2015 Fiscal Year Annual Research Report
界面工学に基づく積層型有機発光トランジスタのキャリア輸送と面発光に関する基礎研究
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26289087
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梶井 博武 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00324814)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 電子デバイス / 有機導体 / 分子性固体 / 光物性 / 面状発光トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に下記の3項目に関して有機発光トランジスタ素子の作製及び解析を行なった。 ○ 薄膜配向制御した積層有機薄膜による素子の移動度と発光特性の相関:上層としてアルキルフルオレン系高分子配向薄膜を、下層としてドナーアクセプタ型フルオレン系高分子配向薄膜をそれぞれ使用したヘテロ構造積層型高分子面状発光トランジスタ素子の作製に成功した。ソース・ドレイン電極に対して垂直と水平方向に配向した薄膜を組み合わせたヘテロ構造積層型高分子発光トランジスタ素子の特性比較から低ゲート電圧領域ではHOMO準位に差がないため上層に正孔が蓄積され、それに引きつけられた電子が下層にのみ注入されることで、活性層界面で再結合して面状発光が得られる機構であることが示唆された。発光層に配向薄膜を用いると積層素子からの面状発光に偏光発光特性が付加でき、移動度の向上とキャリアバランスの最適化によって単層素子と同程度の外部量子効率1.5 %を達成した。また、有機受光素子への応用も可能であることも見出した。 ○積層構造素子における有機/絶縁膜界面と発光特性の相関:積層構造素子の場合、有機/絶縁膜界面の変化にともない、上層と下層とのキャリアバランスが変化し、電気特性だけでなく、発光パターンにも影響を与えることが見出された。 ○ 電極-有機薄膜界面における電荷注入・励起子失活と発光特性の相関:ITOや銀ナノワイヤ材料をソース・ドレイン電極に、カーボンナノチューブ材料をゲート電極に用いた高分子発光トランジスタを作製し、電気光学特性比較を行い、電極/有機層薄膜近傍での励起子失活の影響により、ITO電極と銀ナノワイヤ電極との素子間で、電極近傍での発光時の特性が大きく異なることが明らかとなった。また、透明なナノワイヤ電極を組み合わせて素子を作製することで、透明な発光トランジスタの作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
積層有機発光トランジスタにおいて面状発光を得るには正孔と電子のチャネルを分離する必要があり、適切なエネルギー準位と移動度が異なるフルオレン系高分子材料を用いて実現できた。ボトムコンタクト・トップゲート型ヘテロ構造有機発光トランジスタ素子を作製し、上層に配向薄膜を用いて正孔移動度を向上させると、下層を流れる電子との再結合率が高くなり外部量子効率が向上した。積層素子において配向薄膜を用いて上層と下層の移動度のバランスをはかることで、面発光領域の発光特性改善が可能であることが明らかになった。発光由来の下層に配向膜を用いることで積層有機面発光トランジスタに偏光発光特性を付加可能であり、ソース・ドレイン電極を微細化することで微小光源を容易に作製できることから、光部品用の微小光源への応用展開が可能であることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究を更に推し進め、電気光学特性評価を通して、電荷輸送機構や電荷再結合・電荷乖離・励起子失活・励起子拡散過程を明らかにし、結晶性有機薄膜中での面発光に必要な界面形成技術とその評価法を確立する。また、下記の研究についても検討を行う。 ○ フルオレン系高分子半導体材料を用いたヘテロ構造型素子の発光機能の向上とキャリア挙動の検討:アモルファス高分子薄膜のヘテロ構造化による有機EL素子と高分子結晶相薄膜のヘテロ構造化による有機発光トランジスタからの発光スペクトルや発光パターン等の発光特性の違いを検証し、界面での電荷キャリアの蓄積や再結合に関する知見を得る。蛍光量子収率が高く両極性を示すフルオレン系高分子材料を用いたヘテロ構造型素子に関して、発光機能の向上とキャリア挙動の解明を目指し検討を行う。 ○ 有機発光トランジスタの外部量子効率改善の検討:フレキシブル・プリンテッド発光素子を有機発光トランジスタで実現するためには、150℃以下の低温でかつ印刷プロセスにて作製する必要がある。また,OLETの実用化に向けて、外部量子効率向上が課題の1つである。有機半導体層の加熱に伴う凝集状態の変化に着目して高分子半導体に燐光材料をドープした有機発光トランジスタ構造を検討し、外部量子効率の改善を目指す。 ○ ドナー・アクセプタ型フルオレン系高分子を用いた有機発光トランジスタの移動度と発光特性改善:ドナー・アクセプタ型高分子は分子鎖間相互作用が強いため、自己組織化により高い電荷輸送特性を示すことが期待される。フルオレン系高分子を用いて有機発光トランジスタにおける活性層の分子凝集状態の異なりによる電荷輸送と発光特性への影響を明らかにすることで、高い伝導性と発光性の両立を目指し、検討を行う。
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Causes of Carryover |
異動に伴い、3月に研究室の学内での移転が生じたため、購入予定物品の購入を次年度に行うことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している薄膜形成の実験回数を増やすために、必要な消耗品である試薬や電子光学物品の購入経費として使用することを予定している。また、関連する国際会議での申請段階では予定に入っていなかった次年度の出張への旅費として使用することも予定している。
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