2018 Fiscal Year Annual Research Report
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26288066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡會 仁 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 招へい教授 (30091771)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 磁気分析科学 / 磁気泳動モル比法 / 磁気光学効果 / 磁性ナノ粒子 / 磁気線二色性 / 磁気sagnac効果 / 磁気配向 / 溶液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実績を以下に述べる。 1)新磁気化学効果の開拓;①液液界面および固液界面において反射するp偏光およびs偏光の強度に及ぼす横方向からの磁場の影響を測定する装置を製作し、測定条件の基礎的検討を行った。液液界面としては、ドデカン/水系が、固液界面としては、プリズムを用いたガラス/水界面が測定可能であることを確認した。②磁性ナノ粒子は、その超常磁性的物性に基づく特異的な配向性と光学特性を示すことを昨年度までの研究で確認した。本研究で開発した装置により、このような磁気配向性を、液液界面および固液表面で測定できることを確認した。 2)表面プラズモンへの磁場効果;金属蒸着膜を有するガラス基板を用いて、偏光の反射強度に及ぼす磁場の効果を測定し、金属の厚さとの関係を検討した。 3)磁気泳動法の新展開;①大気中において落下する金属微粒子の磁気勾配における落下速度変化の解析から、金属微粒子の磁化率を求める方法を確立した。そしてこの方法を磁性トナーの磁化率の評価に応用した。②配位子を含むマイクロ液滴の金属イオン溶液中での磁気泳動速度を高精度に測定し、金属イオンの抽出量を磁気泳動により決定する方法を検討した。さらにこの方法は、抽出される金属錯体の組成を決定する新しい方法論となることを確認した。 4)新磁気光学効果の開拓;①昨年度までに、溶液の磁気Sagnac効果の測定可能性を確認したが、この年度は、磁気Sagnac干渉を高い信頼性で測定するための幾つかの方法を開発した。そして、磁場によって生じる位相差を用いて、磁性ナノ粒子の分散状態を評価する方法を開発した。 ②磁性ナノ粒子の磁気線二色性スペクトルにより、弱い化学的相互作用により生じる少数の磁性ナノ粒子の会合体を顕著に検出できることを明らかにした。この少数会合体は穏やかな状態でのみ存在でき、撹拌により凝集することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の計画は、申請者がこれまで進めてきた分析化学における新たな磁場および磁性の利用研究を更に発展させるために、①分析化学反応を対象とする新磁気化学効果の開拓、②表面プラズモン発光への新磁気光学効果の探求、③磁気泳動法による単一微粒子の磁化率測定への展開、および④界面・微粒子分析のための新たな磁気光学効果の開拓の四つの研究を遂行することを目標とした。①については、分析化学において基本的な反応である錯生成反応を磁気的に測定する方法を開発し、また、界面反応の磁気的測定法も開発した。②については、表面プラズモン発光に及ぼす磁気効果を実証し、その発現機構を提案した。③については、固体微粒子、金属微粒子、磁気トナー、有機液滴などを対象として、磁気泳動分析法の応用範囲を広げることに成功した。更に、④では、界面およびナノ粒子の磁化測定法の新原理となる新規な磁気反射分析法を考案・実証した。これらは当初の目的を達成したものである。ここで特筆すべきことは、当初の計画では予想のできなかった、磁気円二色性を利用したキラル認識法の開発、磁気モル比法の開発、磁気Sagnac効果の利用、ゼロ磁気泳動速度法の開発、電磁泳動力を用いる微粒子のダイナミック化学付着力評価、大気中での自由落下磁気泳動法の開発などの成果があった。また、磁性ナノ粒子が緩やかな化学的条件で特異な少数会合体を生成するという予期しない現象が見出され、これは、さらに1年間の研究期間延長の理由となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費の研究により、これまで知られていなかった分離・分析系について様々な磁気効果が見い出された。これにより、磁場を用いる新たな分析法の可能性が大きく膨らんだと言える。特に、磁気泳動の応用研究は、緒に就いたばかりであり、今後様々な均一・不均一系についてその利用法を検討する必要がある。次に、本研究で明らかとなった磁性ナノ粒子の磁気配向検出試薬としての機能は、広範かつ精力的に研究を展開すべき課題である。最後に、磁気Sagnac効果で見出した非磁性溶液における磁気干渉効果は、新しい磁気科学の対象としても、また新しい磁気分光分析法の原理としても研究を緊急に継続展開しなければならない課題である。全体として、本研究は、新たな磁気分析科学の創成に向けて、数々の具体的な成果を提示したと言ってよい。
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Causes of Carryover |
磁性ナノ粒子を用いる新規な磁気分析法の開発研究を進める中で、低濃度領域における異常な磁気光学応答性という解析不能な新規な現象を発見した。この現象を解析するために、磁性ナノ粒子の合成、磁気光学装置の作成および新規の測定が必要となった。物品費50万円は、試薬・光学部品の購入を予定するものであり、人件費50万円は実験補助のアルバイトの費用であり、旅費50万円は成果の発表のための国際学会参加費である。その他として約7万円を使用する予定である。
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Research Products
(7 results)