2015 Fiscal Year Annual Research Report
ドメインスワッピングを利用したタンパク質の超分子化技術の開発と機能化
Project/Area Number |
26288080
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
廣田 俊 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90283457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 超分子 / 生体分子 / ナノバイオ / 多量体 / 立体構造 / ドメインスワッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、好熱性水素細菌由来シトクロム (cyt) c552がエタンール添加、凍結乾燥、再溶解の操作により多量体を形成し、2量体はドメインスワッピングしていることを報告したが、3量体以上の高次多量体の形成量はウマcyt cに比べて少なかった。本研究では、cyt c552の高次多量体形成量が少ない原因が、cyt c552のヒンジループが短く、プロトマー間で立体障害が生じるためと推測し、ヒンジループ中のAla18とLys19の間にグリシン残基3つを挿入することによりヒンジループを伸長させた変異体(insG3変異体)を作製した。insG3変異体に対して野生型と同様のエタノール処理を行ったところ、高次多量体の形成量が増大した。さらに、insG3変異体には2種類の2量体が存在し、主成分の2量体ではN末端領域、副成分の2量体ではC末端領域がそれぞれプロトマー間でドメインスワッピングしていることを明らかにした。表面の疎水性を減らしたinsG3/W57K変異体を用いて多量体を作製し、透過型電子顕微鏡で観測したところ、直径7-10 nmの環状構造の像が得られた。Cyt c552を大腸菌内で発現させたところ、ドメインスワッピングによりN末端領域のαヘリックスを交換した2量体が得られ、生体内でもドメインスワッピングが起こることが示された。また、野生型cyt c552と安定性を低下させた4種類の変異型cyt c552について大腸菌内で形成される多量体量を比較したところ、タンパク質の安定性が低下するほど高次多量体の形成量が減少することが明らかとなった。また、4ヘリックスバンドル構造を有するcyt cb562がドメインスワッピングにより2量体を形成することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cyt c552のドメインスワッピングには、N末端領域を交換する場合とC末端領域を交換する場合の2種類が存在することを明らかにし、大腸菌内でcyt c552がドメインスワッピングすることも示した。さらに、cyt cb562がドメインスワッピングにより2量体を形成することを明らかにした。これらの研究成果をそれぞれ学術論文に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、他のタンパク質の多量体形成や細胞内でのドメインスワッピング、シトクロムcとリポソームとの相互作用について調べる。最後に、本研究により得られた結果を総括する。
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Causes of Carryover |
大容量インキュベータ装置の故障により、試料の作製が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大容量インキュベータ装置の購入費の一部に使用する。
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