2016 Fiscal Year Annual Research Report
開閉機構をもつ新規なカゴ型錯体の合成と応答型物質捕捉・放出制御への応用
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26288022
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
秋根 茂久 金沢大学, 物質化学系, 教授 (30323265)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 機能性錯体 / ホスト・ゲスト化学 / 応答機能 / 構造変換 / コバルト / カゴ型構造 / 多核錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、外部から隔離された内部空孔を有するカゴ型分子の性質が注目されている。これらの分子は、物質を取り込み、その物質を反応させる場として利用できることが期待されるため、活発に研究が行われている。これまでに、各種カゴ型有機分子や錯体分子の構築法が確立されてきており、その閉空間における分子の反応性などが明らかにされてきた。しかしながら、これまでの多くのカゴ型分子は、物質の取り込み速度や放出の速度を能動的に制御するのは困難であった。すなわち、取り込みや放出の速度は、カゴ型骨格にもともと備わっている開口部の大きさと取り込まれるゲストの大きさの相対的な関係により決まるものという前提のもとで研究が行われてきた。本研究では、これを自在にコントロールできるような、カゴ型構造の新規な開閉機構の創出を目指した。 開閉可能なカゴ型構造の基本骨格として、有機骨格から成るカゴ型tris(saloph)配位子を独自に設計し、ここに、八面体六配位構造を好むコバルト(III)を導入した。salophは四座配位子であるため、コバルトには軸配位子としてさらに二つの配位子を導入することができる。このため、1,6-ヘキサンジアミン(hda)のような鎖長の長い二座配位子を用いればカゴ型構造の開口部を閉じることができる。実際、三つのコバルト原子間を架橋するように三つのhda配位子を導入することで、開口部を完全に閉じられることが結晶構造解析により明らかとなった。さらに、セシウムイオン等のゲストの取り込みおよび放出速度を評価したところ、対応するモノアミン(MeNH2)配位体と比べて著しく遅くなっていることも見出した。従って、カゴ構造の開口部をふさぐ配位子の導入によって物質捕捉・放出の速度を効果的にコントロールできる系を開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したとおり、ジアミンの配位によって空孔の開口部をふさいだ構造の錯体を得る手法を確立でき、狙い通りにゲストの取り込みや放出の速度をコントロールすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆な配位結合により空孔の開口部をふさいだ錯体のゲストの取り込み・放出速度の制御に関する研究を引き続き推進し、応答型の空孔の開閉に関する新技術の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
研究を十分効率的に遂行でき、消耗品の購入を少なく抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度となるため、実験に使用する消耗品に加えて成果発表のための旅費や論文校閲等に使用する。
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Research Products
(29 results)