2014 Fiscal Year Annual Research Report
微細機能性凹凸パターンを付与したナノ液体膜のトライボ特性とそのメカニズム
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26289027
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
張 賀東 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (80345925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三矢 保永 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 上席研究員 (10200065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トライボロジー / マイクロ・ナノデバイス / 磁気記録 / 薄膜潤滑 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ・ナノマシンや磁気記録装置(HDD)では,微小な摺動すきまにおける薄膜潤滑技術の確立が必須である.そのため,UV照射によりナノ厚さ液体膜に微細な機能性凹凸パターンを付与する方法を提案した.本研究では,ナノ厚さ液体膜のトライボ特性を評価・解析する計測装置と分子シミュレーション法を高機能化するとともに,実験と分子シミュレーションの両面から,ナノ厚さ液体膜のトライボ特性とパターン形状・寸法との関係性や,そのメカニズムを解明することを目的としている.本年度は,主として下記を実施した. 1)トライボテスタの高機能化 干渉顕微鏡を設計・構築し,トライボテスタに統合した.ナノ厚さ潤滑膜を塗布した固体基板に,摺動ピンを押し付けた際の接触状態のin situ観測を実現し,面内分解能は1.0 μmを達成した.接触部の直径を潤滑剤の種類と膜厚をパラメータとして測定し,接触挙動に及ぼす固液間接触と固体同士間接触の寄与を明らかにした. 2)トライボ特性の測定 既存の走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて,潤滑剤の種類や,UV照射時間,SPMプローブの運動速度を変えて,ナノ厚さ潤滑膜の凝着力・摩擦力を測定した.これらの特性について,潤滑膜中の流動分子およびUV照射により形成した固定分子の寄与を明らかにした.トライボテスタを用いた高速摺動での従来の測定結果と定性的に一致することを確認した. 3)分子シミュレーション HDD用の極性PFPE潤滑剤について,量子化学計算の結果に基づき,極性基に関する相互作用を高精度に表現した全原子モデルを構築し,バルク粘性や,拡散係数,分子の存在形態を再現できる分子動力学(MD)シミュレーションを実現した.また,全原子モデルのMDシミュレーションで得られた分布関数と等温圧縮率を再現できる高精度な粗視化モデルを構築し,全原子モデルに比べて計算効率を約2桁向上した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように,交付申請時の計画に応じて進捗しており,結果も得られている.そのため,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の計画にしたがって,研究を進める.干渉顕微鏡とトライボテスタの高性能化を引き続き進めるとともに,固定分子を含めたナノ厚さ潤滑膜の粗視化凝着や剪断シミュレーションを実現する.最終的には,実験と分子シミュレーションの両面から,ナノ厚さ液体膜のトライボ特性とパターン形状・寸法との関係性や,そのメカニズムを明らかにする.
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Causes of Carryover |
干渉顕微鏡の設計・構築を比較的順調に行えたため,当初の予算額より実支出額が下回り,かつ今後の研究にはより多くの費用が必要と見込まれたため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費を主に物品費に割り当てる.摺動子表面加工費用や,材料・試薬類,摺動子,SPMプローブ,治具機構部品,光学部品,UV照射用マスクなど,実験に必須な消耗品の購入費がある.また,高性能の光源あるいはCCDカメラの購入を計画している.
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