2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26288100
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 理工学研究部, シニアアドバイザー (40115829)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 和周波発生法 / 水分子の配向 / 電荷中和 / 高分子イオンコンプレックス / 双性イオン型高分子 / 両性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
反転対称中心を持たない界面分子を選択的に検出する和周波発生法(Sum Frequency Generation, SFG)により、双性イオン型の自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer, SAM)近傍の水の構造を調査した。水分子のO-H伸縮振動帯に当たる3200-3400 cm-1付近のSFGスペクトルは、正電荷あるいは負電荷のみを有するSAM近傍のスペクトルに比べてかなり強度が小さく、電荷中和により水分子の配向が抑えられていた。この傾向は、双性イオン型の単量体(Carboxymethylbetaine, CMB)からなる高分子ブラシ、CMBと低極性単量体との共重合体薄膜、側鎖に正電荷あるいは負電荷をほぼ同数有する電荷中和された高分子ブラシ、さらには末端に正電荷あるいは負電荷を有するシランカップリング剤をほぼ同数有する混合SAMとよい一致を示した。これらの材料表面では、タンパク質の非特異的吸着や細胞の接着が強く抑制された。 また、負電荷を有するカルボキシメチルセルロースと正電荷を有するキトサンのナノファイバーを混合し、固体基板表面にキャストすることにより得られるフィルムは、それぞれ単独でのフィルムと比較すると強度が大きく、細胞の接着を抑制した。上記のSFGの結果を勘案すると、ナノファイバー系においても、ポリイオンコンプレクッス形成に伴う電荷中和により近傍の水の配向が抑えられ、タンパク質の吸着が顕著には起こらないために、それを足場にする細胞の接着が抑制されたものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双性イオン型の単量体(CMB)と、側鎖にシランカップリング基を有するメタクリル酸型の単量体(MPTMS)の共重合物は、ガラスやシリコンウエハ上に薄膜を形成する。シランカップリング基を有するスチレン型の単量体(STMS)とCMBの共重合体も同様である。得られた薄膜に193 nmの真空紫外線を照射すると、後者では前者よりも顕著に膜が破壊された。薄膜上にフォトマスクを置き紫外線を照射することにより、共重合体膜のパターニングが可能であった。得られた基板を蛍光ラベルしたタンパク質溶液に浸漬させると、紫外線が当たった部分にタンパク質が選択的に吸着し、パターニングが明瞭に観察された。 原子移動ラジカル重合(ATRP)の開始基となる2-ブロモイソブチル基を末端に有するシランカップリング剤SAMへの254 nmの紫外線照射により、ATRPに必須の臭素原子が選択的に脱離する。したがって、紫外線の照射時間を調節することにより、臭素原子の脱離の度合いを調節できる。これを利用して、CMBのATRPにより得られるブラシの厚さを変化させることが可能であった。開始剤SAM上で、紫外線を遮断する板を等速で移動させることにより、ブラシの厚さの傾斜(Gradation)を実現できた。PCMBはタンパク質の吸着や細胞の接着を抑制することから、膜厚の傾斜によりタンパク質吸着や細胞接着特性に傾斜のある材料が容易に得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
シリカ基板内で赤外光を多重全反射させ、エバネッセント光を用いて表面近傍の水の構造を赤外分光法により明らかにする。この際に、シリカ基板上に様々なSAMやブラシを構築し、近傍の水の構造と表面に修飾された化学種との相関を明らかにする。また、種々の高分子ゲル中のタンパク質の拡散挙動を蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)により検討する。さらに、負電荷を有するカルボキシメチルセルロースと正電荷を有するキトサンのナノファイバーの混合分散液をガラス基板上にキャストしたフィルムに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の第三成分を加えることにより、膜の伸びが向上するか検討する。
|
Causes of Carryover |
人件費・謝金として使用を予定しているが、使用することが無かったため次年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、最終年度ということもあり、研究の集大成としてインパクトの高い論文誌への投稿や特許出願等を視野に入れている。そういった経費として使用する方向で検討する。
|
Research Products
(14 results)