2015 Fiscal Year Annual Research Report
電子機器に深刻な障害を与えるESD電磁ノイズの特性解明とEMC問題の抜本対策
Project/Area Number |
26289078
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
川又 憲 東北学院大学, 工学部, 教授 (00244905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶺岸 茂樹 東北学院大学, 工学部, 教授 (70146116)
林 優一 東北学院大学, 工学部, 准教授 (60551918)
石上 忍 国立研究開発法人情報通信研究機構, その他部局等, その他 (80242345)
吉田 孝博 東京理科大学, 工学部, 講師 (10385544)
森 育子 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20455140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ESD(静電気放電) / 電磁ノイズ / 放射特性 / 電磁妨害 / イミュニティ / インパルス性電磁波 / 時間領域測定 / APD(振幅確率分布) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における目的は,(1)ESD電磁ノイズの放射特性を決定する励振要素とノイズ特性の関係を解明し,ノイズ放射機構のモデリングを進める.(2)ESDノイズの伝播,結合,および混入特性を解明し,ESDノイズの特異性を明らかにする.(3)ESDノイズの時間領域測定技術および,ESDノイズが通信機器イミュニティに与える影響評価法について開発する.以上の3項目であった. 目的(1)については,ESD電磁ノイズ放射の励振要素のパラメータについて分類を行い,ESD放電の物理要素によるものと付随する電極形状や配置等で決定する回路要素によるものに整理を行った.さらに,電極の接近スピードなどの運動要素など外因要素が放射特性に影響を与えることを明らかにした. 目的(2)については,電磁ノイズの混入プロセスのける漏えい源から故障点への伝達関数を求め,さらにパルスジェネレータを用いて実験的に確認した.また,パルス印加時に発生した機器からの故障出力を解析することにより,インパルス性電磁ノイズが引き起こす機器故障メカニズムの一部を解明した.さらに,上述したメカニズムに基づき,インパルス性電磁ノイズに耐性のある機器設計指針について提案を行った. 目的(3)については,過渡電磁界を測定用電磁界センサのなかで,特に広帯域化が難しい磁界センサについて,ホール効果を利用したセンサの理論的検討を行った.また先行研究の過渡電磁界の時間領域測定法によって求めたインパルス性過渡電磁界に対し,統計的手法,すなわち振幅確率分布(APD:Amplitude Probability Distribution)を用いて,過渡電磁雑音特性の評価手法を確立した.さらに,産業界の要望に応える形でウェアラブル機器のESDノイズに対するストレスについて実機応用に向けた特性測定を行い,回路インピーダンスと混入特性の関係を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は当初計画どおり順調に目的を達成している.各研究課題における成果および成果公開の状況を以下に示す. ①ESD放電パラメータと放射ノイズ特性の関係究明では,ESD電磁ノイズ放射の励振要素のパラメータについて分類を行い,ESD放電の物理要素によるものと付随する電極形状や配置等で決定する回路要素によるものに整理を行った.これらの成果は,電気学論文誌,EMC関連国際会議さらにはEMC専門雑誌などを通して積極的に公開した.②ESDモデリングと電磁波の放射メカニズム解明では,FPGA評価ボードに対するESDイミュニティ試験を行い,コンフィギュレーションデータの書き込み場所(FPGA本体あるいはROM)によって誤動作の傾向が異なることを示した.③ESDに伴う超高速・広帯域電磁ノイズの時間領域測定技術とノイズ影響評価法の開発では,電磁界センサの検討およびAPDによるインパルス性電磁界の評価について実施計画どおりに検討を行った.これらの成果はEMC分野の国際会議について発表を行った.④ESDインパルス性電磁ノイズに対する電子機器のイミュニティ評価と設計手法開発では,ウェアラブル機器を対象として研究を進め,ESD電磁ノイズの特性解明の確実な進展が得られた.この成果は,EMC分野の国際会議で発表した.⑤伝導性インパルス性電磁ノイズの伝播特性の解明では,伝導インパルス性電磁ノイズが機器を妨害するメカニズムの解明および設計指針の提案について計画通りに研究が遂行されている.また,機器から出力される誤りを解析することにより故障メカニズムの一部を特定することが可能である知見を得て目的を達成した. さらに当研究組織が中心になり,国際会議APEMCにおける特別セッション企画,及び電子情報通信学会大会における依頼シンポジウム企画を提案し,本研究計画の研究成果に関して積極的な公開と集中的な議論を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,研究計画に従い順調に進捗し本年度における目標を達成した.最終年度となる平成28年度は,研究成果の積極的な発信と,本研究課題により新たに表面化した問題についての整理を行う. ①ESD放電パラメータと放射ノイズ特性の関係究明,および②ESDモデリングと電磁波の放射メカニズム解明では,ESD放射ノイズ特性を考慮したEMCモデリングに向けて,放射要素の細分化と定量化を進める.また,電磁波放射メカニズムと放射機構を決定する放電路を含めたモデリングについて最終的な検討を行う.さらに,引き続き FPGA評価ボードを供試機器としたイミュニティ試験について,実機レベルでのノイズ影響に対する評価と現象把握する.③ESD に伴う超高速・広帯域電磁ノイズの時間領域測定技術とノイズ影響評価法の開発および④ESDインパルス性電磁ノイズに対する電子機器のイミュニティ評価と設計手法開発では,振幅確率分布(APD)によるインパルス性電磁界の評価結果を用いて,被害側のディジタル無線通信システムのビット誤り率(BER: Bit Error Rate)若しくはパケット誤り率(PER: Packet Error Rate)の推定を行い,一方で測定により求めた同通信システムのBER乃至PERと比較することで,APDによるBER乃至PERの推定が妥当であること,またインパルス性電磁界による同通信システムの障害の特性と傾向を明らかにする.さらにハイテクウエアラブル機器などに対する,インパルス性過渡電磁界の影響について次期研究課題の抽出に向けた基礎調査を行う.⑤伝導性インパルス性電磁ノイズの伝播特性の解明においては,27年度までの目標は概ね達成できたことから,28年度は,これまでに得られたメカニズム及び実験系を用いて,インパルス性電磁ノイズに対する機器耐性を定量的に評価可能な手法について検討を行う.
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Causes of Carryover |
平成27年度における研究計画は,順調に進み,設定目的は概ね達成したと言える.なお,予算計画については,物品費およびその他の予算科目において,予算額と支出額の差が大きくなった.まず,物品費については当初購入予定の測定器機について,既存測定器の借用ならびに流用等で活用できたことにより,購入計画を一部変更したためである.さらに,その他の予算については,研究成果公開を目的とした学会への参加費,論文投稿料が当初見込みを上回ったためである.さらに,研究分担者の所属異動に伴う輸送費の発生などが,差額増加の理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算においては,最終年度であることを鑑み,研究成果の取りまとめ,およびその公開について積極的に進められるよう,予算計画を立てる予定である.また,物品費については,最終的な検証実験や提案手法の妥当性確認のための実験計画について,必要機材ならびに消耗品の予算化を行う予定である.
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Research Products
(24 results)