2015 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブ援用炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料のその場高速成形法の開発
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26289011
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 和人 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50303855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 傅生 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70161065)
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
榎 真一 奈良工業高等専門学校, 機械工学, 准教授 (80550079)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 複合材料・物性 / ナノチューブ・フラーレン / 炭素繊維 / 熱可塑性樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は,炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を用いた各種自動車用部材を高速で成形可能な手法を開発することである.あらかじめ樹脂を含浸させた積層板をスタンピング成形などにより二次加工するのではなく,強化繊維自体である炭素繊維に対する高周波直接通電により加熱を行い,金型内のその場でマトリックス樹脂を溶融・含浸させることで高速に成形する手法を確立する.本年度は,昨年度に引き続いて炭素繊維単体や炭素繊維ファブリックへのカーボンナノチューブ(CNT)析出技術の確立のため,Niめっきにより炭素繊維表面上に担持したNiを金属触媒として用いて,炭素繊維表面へのCNT析出状態に及ぼすめっき時間,合成時間,合成温度の影響を明らかにした.CNT析出に必要なNi触媒のめっき時間が長いと,炭素繊維表面に担持されるNi粒子の粒子数は多くなるとともに,粒子径が大きくなること,合成時間が同じ場合,Niめっき時間に寄らずCNT析出長さは一定であること,CNTの合成時間を長くすることでCNTは長尺に成長するが,CNTの成長率は合成時間が長くなるほど低くなること,合成温度が550℃から700℃の範囲において,CNTの析出量は合成温度が高いほど多くなるが,析出長さは650℃と700℃では有意差はなく,限界値があることなどを明らかにした.さらに,CNT析出炭素繊維単体の高周波直接通電加熱特性評価から,炭素繊維にCNTを析出させることで,炭素繊維への直接通電加熱時の加熱速度が速くなることを明らかにした.また,CNT析出炭素繊維一方向繊維束と樹脂の不織布を用いて平板形状を成形する実験を行い,CNT析出炭素繊維を用いて成形したCFRTPの方が,ボイド率が少なく,含浸の良いCFRTPを成形することが出来ることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,開発に成功し特許出願済みである低温下での炭素繊維単体へのカーボンナノチューブ(CNT)析出手法については,外国出願を完了した.また,開発したCNT析出炭素繊維単体への高周波直接通電加熱特性評価から,炭素繊維にCNTを析出させることで,炭素繊維への直接通電加熱時の加熱速度が速くなることが明らかとなった.炭素繊維単体と比較してCNT析出炭素繊維が,成形に有利であることが明らかとなり,高速で成形可能な手法を開発出来る見通しであり,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で最も重要である炭素繊維単体へのカーボンナノチューブ(CNT)析出手法の開発に成功し,CNT析出状態に及ぼすめっき時間,合成時間,合成温度の影響が解明できた.さらに,CNT析出炭素繊維の加熱特性が,炭素繊維単体と比較して優れていることが明らかとなったので,今後は,予定通り,開発した手法により作成したCNT析出炭素繊維を用いた積層板の成形に関する研究に軸足を移し推進していく予定である.なおここでも,成形に適したCNTの析出状態の把握が重要となるため,成形だけでなく,CNT析出手法の改善も同時に進めていく必要がある.
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Causes of Carryover |
本年度にLCRメータを導入する予定であったが,既存の装置を用いることで,精度は低いものの抵抗値を把握することが可能であったため,機器の導入を延期したものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には,より詳細な抵抗値の把握が必要となるため,外部機関の装置の利用なども含めて,高精度に測定できるシステムを検討し,効率的な経費使用を行う予定である.
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