2015 Fiscal Year Annual Research Report
イリジウム錯体積層膜を用いた多重発光性センシングデバイスの開発
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26288039
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20500359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 伸一 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30164403)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
イリジウム(III)錯体は、近年燐光型発光材料として注目されている化合物である。本申請者らはラングミュア・ブロジェット(LB)法によって両親媒性Ir(III)錯体と粘土鉱物ナノシートとの複合膜(厚さ数ナノメーター)を製造し、発光性気体センサーとして用いることに成功した。今回この発展として、気体の種類や圧力によって、発光色が変化する多重発光性センシング膜を開発する。異なる発光色(青色、黄色、赤色)を示す異種の金属錯体からなる層を人工積層し多層膜を製造する。膜中への気体の侵入程度によって消光される錯体が変わり、その結果、加算される発光色が気体の圧力や種類によって変化する。さらに、錯体間で起こるエネルギー移動を、表面密度や挟み込む粘土ナノシートの層数を変えることによって制御し、光エネルギーの効率的集約を実現する。 本年度は発光波長の異なる2種(青色発光および赤色発光)のIr(III)錯体をコロイド状合成サポナイトに吸着させ、それらの間で起こるエネルギー移動反応を調べた。特に、移動効率におよぼすキラリティの効果に着目した。その結果、同じ粘土面に吸着させた場合のみ粘土面における効率的なエネルギー集約に成功し、これらをもとに、人工光合成の新しいモデルを提案した。すなわち光合成系に見られる光捕集系(多数のアンテナ分子が捕獲した光エネルギーが少数の集約分子へ流れる)のモデルを構築した。その結果を王立化学会の物理化学雑誌において、論文化(論文の裏表紙に採択)した。一方、発光性酸素センサーへの応用に関しては、LB膜製造方法の再現性の向上を実現でき、発光強度が小さかった赤色発光の増大に成功し、学会発表にて成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
王立化学会の物理化学雑誌において、論文化(論文の裏表紙に採択)された論文をはじめ、順調に推移している。 関連学会発表もおこない順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回用いるイリジウム錯体は配位によるΔΛ異性を有する。これに着目し、エナンチオマーの一方を発光性錯体とした複合膜を製造する。得られた膜によって、キラルな分子によるエナンチオ選択的消光作用に基づくキラルセンシングを試みる。
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Causes of Carryover |
固体用蛍光測定セル、キラル物質や光学分割カラムなどを検討していたが、さらに特注により性能向上をはかるため時間を要した。来年度にキラル測定用装置の向上を含めて検討する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特注セル製作やキラル装置のバージョンアップなどをおこない予定どおり計画をすすめる。
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