2015 Fiscal Year Annual Research Report
非共有結合性相互作用を利用する炭素-水素結合変換反応の開発
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26288014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
國信 洋一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40372685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | C-H結合変換 / 非共有結合性相互作用 / 水素結合 / Lewis酸-塩基相互作用 / ボリル化 / シリル化 / メタ位 / オルト位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Lewis酸-塩基相互作用や水素結合のような非共有結合性相互作用を利用する、高位置選択的な炭素-水素(C-H)結合変換反応を開発することを目的として研究を遂行した。C-H結合活性化を経る変換反応では、従来の有機合成反応に比べ、反応工程数の短略化や副生成物の低減などが期待できる。さらに、従来の有機合成反応の代替やこれまで合成できなかった化合物の合成が可能になることが期待される。前年度に、触媒配位子と基質の官能基間での水素結合を利用することにより、メタ位選択的なC-Hボイル化反応を開発することに成功した。本反応は、水素結合によりC-H結合変換反応の位置選択性を制御した初めての例であり、Nature Chemistry誌に掲載していただくことができた(Nature Chem. 2015, 7, 712)。本研究に関しては、プレスリリースするとともに、様々な新聞や紹介記事で取り上げていただくことができた。さらに、非共有結合性相互作用を利用する分子間でのC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応の予備検討として、分子内でのC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応による含ヘテロ原子π共役系化合物の合成を達成し、学術論文として報告した(Chem. Eur. J. 2015, 21, 8365)。また、2つの基質間でのLewis酸-塩基相互作用を利用する芳香族化合物のオルト位選択的なC-Hシリル化反応についても、学術論文として報告した(Org. Lett. 2015, 17, 1758)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたように、水素結合を用いる芳香族化合物のメタ位選択的なC-Hホウ素化反応やLewis酸-塩基相互作用を利用する位置選択的なC(sp2)-H結合変換反応を達成することはできた。しかし、もう1つ予定していたLewis酸-塩基相互作用を利用するC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応は、その予備的検討である分子内でのC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応による含ヘテロ原子π共役系化合物の合成に成功した段階までしか進んでおらず、また、C(sp3)-H結合の位置選択的なC(sp3)-H結合の位置選択的な変換反応もまだ達成できておらず、平成28年度以降も検討する余地が残されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き水素結合やLewis酸-塩基相互作用を用いる芳香族化合物の位置選択的なC-H変換反応の開発を行なうとともに、平成27年度に達成できなかったLewis酸-塩基相互作用を利用するC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応や、C(sp3)-H結合の位置選択的な変換反応について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
反応探索研究を行なった結果、予備実験にて設計した水素結合を利用するC(sp3)-H結合の位置選択的な変換反応において、水素結合に関与する基質の官能基が存在すると、目的の反応が進行しなくなってしまうことが判明した。研究遂行上、この影響を排除する必要があることから、文献をもとに反応と触媒系を再設計し、反応探索実験をやり直す必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた計画に比べ、変更後の計画では完了時期が4か月遅れるため、その期間の研究で使用する薬品やガラス器具などの購入を行なう予定である。
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