2015 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ・ナノ電気穿孔法による細胞核への分子導入法の開発
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26289035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新宅 博文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80448050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 秀俊 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252471)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気穿孔 / マイクロ流路 / DNA / RNA / 一細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマイクロ流路中に設置したトラップ構造とマイクロ流路端に接続した逆円錐状のウェルを用いてマイクロ・ナノ電気穿孔の自動化および並列化を目指した.この方法は,ウェルに投入した一細胞が重力あるいは遠心力により沈降し,液体の流動で自動的にマイクロ流路へ流入し,その後トラップ構造において捕獲されるという一連の過程を自動化する技術である.この方法をK562細胞を用いて評価したところ,90%以上の確率で生存状態の細胞を捕獲できることがわかった.また,逆円錐状のウェルはマイクロピペットの先端と容易に接続できるため,電気穿孔後の細胞の回収率を大幅に向上できた.一方,トラップ構造は細胞の捕獲に加えて電流経路の限定により局所的に電場を集中できるため,結果的に一様電場と比較して印可電圧を1/10程度にまで低減できた.以上の基盤技術検討に加えて,マイクロ流路を32ユニット並列化したマイクロ流体プレートの製作技術について検討した.前述の逆円錐状ウェルとマイクロ流路端はそれぞれ機械加工により製作した金型および微細加工により製作した鋳型を用いて製作しており,これらの一体成型のために,はめ合いを利用した位置合わせ法を考案した.本年度の検討において本製作技術により目的の構造を成型できることが確認できた一方で,鋳型の耐久性に課題があることが分かった.H28年度において本課題の解決を図る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,蛍光顕微鏡を用いた可視化計測により,細胞膜を介した核酸の輸送について計測した.ここでは,SYBR Green IIを用いてRNAおよびDNAを蛍光化し,蛍光顕微鏡によりそれらの流動を計測した.また,一方で電気穿孔の前後において直流電場を与えた状態で電流を計測し,時間の経過と共にマイクロ流路内部における電解質イオンの濃度分布が変化する様子を電流計測から捉えることができることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
連続体力学に基づく数理モデル:実験結果に基づいて膜モデルの構築を行い,オリフィスの形成する集中電場が細胞膜および核膜に及ぼす影響について解析を行う.特にオリフィス径と膜電位の関係について注目し,マイクロ・ナノ電気穿孔が本質的にバルク電気穿孔と異なる点について明らかにする.膜を完全な絶縁体と仮定した単純モデルに基づく予備解析により,核膜の膜電位が上昇しやすい最適なオリフィス径の存在を示唆する結果を得ている. 遺伝子導入から発現までの経時変化計測システムの開発:電気穿孔を評価する上で細胞の状態評価は不可欠である.遺伝子導入から発現までの時間すなわち24-48h程度の時間スケールで安定的に観察可能な実験系を構築する. 生体高分子の膜透過ダイナミクスの解明:高速・高精度の電流計測を行い,生体高分子が細胞膜を透過する際の流動ダイナミクスの解明を目指す.本実験系では溶液中に電解質イオンが豊富に存在しており,それらがイオン電流の主なキャリアであるが,これに加えて生体高分子が存在する系で得られる電流の計測結果と可視化計測の結果を比較検討することで,生体高分子の流動と電場の関係について考察する.
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Causes of Carryover |
本年度の残高は760円でありこの金額のみでの執行が困難であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に計画している実験材料の購入に充てる。
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