2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26288079
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 厚夫 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90273797)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アミロイド / ペプチド / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイド線維が凝集することにより沈着する病気は一般にアミロイドーシスと呼ばれている。ペプチド結合を加水分解する能力を持ったミニチュア酵素を設計することで、このアミロイドーシスを治すペプチドを創ることを目指している。アミロイド線維はタンパク質がクロスβシート構造をとり、それが幾重にも重なった結果線維ができ細胞毒性を持つ。アミロイド繊維は、直径約10ナノメートルで長さが数μmであるタンパク質がミスフォールドしたものの集合体である。β-ストランドの特徴的なクロスβ構造を形成する線維長軸に対して垂直に配置されている。アミロイド線維の形成は、アルツハイマー病など30を超える疾患の病理に関連付けられているが、アミロイド線維とアミロイドーシスの形成の基礎となる分子機構は依然として不明であり、いまだ根治する薬が存在しないのが現状である。この状況を打破するため、アミロイド線維によって絡まった狭い空隙しかない内部空間に浸透して作用させること、即ちミニチュア酵素の「小ささ」「細さ」を生かすこととした。さらに、生体物質一般的に分子機構とダイナミクスがどう関連しているのかTHz領域での新しい分光法で探った。 まず設計ペプチドを8種類設計した。これらは、活性部位と思われる領域の疎水性を変化させたり、catalytic triadの最適位置を探るため位置を変化させたものである。この結果、病理と関連があるinsulinおよびアルツハイマー病の原因であるアミロイドβの線維について分解活性を確認し、反応機構として活性部位の最適配置と疎水結合部分が重要であることが示された。また、立体構造解析より細く小さいへリックスである特徴が確認された。アミロイド線維を選択的に分解する物質は今まで存在していなかったことから、この設計ペプチド(ミニチュア酵素)は根源的治療薬として有望な候補となること示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計したペプチドは10種類であったが、実際に合成精製ができたのは8種類であった。8割の成功率ではあるが、残りの2割も創意工夫によって合成にこぎつけたい。合成不能であった理由は、ペプチド合成は有機化学合成ステップの積み重ねであるが、配列によっては極端に収率が落ちるステップが入り込む場合がある。その解決策として、本年度購入予定の吟味されたバルブ等の内部部品を使用した改良型ペプチド合成機を用いることに加え、経験的に収率が落ちる配列を避けること、およびそれでも不可能な場合はペプチドの鎖長をへリックス単位の保持可能な7残基本単位でカットすることで収率向上を行いたい。 機能向上について、ほぼ十分な機能を達成しているが、さらに活性向上に繋げられるのか検討を続けたい。今まで8種類の合成のうち、アミロイド線維分解能が最高であったものは一番初めのものであった。確率的にはアミノ酸置換を行うことでこれから十分改良の余地はあるはず(偶然得たものがベストである可能性は非常に低い)と考えている。特に単独ペプチド分子では機能向上が小さくても、これらを組み合わせたダイマーあるいはテトラマーを形成させ、相乗的な機能向上を目指すこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
前年より引き続き平成27年度にかけて継続して行うことは、機能向上である。高い機能性こそが最も重要な課題であり、本年度は10種類以上の設計合成を行う。現在までの問題点として、安定性が低いため、本来分解が速くなるべき37℃に於いて、逆に25℃と比べ減速してしまう結果を得ている。そこで、αへリックス本体を安定化し高温でも構造を保持させれば、温度による加速効果を享受することが可能となる。このような構造安定化変異体を機能面でも活用する。また、合成した多くのミニチュア酵素の活性を測定するため、迅速に観測可能な新型AFM(前年度購入)による形態観測を効率よく行う。 得られた高活性体の情報、および同じ程度重要なのが想定外に低活性体となったものも非常に貴重な情報であり、これらを集めて整理する。構造情報、機能情報、構造機能相関など、あらゆる角度から分析することで、機能向上に必要なファクターを抽出し、どの部位のアミノ酸がどの働きをしているのかのマップを確定する。この際、機能低下に繋がる変異も有用な情報となる。このロードマップに基づいた合理設計を行い、それぞれのファクターが新規にデザインする際に本当に必要なものなのかを再確認するためのデザイン研究を進める。 また、安定性が低いため、本来分解が速くなるべき37℃に於いて、逆に25℃と比べ減速してしまう結果を得ている。そこで、αへリックス本体を安定化し高温でも構造を保持させれば、温度による加速効果を享受することが可能となる。このような構造安定化変異体を機能面でも活用する。
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