2014 Fiscal Year Annual Research Report
双安定性によるO-O結合の可逆的開裂を鍵とする実用酸化触媒の開発
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26288027
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小寺 政人 同志社大学, 理工学部, 教授 (00183806)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非ヘム二核鉄酵素 / 可溶性メタンモノオキシゲナーゼ / カルボキシラトリッチな二核化配位子 / 酸化触媒 / 二核鉄錯体 / パーオキソ二核鉄(III)錯体 / オキソジオキソ二核鉄(IV)錯体 / 高速高効率エポキシ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性中心に二核鉄を有する非ヘム二核鉄酵素として、酸素を還元的に活性化してメタンの水酸化を触媒する可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)などが知られている。これまでに、機能モデル化合物としてカルボン酸含有二核鉄錯体を用いたパーオキソ二核鉄錯体がいくつか報告されている。しかし、これらの化合物は、パーオキソ錯体が非常に不安定であったり、全く活性化されなかったりして、カルボキシラト配位の役割の解明には役立っていない。そこで本研究では、我々の研究室の先行研究であるパーオキソ二核鉄(III)とオキソジオキソ二核鉄(IV)の両者を安定化する二核化配位子と構造が類似したカルボン酸含有二核化配位子H2BPG2Eを用いてパーオキソ二核鉄錯体を合成し、その酸素活性化過程の研究と酸化剤としてオキソンを用いた基質酸素化の研究を行い、カルボキシラト配位の効果を明らかにすることを目的とした。本研究においてパーオキソ錯体の分光学的測定から、酸素活性化機構を明らかにした。またDFT計算により、カルボキシラトドナーが活性中心に及ぼす効果を明確にした。これらにより、二核鉄中心のカルボキシラトドナーはパーオキソ二核鉄(III)の安定化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、オキソンを酸化剤として用いて、BPG2Eの二核鉄錯体を触媒として用いて高速・高効率かつ立体選択的なアルケンのエポキシ化に成功した。現在までに報告されているカルボン酸含有二核鉄錯体を触媒としてこのような高速高効率なエポキシ化が起こった例はなく、我々が知る限り初めての報告例である。また、エポキシ化にとどまらず、不活性なアルカン類についても水酸化反応を試みたところ、高速なアルカンの水酸化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)酸素活性化及び基質酸素化に最適化された非へム二核鉄含有固体触媒触媒の開発として、(a)パーオキソ二核鉄(III)から高スピンオキソ二核鉄(IV)への変換過程及び酸化活性種である高スピンオキソ二核鉄(IV)の反応性の最適化、(b)二核鉄錯体の反応場への固定化による高性能酸化触媒の創製の2点を検討する事を研究目的とした。(a)では、高い酸化活性を示す高スピンオキソ二核鉄(IV)錯体の電子的・構造化学的最適化を検討しており、ある程度の成果を挙げている。即ち、高スピンオキソ二核鉄(IV)錯体の反応性の最適化とO-O結合の開裂を経る生成過程の最適化を目的として、1,2-dipyridylethaneの構造をもつ二核化配位子に電子効果として6-hpaに電子吸引基であるニトロ基や電子供与基であるメチル基とメトキシ基を導入した。またsMMOの活性部位のカルボキシ基や周辺の疎水環境の効果を明らかにするために1,2-dipyridylethaneの構造をもつ様々なカルボン酸含有二核化配位子を合成し、その二核鉄錯体を用いて酸素活性化に成功した。(b)については、本年度以降に検討する。 (2)双安定性を鍵とするオキソ二核金属(IV)錯体のO-O結合生成を経るO2発生触媒の開発として、(a)双安定性を示す二核錯体と様々な酸化剤の反応によるオキソ二核金属(IV)錯体の生成とそのO2発生、(b)電気化学的酸化によるオキソ二核金属(IV)錯体の生成と電極への固定化による実用的O2発生触媒の開発の2点について明らかにする事を研究目的とした。(a)では、O2発生触媒サイクルを構築する。具体的には、双安定性の発現の為に1,2-dipyridylethaneの構造をもつ二核化配位子を合成し、これを用いてM = Mn, Fe, Coなどの二核金属(II)錯体を合成した。その水溶液を用いて、オキソンや次亜塩素酸などの酸化剤により、オキソ二核金属(IV)錯体に変換し、O-O結合の生成を経るO2発生に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は、昨年度までに行って来た研究を継続して行うと伴に、更なる発展を試みる。具体的な研究内容として、(1), (2)を示す。 (1)酸素活性化及び基質酸素化に最適化された非へム二核鉄含有固体触媒触媒の開発として、(a)パーオキソ二核鉄(III)から高スピンオキソ二核鉄(IV)への変換過程及び酸化活性種である高スピンオキソ二核鉄(IV)の反応性の最適化、(b)二核鉄錯体の反応場への固定化による高性能酸化触媒の創製を目指す。(a)については、昨年度までの研究を継続して行い、さらに高性能な二核鉄錯体の開発を試みる。(b)については、固定化の方法を開発する必要があり、本年度以降は(b)の研究に十分な検討を行う。 (2)双安定性を鍵とするオキソ二核金属(IV)錯体のO-O結合生成を経るO2発生触媒の開発として、(a)双安定性を示す二核錯体と様々な酸化剤の反応によるオキソ二核金属(IV)錯体の生成とそのO2発生、(b)電気化学的酸化によるオキソ二核金属(IV)錯体の生成と電極への固定化による実用的O2発生触媒の開発の2点について明らかにする。(a)については、昨年度までの研究である程度のめどが立ったので、これを論文化して報告する。さらに、高性能な酸素発生触媒の開発を試みる。(b)については、本年度以降の研究で、電気化学的手法の開発に着手する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Roles of carboxylate donors in O-O bond scission of peroxodiiron(III) to high-spin oxodiiron(IV) with a new carboxylate-containing dinucleating ligand2014
Author(s)
Masahito Kodera, Tomokazu Tsuji, Tomohiro Yasunaga, Yuka Kawahara, Tomoya Hirano, Yutaka Hitomi, Takashi Nomura, Takashi Ogura, Yoshio Kobayashi, P. K. Sajith, Yoshihito Shiota and Kazunari Yoshizawa
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Journal Title
Chemical Science
Volume: 5
Pages: 2282-2292
DOI
Peer Reviewed
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