2014 Fiscal Year Annual Research Report
炭素ー水素結合活性化を基軸とする分子内redox反応を用いる環化反応の開発
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26288053
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
秋山 隆彦 学習院大学, 理学部, 教授 (60202553)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C-H結合官能基化 / ヒドリド移動 / 立体選択性 / 炭素ー炭素結合生成反応 / 不斉合成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素ー水素結合の活性化反応は,ハロゲン化物等の副生を伴なう事無く,新たな、炭素ー炭素結合の構築を行う事が可能となるため,グリーンケミストリーの立場からも重要な反応の一つである.これまで,遷移金属錯体を触媒として用い,等量以上の酸化剤を用いた,炭素ー水素結合の活性化反応が活発に研究されている.我々は,分子内で酸化と還元を同時に行う,分子内レドックス反応を伴う,炭素ー水素結合官能基化反応に着目し,研究を行ってきた.本反応は,[1,5]-ヒドリド移動とそれに引き続く環化反応により,含窒素環状化合物等の有用な骨格の合成を達する事ができ,高価な遷移金属錯体を必要とする事なく,更に,酸化剤を添加する事なく,反応が進行する事から,有機合成化学的にも有用な反応であると考えられる。本研究では,分子内レドックス反応の,更なる展開を目指し,強力に研究を進めている。平成26年度には,電子求引性の高い含フッ素化合物を基質として用いた,分子内レドックス反応の開発に成功した。トリフルオロメチルケトイミン部位を求電子部位として有する基質を用いる事により,ブレンステッド酸触媒あるいは,ルイス酸触媒を用いる事により,分子内レドックス反応が効率良く進行し,対応するテトラヒドロイソキノリン誘導体が収率よく得られる事を見出した。興味深い事に,窒素上の置換基を制御する事により,環化体のシス体とトランス体を制御し,それぞれの環化体を立体選択性よく得る事に成功した。すなわち,窒素上が4-メトキシフェニル基の場合には,シス体が優先し,窒素上に置換基を持たない,N-Hケトイミンを用いると,トランス体が優先して生成する事を見出した。本反応は,Sc(OTf)3等のルイス酸触媒を用いる事も可能であるが,ブレンステッド酸であるTf2NHを用いた際に,最も効率良く反応が進行した。本反応の立体選択性の発現の理由についても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた様に,新たな分子内レドックス反応を開発する事ができた。本反応は,Wiley-VCHが発行しているAdv. Synth. Catal.に掲載され,更に,VIP paperならびにCover pictureにも選ばれ,高い評価を得た。また、連続的な分子内レドックス反応についても,興味ある結果を見出しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
分子内レドックス反応の更なる展開を目指して,強力に研究を推進する予定である。通常の分子内レドックス反応の展開を図ると共に,以下の2点について注力し研究を展開する予定である。 (1)連続的な分子内レドックス反応 (2)エナンチオ選択的な不斉触媒反応への展開
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Causes of Carryover |
分子内レドックス反応を推進するために,高価な遷移金属錯体の購入を計画していたが,予想に反して,安価なブレンステッド酸触媒で効率良く進行させる事ができた。そのために,試薬代は申請時の予想額に比べて安価であった。また,研究発表の旅費については,学生が東京近郊で学会発表を行ったのみであり,遠方の学会で発表する機会がなかったため,旅費としては用いなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分子内レドックス反応の開発を強力に推進するために,試薬代を中心に使用する。また,研究成果の発表も積極的に行う予定であり,そのための予算にも用いる予定である。
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Research Products
(6 results)