2014 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャルフェライトヘテロ構造の創製とスピン機能デバイスへの応用
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26289086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中根 了昌 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422332)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 結晶成長 / 電子材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Si基板上にエピタキシャルフェライト構造を作製することが初期の目的となる。この際に、Si基板/上部酸化膜層の界面がSiO2層を持たないことが求められる。その目的の為に、まずは他のグループより報告のある、固相成長Al2O3のSi(111)基板上への作製と、その上にエピタキシャルAl2O3バッファー層/フェライト層を作製することとした。 Si(111)基板をRCA洗浄した後に、化学溶液によって意図的にSiO2層を形成した。その基板を超高真空装置に投入して、EB蒸着法によってAl薄膜を0.4-1nm堆積した。この構造を真空中800℃程度でアニールを行うことにより、固相成長Al2O3を作製した。高速電子反射回折を利用して、Si基板ストリークに加えAl2O3ストリークの出るアニール条件(温度、時間)を見出した。また、X線光電子分光法によってSiO2が形成されない条件も見出した。次にこのテンプレート上に、パルスレーザー堆積(PLD)法によって1nm程度のエピタキシャルAl2O3薄膜の作製できる条件(酸素分圧、基板温度、レーザーエネルギー、パルス周期)を見出した。最後に、この薄膜上にPLD法によってエピタキシャルフェライトの作製できる条件を見出した。両薄膜とも、エピタキシャル成長の確認は高速反射電子回折、低速反射電子回折によっておこなった。X線回折法によって作製した薄膜を評価したところ、基板垂直方向は111方位であったものの、Al2O3薄膜とフェライト薄膜は面内に2ドメインを持つことが明らかとなった。また、原子間力顕微鏡では表面が比較的平坦(RMS~0.3nm)であったものの、PLD法において形成されたマクロな粒(ドロップレット)が多数みられた。磁化測定は保磁力2kOe程度、残留磁化50%程度の明瞭なヒステリシスを持ち、面内方向が容易磁化方向であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空堆積装置群に不具合があり、数か月サンプル作製ができなかったこと。EB蒸着法によるAl薄膜の作製におけるフラックスのレートが不安定であり、データの再現性を取るのに時間が掛かったため。また、ドロップレットを低減するPLD装置の改造が必要であることがわかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に明らかとなった問題は、1)PLD法においてドロップレットが形成されること、2)X線光電子分光による評価では、Coの3sがSiO2と非常に近い束縛エネルギーを持つことからSiO2層の形成が確認できなかったこと、であった。1については装置改造をおこない、現在条件出しを行っている最中である。2については、Niフェライトなど、Coを含まないフェライトを用いて条件出しを行うこととした。また、最終的にはPLDによって作製したAl2O3薄膜バッファー層を取り除き、固相成長Al2O3層上にフェライトの作製をおこないたいため、前年度の構造で確実に良質なエピタキシャルフェライト層が作製できるようになった後に試みる予定である。 今年度はそれらエピタキシャルフェライト単層の作製条件に加え、フェライト層上に異種物質をエピタキシャル成長してスピンフィルター構造を作製する予定である。
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