2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26288089
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森 正悟 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10419418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
舩木 敬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 研究員 (80450659)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 還元速度 / 吸着角度 / 電子寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では色素増感太陽電池の電子移動過程の完全解明を目的とする。特に色素から酸化チタンへの注入と注入後の色素カチオンの還元プロセスの機構解明が必要である。平成26年度では色素のパイ共役の長さと色素カチオンの還元速度の関係、電解質の色素への還元プロセスへの影響、色素の吸着角度と電子寿命の関係、色素の吸着基と注入効率への影響について検討を行った。平成27年度では、色素の部分電荷の影響を明らかにするための構造を設計し、新たな色素を合成した。また吸着角度の異なる有機色素の還元速度、構造の異なるルテニウム錯体色素の還元速度、ターシャルブチルピリジン(tBP)の色素還元への影響、色素の還元に必要な自由エネルギー差、酸化亜鉛と酸化スズ電極を用いた場合の電子寿命、電子寿命の温度依存性について検討した。吸着角度は酸化チタンに垂直に吸着する色素と比べて平行に吸着する色素の方が注入した電子による還元が遅く、またレドックス対による還元が速かった。ルテニウム錯体色素では電解液中に3ヨウ化物イオンを含む場合、ヨウ化物イオンの濃度に関係なく同じ還元速度が測定された。tBPの還元速度への効果はtBPが色素間のホールホッピングを抑制するためであると仮説を立てたが、ホールホッピングは抑制されていないことが分かった。還元に必要な自由エネルギー差は色素の構造によって異なるが、26年度の仮説では説明できない結果が得られた。酸化亜鉛と酸化スズを用いた太陽電池では酸化チタンよりも電子寿命が大幅に伸ばせる色素が見つかった。電子寿命の温度依存性は酸化チタンの粒径によって大きく変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度では仮説を検証する色素の合成に成功しており、また色素の物理的構造、自由エネルギー、色素間のホールホッピング、温度依存、電極依存と多くのパラメータの影響について検討することができ、28年度に検証する多くの仮説を準備することができた。また色素のHOMOの表面積の影響など、仮説の検証も進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
レドックス対による色素カチオンの還元は色素のHOMOと電解液の有効接触面積と色素の電解質の引きつけ効果が影響していることを強く示唆する結果が得られている。28年度ではこれらの効果がより顕著に現れ、定量的に分析する為の色素を設計・合成し、仮説の証明を行う。吸着角度の影響については有機色素とフタロシアニンの比較を詳細に行うことで、実験で得られた結果の一般化を試みる。色素の部分電荷の影響について27年度に設計・合成した色素を用いて電子注入と還元プロセスについて詳細に検討する。酸化チタンの温度依存性について27年度までに得られた結果から導いた仮説を検証する。酸化スズと酸化亜鉛電極を用いた太陽電池に電子寿命に関しては、電極の誘電率の違いからメカニズムを検討し、電子寿命を伸ばす色素の構造を特定する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた設備のメンテナンスと学会参加を次年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度請求額と合わせて次のことに使用する。レーザーの調整を4月に行い、8月に国際学会(XXV International Material Reserach Congress, 招待講演)で発表を行う。
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