2015 Fiscal Year Annual Research Report
電界共役流体マイクロポンプを内蔵したマイクロ液滴生成デバイスの開発と応用
Project/Area Number |
26289026
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 俊完 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (40401517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 和弘 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (00220632)
嚴 祥仁 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (20551576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | MEMS / 電界共役流体 / マイクロシリンジポンプ / マイクロ液滴生成デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に開発した水溶液の送液システムには,(1)直流高電圧の印加により電極間に発生する活発なECFジェット流を利用するECFマイクロポンプ,(2)油(ECF)と水は混ざり合わない性質に利用するECF流体液中ピストンおよびマイクロ流路から構成されるマイクロシリンジ,(3)流れ方向ごとの流動抵抗差により整流するディフューザ形状の非対称性流路の3つの要素を集積し,機械的な可動部のないシンプルな構造のバルブレスマイクロポンプをワンチップ(22.3 mm×25.2 mm×1.5mm)で実現した.ECFのみを満たしたデバイスでポンピング流量を測定したところ,20Hz付近をピークとして最大で90ul/minの流量が得られた.水とECFを満たし同様の実験を行なった結果,流路の非対称性により界面が継時的に移動してしまう問題が生じたため,2つのフォトセンサを用いて界面の位置を検出し,センサ間を界面が自動的に往復するように変更している.これにより0.30kV印加時に0.6ul/minの流量を得られ,実験的に微小流量の送液ができる可能性が明らかになった.しかし,0.3kV以上印加時(界面移動速度3-5mm/s)に水やECFが流路壁面に残着してしまう様子が確認され,目標発生圧力を10kPaとすると界面の移動速度は29mm/s(0.8kV印加時)となり,正常にセンシングされない可能性がある.そこで,ECFマイクロポンプの性能を十分に発揮するために,流路壁面を撥水化処理する方法を提案した.処理後の実験において,残留しはじめる界面移動速度を計測したところ,30%向上し,十分とはいえないが一定の効果がみられた.また発生体積流量に対する流速小さくするためにシリンジ部の流路幅を大きくする手段を提案している.流路幅を0.7mmから4.5mmにしたところ,界面の形成は確認できたため,撥油処理等の表面処理と併せて実験することで,解決する可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)ECFシリンジマイクロポンプの提案・開発と,(2)マイクロ液滴生成デバイスの提案・開発を目的としている. ECFシリンジマイクロポンプに関して,本年度では,マイクロ流体デバイスに外付けされる大形なシリンジポンプの小形化を実現するために,ECFマイクロポンプを駆動源とした機械的可動部のないチップサイズのシリンジポンプを提案し,製作および評価を行ない,その有効性を確認した.また,提案したECF駆動バルブレスシリンジポンプを最適化するために,周波数と流量の関係について実験,評価を行なったところ,20Hz付近で最大90ml/minの流量を送液することができた.2つのフォトセンサを用いて流体を判別することで,流れ方向切替えの自動化を可能にしたとともに,数ul/minの送液能力が実験的に明らかになった.ECF-水の界面が早く移動する際に,界面が崩れる問題を表面の撥水化することで解決できる可能性があることを証明した.以上の結果から,本研究は順調に進んでいると判断している. マイクロ分岐流路を用いたマイクロ液滴生成デバイスでは,ECF駆動バルブレスシリンジポンプを用いて,マイクロ液滴生成デバイスのプロトタイプを製作した.ECFバルブレスシリンジポンプは,摺動部がないことからより簡易に制作できるが,送液の制御の高精度化には問題があるため,マイクロ液滴生成デバイスに応用することは適切でないことが判明した.この実験結果をベースに漏れがないマイクロチェックバルブをMEMS技術で製作することを新たに提案した.このマイクロチェックバルブを開発することで,本課題のマイクロ液滴生成デバイスが開発できると思われる.このような予備実験結果から,本研究は順調に進んでいると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
油と水が非混合流体であることを利用してバルブレス方式のECF駆動のシリンジポンプを提案し,その有効性を確認したため,これからはチェクバルブを有するECFシリンジポンプの開発とこれを融合したマイクロ液滴生成デバイスを製作する予定である.1) ECF駆動リークレスバルブの開発,2) ECF駆動リークレスバルブを用いたマイクロシリンジポンプの開発,3) ECFマイクロシリンジポンプを用いた液滴生成デバイスの開発. T字路を用いたマイクロ液滴生成デバイス,十字路を用いたマイクロ液滴生成デバイス,オイル・水溶液・オイルを交互に配置することでマルチエマルジョンを生成することもできるデバイスを開発する.また,本研究で開発したマイクロ液滴生成デバイスは液滴生成のみならず,マイクロ流路の形状を工夫することで多様な機能を持たせるデバイスも開発する.(1)ディフューザ内の流入部と流出部の流速の差を利用した液滴の融合,(2)渦の生じる屈曲した流路内を通すことによって液滴の混合を行う仕組み,(3)流路抵抗と流路長さが同じ分岐路を複数用意することによって流入してきた様々な液滴を同じ量,同じ順番で細分化する流路,(4)ECFジェットのON,OFFにより液滴を選別する流路など多様な応用を実現する.
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