2014 Fiscal Year Annual Research Report
高性能脱水素化触媒の開発と低環境負荷型有機合成反応における活用
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26288047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80293843)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イリジウム触媒 / ルテニウム触媒 / 脱水素化反応 / 機能性配位子 / 低環境負荷型有機合成 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでに研究代表者が進めてきた、中心金属と機能性配位子との協働作用に基づいた脱水素化触媒の開発とその活用に関する研究について、格段に発展させることを目的として遂行している。 本年度は最初に、電子供与能が極めて高いことが知られる含窒素複素環カルベンと、α-ヒドロキシピリジン骨格とを連結した新しいキレート構造の機能性配位子を得ること成功した。さらに、この配位子を有する新規イリジウム錯体を合成し、その構造をスペクトルデータ解析ならびに単結晶X線構造解析によって明らかにした。 次に、脱水素化錯体触媒の中心金属として従来用いてきたイリジウムに代わり、8族遷移金属のルテニウムを有する新規錯体を合成した。このとき、機能性配位子として6,6'-ジヒドロキシ-2,2'-ビピリジンならびに6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジンを有する一連のルテニウム錯体を得ることに成功した。 続いて、イリジウムおよびルテニウム錯体触媒を用い、アルコールを原料とする脱水素的変換反応について調査した。その結果、(1)機能性含窒素複素環カルベン配位子を有するイリジウム錯体触媒を用いることにより、アルコールの水溶媒中での脱水素的酸化によってカルボニル化合物を得る反応が、(2)機能性6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることにより、第二級アルコールの脱水素的酸化によってケトンを得る反応が、そして(3)機能性6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン配位子を有するイリジウム錯体触媒を用いることにより、ジオールの分子内脱水素的環化によってラクトンを得る反応が、それぞれ高効率的に達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の当初の研究実施計画は、(1)機能性含窒素複素環カルベン配位子を有するイリジウム錯体の合成、(2)機能性ビピリジン系配位子を有するルテニウム錯体の合成、(3)新規錯体触媒を用いるアルコールを原料とする脱水素的変換反応の開発、であった。これら(1)~(3)のいずれについても、当初の計画どおり順調に進展し、目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降も当初の研究実施計画にしたがって遂行していくが、触媒的脱水素化を基軸とする低環境負荷型分子変換反応によって合成対象とする有機化合物を、アルデヒド、ケトン、ラクトン、カルボン酸、アミド、ラクタム、イミン、ニトリル、等にまで拡張して研究を進める予定である。また、脱水素化反応による水素製造の観点からも研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、従来から当研究室が所有していた試薬やガラス器具等を有効活用したため、物品費の執行額を抑えることができた。 また、研究成果発表費用の一部を大学運営費交付金によって支払ったため、その他費用を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記により生じた次年度使用額は、主として試薬、ガラス器具、ガスボンベ等の物品費(消耗品費)の購入に充てる予定である。 また、平成27年度に交付を受ける経費については、当初の計画どおりに執行する予定である。
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