2015 Fiscal Year Annual Research Report
電子線・X線回折ハイブリッド法による金属材料の変形損傷評価の高度化
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26289002
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
秋庭 義明 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00212431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 雅 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90635236)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 金属物性 / X線 / 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)3%Si鉄の単結晶を用いて,片側切欠き材の単調引張試験を実施し,塑性変形領域までを含めて引張負荷を行いながらEBSD測定を実施した.弾性ひずみ分布および塑性領域における局所方位差KAMの有効性とともに面外変形についてEBSDによる方位差変化から導出することを試み,試料の極表層は結晶の回転による変形が生じていることを明らかにした.この場合,面外すべりが顕著なほど,結晶の回転から予測される変位と実測値が一致することを示した. (2)オーステナイト系ステンレス鋼を用いて,0%から50%程度まで単調引張によって変形させた試料について,X線法による半価幅変化を抽出し,塑性ひずみの増加とともに半価幅が増加することを明らかにした.さらにEBSD測定を実施し,KAMが塑性ひずみにともなって増加することを示すとともに,微視的相当ひずみも増加することを示した.すなわち,塑性変形による転位密度の増加が,X線法およびEBSD法いずれでも検出可能で,特に微視的塑性ひずみに対応することを示した. (3)上述のオーステナイト系ステンレス鋼と同様に,結晶粒径が2ミクロン程度の超細粒鋼を用いて,0%から20%程度までのひずみを負荷した試料について検討した結果,オーステナイト鋼のような,系統的な傾向は明確に現れず,材料による影響,もしくは測定対象領域寸法と,結晶粒径との相互関係について,さらに検討する必要があることがわかった. (4)X線法を用いて純アルミニウムを含む数種類のスパッタアルミニウム合金について単調引張変形過程で塑性ひずみの増加とともにX線回折線幅が増大し,応力が最大値をとった以降に減少することを明らかにした. (5)スポット溶接によって接合した薄板材を対象として,接合部近傍より切出した微小試験片の3点曲げ強度評価をEBSD法とともに検討し,試験方法を確立することができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EBSD法によって得られる結晶方位の回転角度から,塑性変形によって生じる巨視的な変形度合いを抽出可能であることを示すことができた.また,面内変形が主となるすべり系が活動する場合には,KAM変化が検出できないことに対応して面外変形も生じないことを示すことができ,純Alに関する検討は十分にできなかったが,すべり系との関連でEBSDパラメータを議論できたことは大きな収穫であった.また,多結晶材料への応用という点については,比較的結晶粒径が大きなオーステナイト系ステンレス鋼を対象として,塑性ひずみ量とEBSDパラメータの関係,さらにはX線回折線幅の関係について検討して,EBSD法の優位性を示すことができた一方で,結晶粒径が小さな炭素鋼については,観察倍率の最適化が必要であることが示唆され,今後の研究方針を与えるものであった.溶接部材への適用に関しては,微小材料の3点曲げ負荷方法を確立し,今後の強度評価へと展開するめどをつけることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度については,純アルミニウムの観察条件の最適化が課題となっており,多結晶アルミニウムの表面仕上げ方法を確立することを第一の推進項目として,FCC材料の応力ひずみ評価並びに塑性変形損傷評価を検討する.また多結晶材料への適用に関しては,細粒材の観察条件の最適化が不可欠であり,塑性変形損傷評価に成功しているオーステナイト系ステンレス鋼の結果を参考として,種々の測定倍率について微視ひずみを測定することによって,最適条件の抽出が可能と考えられる.また,さらに細粒であるスパッタ薄膜材についてのEBSD法の適用可能性について検討し,細粒材への汎用性を確認する.溶接材料の評価については,接合強度と溶接条件,対象材料の影響等について検討予定であり,EBSD法による評価の有効性についての議論が可能と考えられる.
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Research Products
(5 results)