2015 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧環境における次世代C4バイオ燃料異性体の乱流燃焼機構と排出ガス特性の解明
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26289043
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (90709156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高圧燃焼 / 乱流燃焼 / バイオ燃料 / 異性体燃料 / 排ガス特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,燃焼学的に未開拓な高温高圧乱流燃焼の研究において,次世代バイオ燃料として有望なC4(炭素数4)アルコール異性体の乱流燃焼機構を明らかにし,反応動力学と乱流との相互作用に基づく極限環境乱流燃焼の学理構築を図ると共に,燃焼学的根拠に基づく次世代バイオ燃料燃焼システムの設計指針を提示することを目的とする. 平成27年度は,これまでに開発した常温で液体であるC3,C4バイオ燃料蒸発装置を用い,C3バイオ燃料であるプロパノール異性体火炎におけるNO排出,CO排出に対する異性体効果,含酸素燃料効果,当量比依存性の実験計測を行い,さらに含酸素でないアルカン燃料との比較計測も行った.数値解析では,プロパノールとその異性体およびプロパンに対して反応経路解析を実施し,異性体間の熱分解過程の違い,NOおよびCO生成過程への異性体効果を反応論的に明らかにした.その結果,含酸素燃料はNO生成量が多いがCO生成量には大きな違いは見られなかった.ただし,当量比依存性には反応機構の影響が大きいことがわかった. レーザー計測では,NO濃度が低いため,シングルショットでのPLIF計測の信頼性とOH-PLIFとの同時計測精度を向上させることを目指して,アンモニアを微量添加した混合気に対してNO-PLIF,OH-PLIF同時計測光学系を構築し,大気圧下での画像取得に成功した.その結果から, NOが火炎上流側に卓越して拡散している様子を明らかにし,数値計算でも確認できた.これらから,2成分同時PLIF計測法の妥当性ならびにNO生成過程と拡散に関する知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C4アルコールであるブタノールの高圧乱流燃焼実験は1.0 MPaまですでに成功しており,本年度は特に燃焼生成物質に対する異性体効果,含酸素燃料効果,当量比効果を排出ガス分析に成功した.数値解析でも,詳細燃焼反応機構を用いた数値解析によって反応経路を詳細に分析する手法を確立し,異性体効果のみならず,圧力増大による反応経路の変化を明確にすることに成功した.これらにより異性体効果,含酸素燃料効果,当量比効果とそのメカニズムを反応経路の観点から明らかにしつつある. 本研究のもう一つの柱である2成分同時レーザー計測系による火炎構造の解明に関しても,アンモニアを微量添加してON-PLIFの強度向上を図り,入射光学系の工夫によってOH-PLIF,NO-PLIF同時計測に大気圧下で成功した.前年度困難が予想された2台の波長可変レーザー光を1本のビームとしてレーザーシート光を形成させ,計測部に導入する課題も,シート光に整形する前のビーム径調整や導入角度,計測部での焦点調整など光学系構築は十分に達成された.更に言えば,波長選択ミラーを用いて光軸調整を更に簡略化できる方策を講じることは考えられる.また,NO濃度が火炎前縁で大きく,OHよりも拡散が大きいことは数値解析結果をよく再現している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度であるが,昨年度ガス分析を実施したC3バイオ燃料であるプロパノール異性体火炎に対する排出ガス計測をC4バイオ燃料であるブタノール異性体に拡張する.さらに,同じ炭素数4のアルカン燃料(ブタン)との比較を行う.OH-PLIFを用いた乱流燃焼速度計測では,瞬時火炎断面のフラクタル解析による火炎凹凸も同様にブタノール異性体に拡張する. レーザー計測では,昨年度大気圧環境で成功したアンモニアを微量添加した場合のNO-PLIF,OH-PLIF同時計測を高圧環境で実施する.アルコール系バイオ燃焼の火炎構造,NO,CO生成に対する異性体効果を数値解析と比較しながら明らかにする.PLIF計測ではアンモニアを微量添加しない場合のNO-PLIF強度が非常に小さく,シングルショットでの計測が困難であったため対応策の検討が不可欠であるが,高圧下では更に強度低下が予想されるので,積算計測を行うかアンモニア添加濃度をやや増大させて,そのアンモニア添加効果を数値解析にも反映させた上で火炎構造に及ぼす異性体効果ならびに含酸素燃料効果を明らかにすることも検討する. 数値解析においてはレーザー計測と比較しうる微量アンモニアを添加した場合も含めた詳細反応機構による火炎構造の解析を行う.手法を確立した反応経路解析を詳細に実施して異性体の熱分解過程のみならず,ブタノール異性体に対してNO,CO生成経路を明らかにし,これらに対する温度および圧力の影響を解明する.反応経路解析では,PAHの生成過程も知ることができると期待される. 以上の実験ならびに数値解析から,本研究の目的であるC4アルコール系バイオ燃料の燃焼における異性体効果,含酸素燃料効果と温度圧力依存性を最終的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が数千円のため、繰り越した方が次年度有効に利用できるため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成28年度請求額とあわせ、平成28年度の研究遂行に使用するる予定である
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Research Products
(1 results)