2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26289052
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本田 真也 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90548190)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 積層複合材 / 多目的最適設計 / 曲線状繊維 / 局所剛性 / 局所異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,当初計画通りファイバー縫付機により作成した曲線部を有する複合材の実験結果より詳細な材料定数を取得した.本研究で作成する複合材は炭素繊維束を縫い糸で基材に固定しながら曲線部を作成するが,繊維曲率が大きくなると繊維束断面が平坦である直線部に比べて円形に近くなる.そのため,大きな曲率を有する部分は板厚方向に膨張し,繊維束の間隔が疎になってしまう.これらの関係を実験により評価するために強化繊維が一定の曲率を有する試験片を各種作製し,樹脂含浸後にその密度と板厚を計測することで曲率と機械的特性の関係を明らかにした.実験結果より,当初予測の通り,曲率が大きくなるにつれて密度は低下し,また板厚は増加することが確認できた.さらに,その関係はいずれも線形的な関係にあることがわかった. 実験により得られた関係式を用いることで任意の曲率における密度が予測可能となり,既知である繊維と樹脂の密度を用いて繊維の体積含有率を計算し,複合則により任意点における複合材の弾性定数が予測できる.この関係を用いて実際に不均一な曲率を持つ複合材を作製し,振動特性を計測した結果,有限要素法を用いた数値計算結果と概ね一致することがわかった. 上記の実験で得られた関係式を曲線状繊維を有する複合材の多目的最適化問題へと応用した.目的関数は,面内強度などの機械的特性の向上,曲率に起因する複合材の生産性の向上,および重量に関連する積層数とした.その際,曲線繊維を有する層と直線繊維のみを用いる層を混合することで,生産性を高く保ちつつ大きな曲率を有する解が得られるよう工夫した.最適化計算の結果,実験により得られた関係式を考慮していなかった場合は曲線繊維の有効性が確認できなかった形状や境界条件においても,曲線状繊維の有効性が確認でき,局所的な異方性のみならず剛性や板厚の変化も考慮した設計を行うことの重要性がわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験で供試体を作成する際に,数値計算上で考慮できていなかった様々な問題(基材層の影響が想定より大きい,曲率による体積含有率や板厚の変化が大きいなど)が生じており,数値計算で得られた結果の実験による評価がやや遅れている.しかしながら,実際に供試体を作成してみないとわからなかったことを数値計算手法にフィードバックすることで,より現実的な数値計算や最適設計を行うことができている.また,申請した研究費から減額されていることもあり,光ファイバーを応用した残留応力測定システムを構築することは困難であるため,他の代替手法で対応する.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,引き続きファイバー縫付機で作成する供試体の特性を評価しつつ,得られた結果を活かして双安定複合材シェルの設計と作成を行う.まずは,これまでに開発してきた,剛性の大きく異なる材料から構成される積層板でも,計算負荷を抑えつつ精度よくその挙動を予測できる改良型ジグザグ理論に用いるための基材層の材料定数を測定し,中央部に剛性の小さな層を持つ積層板の挙動を正確に予測できるようにする.続いて,繊維は連続しているが,同一面内に2つ以上の異なる繊維配向角度を有する領域を持つ混合層の設計方法を検討する.領域間で大きく配向角度を変化すると,繊維束の間隔も変化し,繊維含有率や板厚に差異が生じる.これを解決するために領域間の角度変化に制約を設ける,または異なる含有率を許容し,疎となる領域では多くの繊維を配向するなどの工夫により供試体を作成し,前年度に得られた曲率・剛性の関係式を考慮した最適設計を行い,双安定複合材シェルを設計する. この結果をもとに双安定複合材をファイバー縫付機により作成し,双安定性を有する臨界温度,両安定形状間での変位量,曲げ剛性,振動数などの種々の力学特性を数値計算結果と比較する.
また,ファイバー縫付機による供試体の製造方法の工夫も行う.これまで樹脂含浸後に樹脂リッチ層となってしまっていた基材層を熱可塑性の樹脂シートに置き換える.すなわち,熱可塑性シートに直接繊維を縫付け,その後にホットプレスなどで成型することにより基材層が繊維層に含浸され,樹脂リッチ層がない複合材の作成が可能になる.熱可塑性樹脂を採用することにより,樹脂含浸の際の真空バギングなど準備が煩雑だった真空樹脂含浸(VaRTM)法に比べて短時間で簡便に曲線状の強化繊維を有する複合材の作成が可能になる.この手法により作成した供試体の力学特性も評価しつつ,双安定性複合材シェルの製造が可能かどうか検討する.
|
Causes of Carryover |
設備使用料,消耗品など予測が難しい支出に対して余裕を持っていたため次年度に繰越額が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き,設備使用料,消耗品費に使用する.
|