2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26288100
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (40115829)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体適合性 / 水の構造 / 高分子表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCS)を用いて、高分子ゲル中のタンパク質分子の拡散挙動を検討した。等電点の異なるタンパク質について、ゲルの電荷の影響を見たところ、負電荷を有するタンパク質ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin, BSA)の拡散係数は、負電荷を有するゲル中では溶液中よりも大きく、正電荷を有するゲル中では溶液中よりもかなり小さいことがわかった。BSAと同符号電荷を有するゲル中では、ゲルとタンパク質間の静電反発力により、ゲル近傍でのタンパク質の動きが激しくなっているのに対して、異符号電荷を有するゲル中では、ゲルとタンパク質間の静電引力のために、タンパク質がゲル近傍に捕捉されているものと考えられる。一方、正電荷を有する卵白リゾチームの場合には、正負いずれの電荷を有するゲル中でも、溶液中よりも拡散係数が小さくなった。リゾチームは、近傍の高分子に、その電荷によらず吸着されやすいことや、自己会合しやすいことが知られており、当該タンパク質の特性が表れたものと考えられる。さらに、半円筒型の石英プリズム上に構築した負電荷を有するPoly(methacrylic acid)ナトリウム塩(PMA.Na)からなるブラシを、正電荷を有するPoly(2-(dimethylamino)ethyl methacrylate)塩酸塩(PDMAEMA.HCl)の水溶液中に浸漬し、和周波発生(Sum Frequency Generation, SFG)分光法により、ブラシ近傍の水に由来するシグナルを測定した。PMA.Na ブラシと溶液中のPDMAEMA.HCl間でPolyion Complexが形成されるのに伴い、水の配向の程度が減少し、O-H伸縮振動帯のシグナル強度が減少することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正あるいは負電荷、さらには双性イオン型、中性等様々な荷電状態、架橋度のゲルを得ることに習熟した。さらに、昨年度購入した蛍光相関分光測定装置を用いて、様々な高分子ゲル近傍の生体分子の拡散挙動を観測し、得られたデータから拡散時間や拡散係数等の値を容易に算出することが可能となった。また、電荷中和に伴う高分子材料近傍の水分子の配向の変化を、界面選択性が極めて高いSFG分光法により検出することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
正あるいは負電荷を有する単量体や、双性イオン型あるいは中性の単量体からなる高分子ブラシ近傍、あるいは高分子ブラシと相互進入編み目(Interpenetrating Network, IPN)からなる三次元的に広がった材料中でのタンパク質の拡散挙動をFCS法により詳細に検討する。さらに、SFG分光法により、タンパク質の上記高分子材料への吸脱着に伴う、材料近傍の水分子の配向状態を調査する。
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Research Products
(6 results)