2015 Fiscal Year Annual Research Report
紫外光励起研磨によるダイヤモンドウェハおよび工具の高度化技術の開発
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26289020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
峠 睦 熊本大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00107731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超精密研磨 / 紫外光励起研磨 / ダイヤモンド基板 / 鏡面研磨 / 刃先鋭利化 / 精密ツルーイング |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外光励起研磨(以下,UV研磨)のメカニズムの解明を詳細に進め,①摩擦帯電によるマイクロプラズマからの微細放電の集積,②研磨が引き起こす極表面温度上昇による極表層のダイヤモンドのグラファイト化とその場除去,③紫外線照射による光化学反応が活性種を生成し,ダイヤモンドを酸化させてCOガスとして放出であることがわかった.このUV研磨を20 mm角のダイヤモンドウェハ(産総研より提供)の全面無ひずみ鏡面研磨に適用し,マシニングセンターによる100 mm径の石英板をラスタースキャンする方法を開発し,基板全面を0.3~0.4 nmRaに仕上げることに成功した. 当初の研究課題である切削工具,砥石,金型の精密研磨にもUV研磨を適用し,以下の成果が得られた.切削工具ではPCD製工具切れ刃の逃げ面研磨による鋭利化に加え,すくい面に幅20 μm,角度20゚の刃先丸味半径に沿った円弧状のチャンファを形成し,アルミニウム合金A390の仕上げ面粗さの改善と工具摩耗の抑制効果が確認できた.また,ダイヤモンド製バニシ工具の成形を行い,研削や研磨で仕上げられた通常(市販)の工具ではバニシ加工中の割れの多発により工具寿命は短いが,UV研磨した工具は全く割れが発生しない優れた性能を有することができた.砥石では小径電着ダイヤモンド砥石の精密ツルーイングに適用し,研削面の仕上げ面粗さの改善と長寿命砥石の実現を確認できた.PCD製小型金型では研磨条件の最適化を図り,まだ研磨時間は90 minと長いものの0.3 μmRaの目標値の達成を確認できた. 当初の研究計画には含まれていないが,超砥粒砥石としてダイヤモンド砥石と並んで広く用いられているCBN砥石の精密ツルーイングを行い,砥粒先端位置を0.3 μm以内に揃えた作用砥粒数の増加により,良好な研削面が得られることを確認している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紫外光励起研磨のメカニズムに関する研究は,申請段階での考察をまとめた論文(精密工学会誌,第58巻,第1号,pp.112-116,2014)が2014年度精密工学会論文賞に選定されたことは高く評価できると考えている.今年度もメカニズムに関する考察はより明確な実験結果を追加することにより,さらに深化させることができており,おおむね順調に進展していると評価できる.工具に関しても,切削工具や砥石に対するUV-sharpeningおよびUV-truing技術は学会での発表を行うことができ,注目されたことは評価できる.さらに,CBN砥石の精密ツルーイングの成功に確証が得られたことは,今後の清算現場への普及を含めて,その成果が大きく期待されている.九州地区の企業との共同研究の企画も進んでおり,我々の研究成果は強く期待されている.
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Strategy for Future Research Activity |
ダイヤモンドウェハは,昨年度までに開発したマシニングセンターを用いたラスタースキャン方式のUV研磨条件を最適化し,より短時間での研磨完了をめざす.これにより,ダメージレスな大口径ダイヤモンドウェハの研磨技術を開発する.切削工具へのUV-sharpeningおよびチャンファ形成(UV-chanfering技術)はこれまでの開発で充分であるが,更なる短時間化をめざすと共に,被削材をKUMADAIマグネシウム合金として非球面ミラーを製造する切削加工技術を開発する.KUMADAIマグネシウム合金の鏡面加工の実績や報告は乏しく,軽量で比強度の高いこの材料の応用範囲を広げる意味でも,今後の研究が求められている.PCDブレードは現状ではダイシング性能の向上が認められないため,放電加工による刃先面性状の適正化を検討する.砥石へのUV-truingはサファイアなどの硬脆材料の研削を行うと共に,軸付砥石からカップ形砥石や通常の平形砥石に適用し,研削性能の向上を確認する.これにより,広い範囲の生産現場に適用可能な砥石を開発する.本年度の研究の段階で新たに明らかとなったCBN砥石へのUV-truing技術(これまで学会などで報告されていない新しい技術)もより明確にし,ツルーイング効果を確固たるものにする.
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Research Products
(3 results)