2015 Fiscal Year Annual Research Report
メタル化アミノ酸・ペプチドを基盤とする機能性超分子空間の創出
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26288036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高谷 光 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50304035)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子 / アミノ酸 / ペプチド / メタル化アミノ酸 / メタル化ペプチド / 人工酵素 / 超分子ゲル / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
提案課題では、金属錯体を結合したアミノ酸・ペプチドの合理設計に基づく自己組織化によって,単一の錯体では実現不可能な触媒機能,分子認識能,光・電子・磁気物性を有する超分子集合体の創出を目的とした研究を行っている。平成27年度では特に1)メタル化アミノ酸およびメタル化ペプチドの自己組織化を利用した超分子構造体の創出、および、2)メタル化アミノ酸・メタル化ペプチド超分子中に集積された,複数金属間の機能や物性の相互作用に基づく新物性・新機能の創出研究を展開した。 その結果、Ru錯体を結合したメタル化アミノ酸が水中で自己組織化してミセル状の超分子集合体を与えること、これらの集合体が芳香族アルコールおよびメトキシ基を有する芳香族誘導体の酸化反応に高い活性を示し、対応するケトン体やキノン体を高選択的に与えることを見出した。本反応はH2O2という安価で安全な酸化剤を用いており、また0.01 mol%というごく少量の触媒量で進行する環境調和性に優れた反応である。本反応の反応機構やアミノ酸部位による触媒活性向上のメカニズムについても詳細な検討を行った。特に、アミノ酸部位を持たない構造類縁体を用いた酸化反応を行い、アミノ酸部位による触媒活性向上の効果を確認するとともに、反応終了後溶液の水層および有機層中のRu成分についてIPC-MSやNMRを用いて確認し、アミノ酸部位が触媒活性向上のみならず触媒の分解抑制と長寿命化の作用を示すことを明らかにした。 また、本年度研究ではRu結合型アミノ酸を連結したヘキサRuノルバリンペプチドの物性、構造同定についても詳細な研究を行い、これらが溶液中でRu錯体部分を螺旋構造の外側に向けた極めて安定なへリックス構造をとっていること、可視光全域にわたって高い光吸収能を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタル化アミノ酸およびメタル化ペプチド超分子の自己組織化挙動の基礎研究として、小角X線散乱や中性子小角散乱実験を行いメタル化アミノ酸のミセル形成能について明らかにすることができた。また、メタル化ペプチドの溶液構造について、安定なへリックス形成が可能であることを確認した。これらの基礎的知見は、メタル化アミノ酸・ペプチドを使って細孔性の超分子構造体あるいはバレル状超分子集合体を創出する際の、ここのアミノ酸、ペプチドユニットの相互結合様式を解明するために必須の情報であり、最終年度に目的とする超構造体創出研究を行うための基礎的知見が順調に得られたと考えている。また、超分子構造体の機能創出についても、基本構成要素であるメタル化アミノ酸の触媒機能について新奇な反応、新奇な反応機構を発見するに至り、触媒機能開拓のための準備は計画通りに達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究では、前年度までの研究成果をもとに1)へリックス性ペプチドの自己組織化による超分子構造体の創出、ならびに2)Ruアミノ酸およびペプチドの酸化特性を活かした新規反応の開拓を行う。特に2)では基質ターゲットとして再生可能炭素資源として重要な木質リグニンをもちいたバイオリファイナリーによる有用芳香族生産を目指す。すでに、木材から抽出した磨砕リグニン類やリグニンダイマー類から選択的にキノン類や芳香族アルデヒドが得られることを確認しており、超分子触媒やリグニン認識ペプチドを結合した人工酵素系の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
本課題は申請時3年課題であったこと、平成27年度に研究室で火災があり、10ヶ月間実験が停止したために予定していたメタル化アミノ酸・ペプチド合成に必要な実験器具、薬品類等の購入が無かったため支出額が申請額に到達しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では申請書記載通りにメタル化アミノ酸・ペプチド合成を行う予定であり、試薬、実験器具、消耗品類の購入に繰越額全額を使用する。
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Research Products
(22 results)