2014 Fiscal Year Annual Research Report
固体物性発現を指向したバッキーボウル分子の設計と合成
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26288020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 英博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00262147)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スマネン / カラム状積層構造 / 還元反応 / ヘリングボーン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フラーレン類の部分骨格、あるいはカーボンナノチューブのキャップ構造に相当するお椀型共役化合物「バッキーボウル」が有する個体状態における独特のモルフォロジーを精緻に制御する手法を確立して、電気伝導性、発光性、強誘電性などの様々な物性を発現するための分子設計、およびその合成手法の開発を行うものである。 今年度の主な成果としては、お椀型骨格のスマネンに、典型的な平面型共役化合物であるピレンを連結させた分子を設計合成し、その結晶構造におけるそれぞれのモチーフの役割を調べたところ、お椀による垂直積層構造がより支配的であるが、ピレンユニットもやや緩んだヘリングボーン構造を保持している、いわゆるdual packing構造を形成することを明らかにした。今後はこのピレンースマネン連結体の固体物性を明らかにするとともに、TTFなど他の平面共役系分子との連結体を合成し、結晶構造のデザインと固体物性発現を目指す。また、お椀構造の連結体であるスマネン二量体の合成にも成功し、その構造、動的挙動の詳細についても明らかにした。 一方、スマネンのベンジル位をオキソ化したスマネントリオンについて、今回初めてそのX線単結晶構造解析に成功し、スマネン誘導体では初めてお椀が完全に重なり合ったエクリプスド型積層構造を有していることを明らかにした。これは今後の結晶設計に非常に重要な知見である。同時にその還元挙動についても明らかにし、2電子還元までは可逆で安定な誘導体が得られることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は合成研究を中心に計画しており、概ね狙い通りの化合物合成に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はTTF連結スマネンなどを中心に、さらに様々な化合物の合成を行うとともに、固体物性測定を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
博士研究員、および博士課程大学院生を、大阪大学に異動した10月より1年計画で雇用することにしたため、年度をまたいだ計画となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
博士研究員ならびに博士課程大学院生のRA費用に充てる。
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