2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26289062
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 敏行 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10210923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 健朗 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (50397014)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクチュエーター / 高分子ゲル / 光異性化 / 分子ポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、光応答性高分子ゲルの光応答部位には分子量が1000から10000程度のオリゴマーが利用されてきた。このオリゴマーは分子量分布があるので、これによって網目の均一性が損なわれ、結果として光応答速度を遅くしていると考えられる。そこで、本研究では架橋間分子量が一様な高分子ゲルを合成し、その構造均一性と光応答速度について検証した。4-アミノ安息香酸のアミノ基をBoc基で保護し、ジアミノアゾベンゼンと塩化チオニルを用いて縮合した。この分子からBoc基を脱保護し、新規光応答性分子を合成した。この光応答性分子を架橋剤である1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリドと反応させることによって光応答性高分子ゲルを合成した。光応答性分子の反応率をゾルフラクション法によって求め、有効網目の割合を求めた。従来の光応答性高分子ゲルは有効網目の割合は61%であったのに対して、本研究は31%程度しかなかった。この有効網目の割合の差は、光応答性分子と架橋剤の反応度によるものである。新規光応答性分子と架橋剤の反応速度が早すぎて、十分な反応が達成される前に、ゾルからゲル状態へと変わってしまったためであると思われる。 新規光応答性分子から作製した高分子ゲルをロッド上にし、大気中で442nmの光を照射すると、剛直鎖ゲルは光照射方向に屈曲した。 このロッド状ゲルをスライスし、マイクロ流路中に固定した。流路をDMFで満たし、440nmの光をゲルに照射すると、ゲルは縮みマイクロ流路中に溶媒が送出された、一方532nmの光を照射すると、ゲルは膨潤し、マイクロ流路から溶媒を吸入した。光照射の際の応答速度は新規光応答性分子から合成した高分子ゲルが従来型の高分子ゲルの1/3になった。これは光応答部位の分子量の均一性が向上し、有効網目の割合が低下したものの、分子の変形がマクロな変形へと伝わりやすくなったためと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、光応答性高分子ゲルの光応答部位には分子量が1000から10000程度のオリゴマーが利用されてきた。このオリゴマーは分子量分布があるので、これによって網目の均一性が損なわれ、結果として光応答速度を遅くしていると考えられる。そこで、本研究では架橋間分子量が一様な高分子ゲルを合成し、その構造均一性と光応答速度について検証した。その結果、光照射の際の応答速度は従来型の光応答性高分子ゲルの1/3になる、新規光応答性高分子ゲルの作製に成功した。これは光応答部位の分子量の均一性が向上し、有効網目の割合が低下したものの、分子の変形がマクロな変形へと伝わりやすくなったためと思われる。この新規光応答性高分子ゲルの課題点としては、ゲル合成時の反応速度が早過ぎるために、成形加工がしにくい点にある。この問題を克服することにより、ビデオレートでの高速応答が可能な光応答性アクチュエーターが創製できると考えられる。そこで反応速度が遅くなるような架橋剤と光応答性分子を探索し、さらなる網目構造の均一化を達成する。以上、述べたように、アクチュエーターの応答速度は着実に早くなっており、順調に目標に向かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子ゲルからの散乱光の強度を時間や場所ごとに積算した、アンサンブル散乱光強度を求め、アンサンブル平均相関関数を求める。このアンサンブル平均相関関数を逆ラプラス変換すると、高分子ゲルの動的成分の緩和時間分布が算出できる。均一な網目構造が得られる、プレゲルの濃度を求める。また、小角X線散乱も併用し、高分子ゲルの網目構造の解析を行い、網目構造の均一性と光応答速度の相関性について解析する。光応答性分子同士の凝集がアゾベンゼンの光異性化を妨げている。そこで、分子間の凝集を抑制するために光応答性分子に長鎖アルキル基などの立体障害を導入し、さらなる光応答速度の向上を目指す。 また、光応答性部位と架橋剤の反応速度を抑制するための、光応答性部位と新規架橋剤の構造を探索する。合成した新規架橋剤の化学構造はTOF-MS, NMR, FT-IR等を用いてキャラクタリゼーションする。 また、昨年度と同様に二光子励起重合による3次元光造形を利用して、薄膜を作製するための、幅200 nm、厚さ 1um程度の反応容器を作成する。容器の作成にはネガ型のレジスト材料であるSU-8を用いる。この反応容器中にモノマーと溶媒を流し込み、インテリジェントマイクロポンプを作製する。 作製したインテリジェントマイクロポンプの光照射時の収縮、膨潤挙動を顕微鏡下で観察する。青色レーザー照射および緑色レーザー照射による重心の位置変化を既存設備であるCCDカメラに接続したデータ解析装置より取り込み、解析する。これらの結果を高分子ゲルの分子設計にフィードバックし、さらに高速応答可能なソフトアチュエーターを作製する。
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Research Products
(10 results)