2014 Fiscal Year Annual Research Report
THz域誘電スペクトル測定による高分子溶液の超高速ダイナミックスの研究
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26288055
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
四方 俊幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10178858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 文彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (50107695)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子物性 / 水和・溶媒和 / テラヘルツ分光 / 誘電スペクトル / 回転緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの高分子物質の溶液研究では、溶媒を連続媒体と見なし、その中で高分子鎖がブラウン運動しているという描像を基本に、平均的な高分子の形態と分子運動のみが議論されてきた。従って、モノマーオーダーの分子運動が溶媒との相互作用も含めて一般的に理解されているとは言い難い。本研究では、溶液中での溶媒分子の並進および回転の分子運動が完全に終息するTHz域までの超高周波誘電スペクトルを捉える測定手法を用いることで、溶解した高分子物質と溶媒の分子運動の階層性を完全に理解することを目指した。 代表者は、フェムト秒レーザー技術を用いた分光装置開発の専門家ではないため、THz域誘電スペクトル測定を行える市販装置の中で、最も測定精度が高いと判断されるものを選定し、平成26年度に導入した。このTHz分光システムはTHz域での吸光度を測定する目的で開発されたものであるが、吸光度の周波数依存性を複素屈折率、さらに複素誘電率へと変換する。また、減衰全反射(ATR)法の採用で、水などTHz波の吸収が非常に大きな物質の測定も可能である。 しかし、THz分光装置が納入されても高精度な測定が行えるまでには、解決しなければならない技術的な問題が幾つか存在する事が明らかになったので、本年度内はその解決にほとんどの時間を費やすことになった。THz分光システムの構築完了の判断は、水のTHz域誘電スペクトル測定の結果を基準に行う。THz域での純水の誘電特性については信頼できる値が幾つか報告されているので、それらとの比較が容易である。水の測定結果が、文献値と全く同じ誘電スペクトルとして得られた段階で、装置の調整が完了したと判断する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、THz域誘電スペクトル測定を行える市販装置の中で、最も測定精度が高いと判断されるものを選定し、それを導入することで概ね終了した。引き続き、高精度な測定が行えるように導入された装置の微調整を行う必要があるが、研究としては概ね予定通りの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
THz域誘電スペクトル測定装置の技術的困難を解決した後、装置の性能を最大限に生かした広帯域(50GHz~4THz)誘電スペクトル測定システムを構築し、既存の装置と合わせ1mHz~4THzの世界的に見ても極めて広い周波数域をカバーする誘電スペクトル測定施設を誕生させる。 その後は、完成した施設を用いて、極性溶媒(例えば水)に低分子物質や単純な構造の高分子物質を溶解させた溶液について、広帯域誘電スペクトル測定を開始する。高分子物質としては、ポリビニルアルコールなどの水和数の温度依存が少なく、水酸基等を有するために水和位置が比較的分かり易いものを選ぶ予定である。
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Research Products
(11 results)