2015 Fiscal Year Annual Research Report
反強磁性NiO層を介したスピン制御によるGMR磁気センサの高機能化
Project/Area Number |
26289102
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩田 聡 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60151742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 剛志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50303665)
大島 大輝 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (60736528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NiO反強磁性 / 歪みセンサ / 巨大磁気抵抗効果 / スピンバルブ膜 / 一方向異方性 / 触覚センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用した磁気センサは,様々な用途を目指して多くの研究開発が行われているが,GMR素子を微細化すると,磁化自由層の磁化方向が熱エネルギーの影響で揺らぎノイズが発生する。本年度は,この熱揺らぎによるノイズを低減する手段として,磁化自由層の実効的な層厚を厚くする検討を進めた。まず,NiO/NiFeおよびNiO/FeCoB二層膜を反強磁性NiO層の層厚をパラメータとして成膜し,それらの交換異方性を調べた。その結果,多結晶のNiFeの場合には,NiFe層がNiO層の上下のいずれの場合も一方向異方性が発現するが,アモルファスのCoFeB磁性層の場合は,NiO層の上に積層した場合のみ,一方向異方性が観察された。本研究では,絶縁性のNiOを介したCoFeB/NiO/NiFe3層膜の磁化状態が,NiO層を介した交換結合よって,一体として変化する条件を探しているので,NiFe(5nm)/NiO(x nm)/CoFeB(5 nm)の3層膜を作製して,磁化容易軸方向の磁化曲線を測定した。その結果,CoFeB層がNiO層の下地になる場合は,NiO層の層厚によらず,2つの磁性層は,独立に磁化反転して,交換結合が不十分であることが分かった。一方,NiFe層が下地になる場合は,NiO層が10nmにおいて,2つの磁性層の磁化反転が,同じタイミングで起きることが確認された。次年度には,この3層膜を磁化自由層とするGMR素子を作製する。 GMR素子を利用した歪みセンサに関しては,MnIr/CoFe/Cu/CoFeB/FeSiB構造の素子をカバーガラス上に作製して,カバーガラスを湾曲させたときのセンサ出力を観察した。センサ出力を素子に外部から加えた交流磁界に対する交流信号の振幅として,歪み量に対して信号をプロットしたところ,ある歪みで振幅が極大を示し,この極大を示す歪み量は,素子に加える直流バイアス磁界に応じて変化することが明らかになった。現在,触覚センサへの応用を目指して,プラスティック基板上への素子の作製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NiO層を介した交換結合については,本年度にCoFeB/NiO/NiFe3層構造膜を作製して,2つの磁性層が交換結合によって結合して,磁化方向が同時に判定する条件を明らかにしている。すなわち,当初の目的通り,実効的な磁性層の膜厚を増大させることによる熱揺らぎによるノイズの低減に一定の目処を立てるための素子を作製する1つ前の段階に達している。また,歪みセンサについては,カバーガラス上にスピンバルブ素子を作製し,カバーガラスの一端に力を加えてガラス基板をわずかに湾曲させることで,交流出力が変化することを確認している。さらに直流バイアスによってセンサ特性が変化することを観察しており,感度を極大化するためのバイアス設定について,検討を進めている段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
CoFeB/NiO/NiFeの3層膜において2つの磁性層が交換結合する条件が,明らかとなったので,この3層膜を磁化自由層とするスピンバルブ膜の作製を行う。スピンバルブ膜では,MnIr/FeCo/Cu/NiFe/NiO/CoFeBという6種類の層をナノオーダーで精密に制御して積層する必要があるので,2インチのスパッタソースを8つ備えている8元マグネトロンスパッタによって成膜を行う。GMR素子については,MnIr/FeCo/Cu/NiFe層のみにセンシング電流を流す必要があるため,電極部分について,最上層のNiO/CoFeBのみをエンドポイントSIMSセンサ付きのECRエッチング装置で,Arイオンエッチングを行って除去し,センサパターンを作製する。 一方,歪みセンサについては,ガラス基板上への素子は,すでに動作しているので,ポリイミドなどのフレキシブル基板上への素子の作製を進める。ただ,これまでの検討では,基板表面の平坦性を向上させるためのレジストを塗布後にスピンバルブ膜をスパッタ成膜した場合,微細加工プロセスの途中で膜が剥がれしまう問題が生じた。H28年度には,レジストの剥離プロセスにRIEなどのドライプロセスを導入することで改善を目指す。
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Causes of Carryover |
H27年度は,反強磁性NiO層を介した交換結合を実現するために4元のマグネトロンスパッタリング装置により,CoFeB/NiO/NiFe3層膜の作製を行ってきたが,3構造膜の作製に注力していたため,6層構造が必要なスピンバルブ膜の作製まで行うことができなかった。そのため,スパッタ装置にマグネトロンスパッタソースを追加して,真空一貫で成膜可能なソースの数を増やす必要性がなかった。また,交換結合が生じる条件もH27年度前半には明らかでなかったため,装置の構成上の条件も詰めることができなかった。H28年度には,スパッタ装置の部分的な改造を行って,6層構造のスピンバルブ膜の成膜を行う。また,作製した素子の測定システムの見直しについても,次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
反強磁性のNiO膜をスパッタ成膜する場合には,負イオンの酸素が,アースされている基板に衝突して,交換結合などの特性の劣化を招く可能性がある。この影響を低減するためには,スパッタ装置内のスパッタソースと基板の配置を数cmずらすなどの工夫が必要である。H28年度には,スパッタ装置にスパッタソースを追加するとともに,スパッタソースと基板の配置を変化させられるよう,装置の部分的な改造を行う。また,作製した素子の磁気抵抗効果の測定において,より精度の高い計測ができるよう,測定システムの部分的な改造を行う。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Ultrafast spin-switching of a ferrimagnetic alloy at room temperature traced by resonant magneto-optical Kerr effect using a seeded free electron laser2015
Author(s)
Sh. Yamamoto, M. Taguchi, T. Someya, Y. Kubota, S. Ito, H. Wadati, M. Fujisawa, F. Capotondi, E. Pedersoli, M. Manfredda, L. Raimondi, M. Kiskinova, J. Fujii, P. Moras, T. Tsuyama, T. Nakamura, T. Kato, T. Higashide, S. Iwata, S. Yamamoto, S. Shin, I. Matsuda
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Journal Title
Rev. Sci. Instrum.
Volume: 86
Pages: 083901-1-5
DOI
Peer Reviewed
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