一分子蛍光追跡法」により、ナノホールアレイの周期ポテンシャル内を拡散する様子を実時間観測する。
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Causes of Carryover |
定常的にに使用している高輝度レーザーのメインテナンス時期が28年度の予想されるため、基金の繰越で対応するため。さらに、前任地での使用設備が急遽必要になる可能性が高く(原子間力顕微鏡)、その対応のために繰越を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
YAGレーザーメインテナンス(H28年6月を予定): フラッシュランプ交換など 原子間力顕微鏡: 立ち下げ、立ち上げ、移設(H28年夏)。
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Research Products
(15 results)