2014 Fiscal Year Annual Research Report
マルチ銅オキシダーゼによる酸素還元機構の解明と機能改変体の電極触媒としての利用
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26288076
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
櫻井 武 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90116038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 邦重 金沢大学, 物質化学系, 教授 (40252712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酵素機能 / 酸素還元 / 金属酵素 / 機能改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチ銅オキシダーゼによる酸素還元機構の解明(活性酸素種を生成しない酸素の水への変換の仕組み解明) マルチ銅オキシダーゼであるCueOおよびビリルビンオキシダーゼにおいて水素結合ネットワークに存在するグルタミン酸をグルタミンおよびアラニンに変異させ、グルタミン酸が酸素の還元過程においてプロトンの運搬に関与する重要なアミノ酸であることを明らかにした。また、アラニンに置換すると水分子のみで代替のプロトン輸送経路が形成されることを明らかにした。水素結合ネットワークの動的性質について予備的なMD計算を行ったところ、極めて短い時間時間で溶媒の水分子とネットワーク内の水分子が入れ替わっていることが示唆された。二重変異体を結晶化し、酸素還元中間体の結晶構造解析を試みたが、中間体成分の割合の変動と結晶作成中にある程度の速度で構造変化が進行することがネックとなっており、変異体作成および結晶化の条件検討を続けている。酸素還元での第4の電子ドナーとして三核銅部位近傍に存在する非配位性のアミノ酸に着目し、変異導入を行った。これらの詳細な検討は次年度に行う予定である。CueOの高分解能構造情報獲得を目指した中性子回折を行うための巨大結晶の作成を進めている。 マルチ銅オキシダーゼの高機能化(金属酵素の酵素機能を上昇させる試み) マルチ銅オキシダーゼであるCueOにおいてタイプ1銅への配位子であるシステインを非配位性のアミノ酸に置換し、酵素活性の上昇を確認した。しかし、ビリルビンオキシダーゼにおいて同様の変異を行うと酵素活性が低下した。また、CueOのタイプ1銅に配位したヒスチジンの背後の水素結合を切断で、酵素活性の上昇に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は金属酵素による活性酸素種を生成しない酸素の水への変換機構の解明と変異導入により酵素機能を高めるという2つの側面があり、そのため、多様な改変と改変体のキャラクタリゼーションを目指しており、欧米の研究グループと競争状態にあるが、着眼点のユニークさと変異導入の多様さ、ならびに研究スピードにおいて、かなりの部分でリード出来ている。研究の達成度は概ね順調であるが、大きなブレークスルーを目指した中間体の構造解析はある程度進んでいるものの、ハードルが高いことは事実である。また、計算の困難な金属タンパク質のMD計算は予備的計算レベルであり、研究発表できる段階ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素の還元機能でこれまで明らかとなっていない第4の電子ドナーの関与の有無については、総ての可能性のあるアミノ酸残基への変異を完成させたとところであり、今後これらの変異体について、ひとつづつ調べて行く。酸素還元中間体の結晶構造解析については、結晶化の方法とそれを測定にまでこぎ着ける方策についてさらに検討を続ける。水素原子まで可視化するためのマルチ銅オキシダーゼの中性子回折については巨大結晶作成を目指してさらに検討を続ける。酵素活性の上昇については、これまでのようなタイプ1銅近傍ばかりでなく三核銅近傍にも改変の範囲を拡大する予定である。また、今年度から直接電気化学による実験を開始し、酵素機能のより詳細な検討と電極触媒としての改変したマルチ銅オキシダーゼの研究展開を図る。
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Research Products
(7 results)