2014 Fiscal Year Annual Research Report
反強磁性NiO層を介したスピン制御によるGMR磁気センサの高機能化
Project/Area Number |
26289102
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩田 聡 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (60151742)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 剛志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50303665)
大島 大輝 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 助教 (60736528)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | NiO反強磁性 / 歪みセンサ / 巨大磁気抵抗効果 / スピンバルブ膜 / 磁気異方性 / 触覚センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
磁壁位置振動方式の巨大磁気抵抗(GMR)センサの高感度化を目指して,磁壁位置をピン止めさせ,磁壁位置が常に一定位置で振動するタイプの磁気センサを開発した。まず,CoFeB薄膜を幅20ミクロンのストライプパターンに加工するとともに,ストライプの途中に三角形の切れ込みを入れ,この切れ込み位置で,磁壁がピン止めされる様子を磁気光学顕微鏡で観察した。磁壁位置を振動させるためには,磁壁抗磁力以上の交流磁界を印加する必要があるため,磁壁抗磁力の数Oe以上のピン止め効果が得られる切り欠きを有するGMRストライプパターンをECRエッチングにより形成し,そのパターンの上に幅100ミクロンのAl導体パターンを形成して,磁気センサデバイスを作製した。磁気センサをブリッジ回路に組込み,計装アンプで増幅するセンサ回路を試作して,センサ特性を測定したところ,切り欠きのない磁気センサに対して,1桁ほどノイズが低減されていることが分かった。しかし,センサ出力も低下しており,S/N比としては,改善が得られなかった。これは,切り欠きによって,磁壁位置がピン止めされることで,磁壁の不規則な運動が抑制されて,ノイズが低減したものの,磁壁がパターンのエッジでピン止めされることで,パターンの中央付近の磁壁の往復運動も抑制され,磁気抵抗変化による信号が小さくなってしまったものと考えられる。 一方,歪みセンサについては,PET基板などプラスチック基板上にGMR膜を付けることで,破損しにくい素子の作製を試みたが,ガラス基板上のGMR膜のような大きな磁気抵抗効果を示さなかった。そのため,歪みを加えても破損しにくい特殊ガラス上にGMR膜の成膜を行った。その結果,従来のカバーガラス上と同様の磁気抵抗特性が得られたので,これをパターンに加工するとともに,GMRパターンに交流磁界を加えるためのAl導体の形成を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切り欠きを設けた磁壁位置変調方式のGMRセンサの試作に成功し,そのセンサ特性を評価することができた。ノイズの低減ができたものの,S/N比の向上という点では,不十分であったが,ノイズの発生原因を特定できた点は,一定の進展があったものと評価できる。歪みセンサ,触覚センサについては,破損しにくく,かつ大きな磁気抵抗効果が得られる基板材料の探索に少々時間を要したが,曲げに強い特殊ガラスを入手したことで,研究の進展が期待できる段階に至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
磁壁位置変調方式の磁気センサについては,センサの形状を工夫することで,ノイズを低減できることが分かったので,さらに素子構造を見直すことで,センサ出力の向上を目指す。また,GMR膜の抵抗を減らすために反強磁性層としてNiO膜を利用するとともに,磁化自由層をCoFeB/NiO/CoFeBのように3層構造に拡張して,熱揺らぎによるノイズの低減を図る。一方,歪みセンサについては,10nmレベルの薄い磁化自由層をもつスピンバルブ膜の場合,磁歪の逆効果によって,磁化自由層の磁気異方性を変化させようとしても,期待される効果が1桁ほど小さいことが分かってきた。これは,10nmと薄いFeSiB層の磁歪定数が,バルク材料のものより低下しているためと推定できるので,大きな磁歪を示すことが期待される100nm以上の厚いFeSiB層と薄いCoFeB層を反強磁性NiO層を介して交換結合させることで,大きなセンサ出力を示す歪みセンサを開発する。
|
Causes of Carryover |
本研究では,NiO反強磁性層を介した強磁性層間の結合を利用して磁気センサの特性の向上を目指している。そのため,スピンバルブ膜の層構造が増え,真空一貫での成膜のための原料の種類を増加させる必要がある。そこで,成膜装置であるスパッタ装置の改造を計画していた。しかし,設計を開始すると,解決すべき構造上の問題点が多く,検討に時間を要したため,製作を予定していたスパッタソースの発注に至らなかった。そのため,次年度に一部の予算を繰り越し,H27年度に設計を完成させて発注することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
スパッタ装置に追加可能なスパッタソースを設計して,現有のスパッタ装置で真空一貫で成膜できる材料の種類を2種類,増加させられるように改造を加える。これにより,これまでより複雑な層構造を有する巨大磁気抵抗膜の成膜を行うことができるようになる。
|
Research Products
(14 results)