2015 Fiscal Year Annual Research Report
メタラサイクルを経由した炭素―炭素結合切断反応による分子骨格再構築化
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26288052
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木村 正成 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10274622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重光 保博 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50432969)
小野寺 玄 長崎大学, 工学研究科, 助教 (90433698)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニッケル / 多成分連結 / ジケテン / 切断反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニッケル触媒と有機亜鉛又は有機アルミニウムによる相乗効果を利用した炭素―炭素二重結合の切断反応は学術的にも極めて珍しい。今回、置換ジケテンやアルキン類との反応を精査し,反応基質の許容性を検討した。 系中でジケテンを調製し,one-potでのフェニル酢酸誘導体の合成法を確立した。例えば,酸ハライドを塩基処理し,系中で調製したケテンを利用した反応を開発した。 また,アレンと二酸化炭素による触媒的[2+2]環化付加反応を利用したジケテン合成の開発を検討した。 様々なメチレンラクトンやエノール化合物等の置換アルケンへ拡張し,新形式芳香族化合物合成を開発した。 プロパルギルアミンやアルコールを用いて,アルキン炭素へのヘテロ求核種の付加反応と炭素―炭素多重結合の切断反応を同時に経由したベンジルアミン,ベンジルアルコールの新規合成法を開発した。本法は,エナミンやエノールエーテル骨格の分子変換として期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニッケル触媒存在下,ジケテンに対してアルキンと有機亜鉛及び有機アルミニウムを添加すると,用いる有機金属化合物の種類により反応挙動が異なった。例えば,ジメチル亜鉛を用いて反応を行うと,ジケテンのエノール炭素-酸素間結合が切断反応を受け,アルキン挿入とジメチル亜鉛のカップリング反応を同時に受け,ジエニルカルボン酸の位置及び立体選択的合成が可能になった。一方,トリメチルアルミニウム共存下で同形式の反応を行うと,アルキンの二量化反応を伴いながら,ジケテンとメチル基の付加反応が同時に進行し,トリエニルカルボン酸を選択的に与えた。興味深いことに,トリメチルアルミニウムの代わりにジエチルエトキシアルミニウムを添加すると反応挙動が劇的に変化する。ニッケル触媒存在下,ジケテン,アルキン,ジエチルエトキシアルミニウムを添加すると,フェニル酢酸誘導体が選択的に得られた。更に,同条件下において,トリフェニルホスフィン配位子を加えると,対称性フェニル酢酸が得られた。本反応では,まずジケテンの炭素-炭素二重結合が切断し,引き続きアルキンとの付加反応が進行しているものと予想される。 ジエチルエトキシアルミニウムの代わりに,ジメチルメトキシアルミニウムを用いたところ,フェニル酢酸ではなく,ヘキサジエン酸が得られた。生成物は,一見するとジメチル亜鉛を用いた生成物と異性体の関係にあるように思われるが,両者の間では,異性化を示さない。本反応もジケテンの炭素-炭素二重結合が切断を受けながら進行しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で開発した反応を鍵反応として活用し,生理活性物質の簡便的合成法を開発したい(Scheme 12)。ジケテンとアルキンから合成したフェニル酢酸に対し,C-H結合に対する直截的ヘック反応を介したタンデム反応を検討する。最終的には,抗腫瘍性抗生物質であるkedarcidinの主要骨格であるβ-ナフトールカルボン酸の効率的合成を開発する。 以前,申請者らは,ビニル環状カーボネート又はβ-ヒドロキシペンテン酸に対し,ニッケルやパラジウム等の低原子価金属を触媒として作用させると,メタラサイクル中間体を経由し,炭素-炭素結合が切断反応を受ける新規反応を見出した。本反応では,メタラサイクルのβ-炭素が脱離反応を受け,アルデヒドとジエン又は二酸化炭素とジエン類への官能基変換を可能にする点が特徴であり,極めて珍しい炭素結合切断機構で進行する。本研究課題では,この現象を拡張し,不飽和炭化水素存在下におけるメタラサイクルを活性中間体とした分子変換反応を開発する。具体的には,金属触媒及び有機亜鉛存在下β-ヒドロキシペンテン酸と不飽和炭化水素を用いた炭素―炭素結合切断と炭素骨格再構築化のタンデム反応を目指す。 また,最近であるが,1,3-プロパンジオールをSc(OTf)3触媒と反応すると,アルケンとアルデヒドを与えるβ-炭素脱離反応を見出した。Sc(OTf)3触媒作用の拡張性があまり期待できない場合には,鉄系元素を触媒とする同形式の反応を検討し,新たな炭素骨格形成を開拓する。更に,糖鎖やポリヒドロキシ化合物を用いた高効率変換反応の開発へ挑む。酵素反応に匹敵する位置選択的な炭素―炭素結合切断反応の開発を目指したい。
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Causes of Carryover |
次年度に国際共同研究をおこなうため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツ・ドルトムント工科大学と国際共同研究をおこなう。
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Research Products
(13 results)