2014 Fiscal Year Annual Research Report
切削力のリアルタイムシミュレーションとセンサレスモニタリングによる切削状態制御
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26289018
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白瀬 敬一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80171049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 隆太 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60376861)
金子 順一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80375584)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 工作機械 / 自律加工 / 適応制御 / シミュレーション / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者と研究分担者が得意とする以下の研究課題に取り組み,その研究成果を統合して数値制御工作機械による加工プロセス制御の実現を目指している。 (1) 素材形状をボクセルモデルで表現し,加工部位に応じた工具送り速度や工具姿勢をボクセルの属性情報として設定して,工具モーション制御に利用することに成功した。特に工具送り速度や工具姿勢の指令値が徐々に変化する状態を拡散現象と捉えて,拡散方程式を用いて加工除去領域全体のボクセルの属性値を自動的に設定した。 (2) 主軸回転数や切込み量といった条件を変えずに工具長のみを変化させることで,同じ切削条件下でびびり振動が発生する場合としない場合とを作り出し,そのときのモータトルク波形を収集した。その結果,びびり振動発生時の主軸モータトルク変化の分散を正常加工時と比較することで,びびり振動の発生を検出できる可能性があることが明らかとなった。さらに,そのためには正常加工時の主軸モータトルク波形が必要となるため,切削中の主軸モータトルクをシミュレーションするための技術が必要であることがわかった。 (3) 仮想倣い加工における工具姿勢決定手法の検討を主に行い,ボクセル形状表現を用いた切削加工シミュレーションにより,加工途中の被削物形状への衝突を回避可能な工具姿勢の候補を導出するシステムを開発した。本システムでは,1.ボクセル形状の再帰的記述の干渉判定時における直接参照,2.干渉判定時の姿勢候補の絞り込み処理,の二つのアルゴリズムを開発し,処理速度の高速化を実現した。また,切削抵抗予測において必須となる実送り速度の推定について,実験によるモデル開発を行い,複数軸の同期制御において実送り速度の変動が大きく,予測モデルの検討が必要なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者が担当するいずれの課題もおおむね順調に推移している。 (1) ボクセルモデルを利用した加工形状シミュレーションと仮想倣い加工(実時間工具経路生成)との連携による工具モーションの自律制御 素材形状をボクセルモデルで表現し,加工部位に応じた工具送り速度や工具姿勢をボクセルの属性情報として設定して,工具モーション制御に利用することに成功した。特に工具送り速度や工具姿勢の指令値が徐々に変化する状態を拡散現象と捉えて,拡散方程式を用いて加工除去領域全体のボクセルの属性値を自動的に設定した。また,切削力に応じて工具送り速度を修正して加工プロセスを制御するアルゴリズムの開発も行い当初の計画を達成した。 (2) 切削力のセンサレスモニタリングとモニタリング結果をフィードバックする加工プロセス適応制御 サーボモータのアンプからモータトルクと速度信号を検出し,そこから切削力以外の駆動力や摩擦力を数学モデルを用いて推定して切削力だけを精度よく検出するアルゴリズムを開発したが,推定精度が不十分であることが分かり次年度に対策を考える。また,電力計を使って実加工中の消費電力を測定して,消費電力から切削負荷をモニタリングを実施して当初の計画をほぼ達成した。 (3) 仮想倣い加工における工具姿勢計画及び切削力のリアルタイムシミュレータの開発 加工中の工具位置指令値(工具の3次元空間位置)に対して切削力の予測と工具干渉を検出するシステムを開発した。幾何演算を超並列計算機(グラフィック処理専用プロセッサGPU)で実施することで高速なシミュレーションを実現して当初の計画を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者と研究分担者が担当する研究課題ごとに,平成26年度の研究成果に基づいた課題解決と新機能の開発や機能強化を図る。 (1) 素材形状をボクセルモデルで表現し,加工部位に応じた工具送り速度や工具姿勢をボクセルの属性情報として設定して,工具モーション制御に利用することに成功した。そこで,従来の瞬間切削モデルに基づいたボクセルモデルによる切削加工シミュレーションを開発するとともに,加工中に逐次に推定される切削力に応じて工具送り速度を修正して加工プロセスを制御するシステムを開発して加工実験でその効果を検証する。 (2) 切削力モデルと主軸駆動系モデルとから正常加工時の主軸モータトルクをシミュレーションできるか試みたが,その推定精度が不十分であった。そこで,切削力による主軸の回転速度変化と,その回転速度変化が切削力に及ぼす影響とを考慮したシミュレーションモデルを構築し,正常加工時の主軸モータトルクをシミュレーションできるようにするとともに,このシミュレーション結果と主軸モータトルクの測定結果とを比較することで,びびり振動に代表される異常な加工状態を検出できるようにする。 (3) 幾何的な衝突条件に関して干渉の生じない姿勢の候補範囲を高速に導出するシステムを実現したが,姿勢を選ぶアルゴリズムの検討は行わなかった。そこで,これらの姿勢候補それぞれに切削抵抗の予測を並列計算技術によって実施し,切削抵抗の作用方向,および大きさを考慮した姿勢選択を可能とするシステムを開発する。工具側の弾性変形による工具切れ刃逃げ量や最大トルクといった異なる評価基準に応じて,逐次工具姿勢を決定し,加工を実施可能とするシステムの開発を行う。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた実験計測・解析システムが,当初の見積額を大幅に上回ることが分かり購入を断念した。これに代わるものとして,計算機(計測システム)とソフトウェア(解析システム)を購入した。これにより使用額が変動したが,未使用額は助成額の1%程度(37326円)である。消耗品の購入に充ててゼロとすることはできたが,予算消化のようになるので敢えてしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が37326円と少額であり,加工実験で必要となる工具や被削材の購入に充当する。
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Research Products
(9 results)