2015 Fiscal Year Annual Research Report
固体物性発現を指向したバッキーボウル分子の設計と合成
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26288020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 英博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00262147)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スマネン / 内部炭素 / 可溶媒分解 / フリーデルクラフツ反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フラーレン類の部分骨格、あるいはカーボンナノチューブのキャップ構造に相当するおわん型共役化合物「バッキーボウル」が有する固体状態における独特のモルフォロジーを精緻に制御する手法を確立して、電気伝導性、発光性、強誘電性などの様々な物性を発現するための分子設計、およびその合成手法の開発を行うものである。 27年度の研究のうち最も重要な成果は、スマネンの内部炭素への置換基導入を達成したことである。これまでスマネンへの置換基導入は、ベンジル位や芳香環など、すべてスマネンの外縁部であり、スマネンの内部への置換基導入の例はなかった。今回、ヒドロキシスマネンに対し、ブロモ化に続く可溶媒分解によって、ヒドロキシ基などの酸素官能基をスマネン内部に導入できることを見出した。さらにFriedel-Crafts条件によって、炭素官能基も導入可能である。このことはスマネンの軸方向へ官能基を導入できることを意味しており、すなわち、金属表面などに対し、おわんをアームを介して整列配向させることができる可能性がある。 スマネン内部に置換基が導入されることにより、お椀反転が止まり、それぞれのエナンチオマーを安定な状態で単離することができる。これは今後キラル曲面を持つ物質としての応用が期待されるだけでなく、基礎有機化学としての学問的用途にも広く応用が可能である。その一例として、Friedel-Crafts反応における反応機構の解明にエナンチオマーを利用した。具体的には、単一エナンチオマーから反応を始めることにより,Friedel-Crafts反応の中間体としてお椀曲面上にカルボカチオンが生成すること、またこのカルボカチオンが非常に反応性が高く、お椀反転をする前にお椀の凸面選択的に求核剤と反応することを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生の早期卒業などで、計画より遅れている部分もあるが、27年度に見出したような、スマネンの内部炭素への置換基導入など、当初の想定になかった結果も得ており、相殺してほぼ概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、学生の卒業で一時中断していたTTF置換スマネンの研究も再開すると同時に、27年度に見出した内部炭素置換スマネンの研究に注力する予定にしている。
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Causes of Carryover |
人件費として計上していた分が、実際の勤務時間のズレにより、若干余剰金が発生したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験研究に用いる物品費として使用する。
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