2014 Fiscal Year Annual Research Report
高輝度放射光を用いた回折コントラスト・ラミノグラフィーによる4D材料損傷評価
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26289008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中井 善一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90155656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩澤 大輝 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379336)
菊池 将一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80581579)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 疲労損傷 / 転位密度 / 高輝度放射光 / ラミノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
多結晶体に高輝度放射光を照射した場合,投影面上にBraggの回折条件を満たした結晶粒の影が現れ,それより回折角だけ離れた位置にその結晶粒の形が明るく投影される現象がある.このような投影面に現れる影は,従来,CTイメージングの精度を低下させるものとして認識されてきたが,それを積極的に利用したのが回折コントラスト(DCT) 法である.試料を回転させると,各結晶粒に対して回折条件を満たす角度が多数存在するため,回折条件を満たした場合の像を抽出して3次元像を再構成すると,結晶粒の形状,方位,ひずみを3次元的に求めることができるので,DCT法は多結晶体の強度研究に極めて有力な方法である. これまで,従来のCT法を応用したDCTを用いて,疲労損傷の解析を行ってきたが,この場合,試料を回転させてその透過像より断層像を再構成するため,すべての断面寸法が放射光透過厚さ以下でなければならない.そのため実用的に重要な鉄鋼材料の場合,観察できる資料寸法は丸棒の場合直径1mm 程度,長方形断面の場合,対角線の長さ1mm程度が限界であった.しかしながら,細線によって解明した破壊のメカニズムが,実用的な通常のバルク材と異なる場合があった.一方,ラミノグラフィーでは,試料の回転軸(試料表面垂直方法)を放射光入射方向に垂直な方向より傾けて回転させるため,回転によって透過厚さが変化することはなく,細線だけでなく,薄板の観察の観察が可能となる. そこで,本課題では板材に対するイメージング技術として開発された上記のラミノグラフィー法とDCT法をハイブリッド化することにより,鋼板における材料損傷を評価する技術を開発している.これによって,より実用部材に近い試料の損傷評価の評価が可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring-8における放射光源として,従来用いてきたビームラインBL19B2よりも高輝度のビームラインBL46XUを用いることによって,厚さ1mm程度以上の鋼板のDCT測定が可能となった.また,回折スポットの出現位置を測定することにより,個々の結晶粒の個々のすべり面の転位の増殖による湾曲を解析するための理論,およびすべりの駆動力となるせん断応力を解析するため,すべり方向を同定するための理論を構築した.これらを応用することによって,BCC構造である工業用純鉄およびFCC構造であるオーステナイト系ステンレス鋼の疲労過程中のすべり面およびすべり方向を明らかにすることができた.その結果,FCC構造では,シュミット因子が最も大きくなるすべり系において疲労過程中の結晶面の湾曲変化が大きくなることが分かった.一方,BCC構造の場合,結晶面の湾曲が大きいのは,主すべり面である{110}面であるが,シュミット因子の影響はなかった.これは,BCC構造では,単位の結晶面ですべりが起こらず,ペンシルグライドと呼ばれる交差すべりを起こすことが原因であると考えられる. さらに,ラミノグラフィーを用いて,転動疲労におけるき裂の発生と進展観察を実施し,ラミノグラフィー技術を確立することができるとともに,転動疲労に関する新たな知見を得ることができた. これらの成果により,研究は順調に進展しているものと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,板状試験片においても,回折コントラスト像が現れることを確認したが,それを用いて結晶粒形状および方位を3次元的に同定するまでには至っていない.そこで,今後は,まず,板状試験片のDCTラミノグラフィー技術を確立する.すべり面,すべり方向の解析法は,CTによる方法と同一であるので,新たに理論を展開する必要はない.今後,DCTラミノグラフィーを用いて,BCC構造およびFCC構造の板状試験片における疲労すべりの詳細な観察を行う.また,原子間力顕微鏡AFMおよび後方散乱電子回折EBSDを用いて表面に隣接した結晶粒の,疲労におけるすべり面方向および結晶粒の湾曲を観察し,DCTラミノグラフィーによって得られた結果と比較・検討する. さらに,稠密六方格子(hcp)構造についても,すべり面およびすべり方向を特定するための理論を構築し,マグネシウム合金,工業用純チタンについても検討を行う.また,申請のデジタルカメラを用いて観察を高速度化するとともに,高精度化を行う.
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Causes of Carryover |
当初,浜松ホトニクス製デジタルカメラの購入を予定していたが,その後,SPring-8でも共通設備として同一機種を平成27年度予算を申請しているとの情報があったため,平成26年度における購入を中止し,SPring-8の予算採択状況の結果を待つこととした.しかしながら,SPring-8では採択されなかったため,平成27年度に本課題で購入することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に申請した浜松ホトニクス製デジタルカメラを購入する.
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Research Products
(16 results)