2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26288034
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 浩史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60397453)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 金属有機構造体 / 二次電池 / マグネタイト / 磁気スイッチング / 固体電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
真に実用可能なレベルの蓄電(二次電池)特性を有する分子クラスター関連物質およびそのナノ複合材料の開拓とともに、金属酸化物の固体電気化学反応による新奇物性開拓研究にも取り組んだ。 今年度は、これまでの分子クラスター二次電池の研究を基に、金属クラスターとレドックス活性な有機配位子からなる金属有機構造体(MOF)を新規に作製し、金属クラスターおよび有機配位子両方の酸化還元に基づいたより高容量な二次電池の開発を試みた。その結果、2電子の還元を示すアントラキノン骨格を持つ2,7-H2AQDC (2,7-anthraquinonedicarboxylic acid)配位子とCu(II)イオンからなる新規MOF(Cu-MOF)を作製し、これを正極活物質とするLi電池が従来のLiイオン電池に匹敵する容量と50回以上のサイクルでもほぼ容量が落ちないという驚異的なサイクル特性を得た。このように、MOFが、配位子と金属イオン両方の酸化還元に伴う大きな容量とその強固な構造に基づいた安定なサイクル特性を示すことから、高性能二次電池の正極活物質として非常に有望な物質群であることを実証した。 一方で、申請者が独自に立ち上げたin situ電気化学-磁気計測システムを用いて、高い強磁性転移温度を有するマグネタイトの固体電気化学反応による磁気特性の変化を検討した。その結果、放電過程において、マグネタイトはFeイオンの還元とともに、逆スピネル型構造から岩塩型構造、さらには体心立方構造の金属鉄へと大きく構造を変化させ、それに伴う大きな磁性変化を示した。このような変化のうち、1.3 V以上では、逆スピネル構造を保ちながら磁化が可逆的に変化するため、1.8 Vと1.3 Vの間で、室温の磁化を変化率は13%であるものの可逆的に何度も変化させることに成功し、電気化学的な室温磁気スイッチングを実現した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に記載していた通りに、次世代二次電池の正極活物質となる新たな物質群であるレドックスMOFを開発するとともに、その高い電池特性を明らかにした。また、固体電気化学反応を用いた新たな物性開拓という点では、マグネタイトの磁化を固体電気化学反応により室温でコントロールすることに成功した。このように、当初計画通りに研究は順調に進行しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を基に、さらに様々な分子クラスター、MOF、有機ナノ分子の蓄電特性を開拓する。その結果、高い正極充填率(60wt%以上)、高容量(500 Ah/kg以上)、急速充電(数分)、安定なサイクル特性(数千サイクル以上)、プラトー電圧領域の拡大、を実現し、従来の金属酸化物系ではない新しい電池正極材料を真に実用化可能なレベルに近づける。一方で、SWNTやグラフェンよりも大きな表面積を有するナノカーボンとのナノ複合化により、さらに大きな容量などを得ることを試みる。 一方で、固体電気化学による物性開拓に関しては、今年度の成果を基に、ナノ素子への道を切り拓く。具体的には、SWNTもしくはグラフェンと酸化鉄ナノ粒子からなるナノ複合体を作製し、これをナノ素子としてギャップ電極上に置き、電流を流すことによって、酸化鉄の酸化還元に伴う磁性スイッチングを試みる。なお、様々な金属酸化物磁性体を用いることでより高性能な室温磁気スイッチング素子を実現する。
|
Causes of Carryover |
二次電池の研究に関して、今年度は、新しい正極活物質である金属有機構造体の作製と電池特性の測定を中心に行った。この研究を行う上での試薬類やガラス器具、電池部材などはすでに研究室にそろっていたものであり、新規に購入するものは多くなかった。また、固体電気化学による新規物性発現の研究に関しても、測定システムはすでに立ち上げ済みであったため、測定装置のランニングコストのみがかかる程度であった。そのため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今年度に得られた成果をさらに発展させることを目的に、より多くのサンプルの電池特性を測定する目的で、新たに充放電装置を購入する。また、これらの研究をより効率的に進めるために、本研究費で博士研究員を雇用する予定である。さらには、今年度に得た成果を国内・国際会議で発表するための旅費にも使用する予定である。
|
Research Products
(12 results)