2015 Fiscal Year Annual Research Report
拡散メカニズム解析に基づく3次元トランジスタ局所領域におけるドーパント分布制御
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26289097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50344718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 康介 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10302209)
清水 康雄 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40581963)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アトムプローブ / ドーパント |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代3次元構造トランジスタの特定の微細領域におけるドーパント拡散過程を最新のUVレーザー型3次元アトムプローブ法を用いて明らかにするために、ルネサスエレクトロニクスと協力して作製したトレンチ構造トランジスタを作製し、トレンチ構造トランジスタの多結晶Siゲート中のドーパントの拡散経路について、最新のレーザーパルス型局所電極3次元アトムプローブを用いて調査した。この多結晶Siゲートにおいて、ドーパントは熱処理によってどのような経路をたどって再分布するのか?主な拡散経路として界面拡散、粒界拡散、粒内拡散が考えられる。この問題に対して、3次元アトムプローブを用いて粒界、粒内、ゲート酸化膜界面を区別してドーパント分布の熱処理依存性を調べた。まず、集束イオンビーム加工装置による3次元アトムプローブ用針試料作製方法の検討や3次元アトムプローブの測定条件の最適化などを行った。そして最適化した条件を使用して、トレンチ構造トランジスタの多結晶Siゲート中のドーパント分布を3次元アトムプローブで取得した。3次元アトムプローブ測定で得られる3次元アトムマップは、原子の3次元位置と元素情報を含んでおり、粒界、粒内、酸化膜界面に注目し、プロセス熱処理におけるそれぞれのドーパント分布の変化を調べることでドーパントの拡散経路を調べた結果、n-typeトランジスタのゲートドーパントのPとp-typeトランジスタのゲートドーパントのBでメインの拡散メカニズムが異なることが明らかになった。Pは多結晶Siの粒界拡散が酸化膜界面拡散や粒内拡散よりも速く、多結晶Siゲート中のPの拡散は粒界拡散が支配的であった。一方、Bは粒界拡散だけではなく粒内拡散も支配的であり、Pの粒界拡散よりもBの拡散のほうが速いこともわかった。これらの結果は論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、次世代3次元構造トランジスタ(トレンチ構造トランジスタ)の特定の微細領域(多結晶Siゲート)におけるドーパント拡散過程をUVレーザー型3次元アトムプローブ法を用いて調査し、3次元アトムマップの粒界、粒内、酸化膜界面領域におけるドーパント分布の熱処理温度依存性から、どの拡散経路(界面拡散、粒界拡散、粒内拡散)が支配的か明らかにした。このためには針試料作製が肝であり、針先先端(直径100nm、深さ200nm)領域にトレンチ構造トランジスタの多結晶Siゲートを持ってくる必要があり、集束イオンビーム加工装置によるアトムプローブ針試料の加工方法の検討を行った。またアトムプローブの測定条件を検討して、測定の最適条件の検討を行った。その検討した方法や最適化した条件を使用して、トレンチ構造トランジスタの多結晶Siゲート中のドーパント分布を3次元アトムプローブで取得でき、さらに、プロセス熱処理におけるドーパント分布の変化を調べドーパント拡散経路を評価した。n-typeトランジスタのゲートドーパントのPとp-typeトランジスタのゲートドーパントのBでメインの拡散メカニズムが異なることを明らかにした。Pは多結晶Siの粒界拡散が酸化膜界面拡散や粒内拡散よりも速く、多結晶Siゲート中のPの拡散は粒界拡散が支配的であった。一方、Bは粒界拡散だけではなく粒内拡散も支配的であり、Pの粒界拡散よりもBの拡散のほうが速いことなど、今後プロセスを改善する上で大変重要な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ルネサスエレクトロニクスと協力して作製した次世代3次元トランジスタ試料(トレンチ構造トランジスタ)の多結晶Siゲート中のドーパントの拡散経路について、最新のレーザーパルス型局所電極3次元アトムプローブを用い、粒界、粒内、酸化膜界面に注目してプロセス熱処理におけるそれぞれのドーパント分布の変化を調べ、ドーパントの拡散経路を調べた結果、昨年度までに、n-typeトランジスタのゲートドーパントのPとp-typeトランジスタのゲートドーパントのBでメインの拡散メカニズムが異なることが明らかになった。今年度は、詳細な拡散メカニズムを求めるために、ドーパントの粒界拡散係数を高精度で決定しようとする。まず熱処理条件を変化させた試料を作製し、粒界が針状試料の針先部分に入るように、その試料を集束イオンビーム加工装置を用いて針状に加工し、最適化した測定条件で3次元アトムプローブ測定を行う。取得したアトムマップから特に粒界におけるドーパントの分布を詳細に調べ、粒界における濃度プロファイルを算出し、ドーパントの粒界拡散係数の高精度決定を行う。また共注入した時の異種ドーパント同士の相互作用による拡散係数の変化などについても調査するため、同様の実験を共注入試料においても行う。特にドーパント種によって相互作用は異なり、共注入による拡散係数変化もドーパント種に依存するため、いくつかの主なドーパント種について調査する。特に粒界拡散係数の評価は他の手法では困難であるため、共注入によって粒界拡散がエンハンスされるのか?抑制されるのかなど本手法を用いて明らかにする。
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Causes of Carryover |
3次元アトムプローブで次世代3次元トランジスタ試料(トレンチ構造トランジスタ)の多結晶Siゲート中のドーパントの拡散経路を調べるためには、3次元アトムプローブ用針状試料の針先先端(直径100nm、深さ200nm)領域にトレンチ構造トランジスタの多結晶Siゲートを持ってくる必要があり、集束イオンビーム加工装置によるアトムプローブ針試料の加工方法の検討を行った。その結果、試料作製方法を改良することで、試料加工関連の消耗品の使用が予定よりも少なく抑えられることがわかり、そのために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、ドーパントの粒界拡散係数の高精度決定および共注入した時の異種ドーパント同士の相互作用による拡散係数の変化などについても調査する予定であるが、ドーパント種や熱処理の数だけ集束イオンビーム加工装置による3次元アトムプローブ針試料の加工が増えるため、その試料加工時の試料作製用の試料土台等の消耗品に使用予定である。
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Research Products
(4 results)