2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26289114
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安永 守利 筑波大学, システム情報系, 教授 (80272178)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 信号品質 / Signal Integrity / 信号損失 / プリント基板 / 伝送線 / 遺伝的アルゴリズム / Genetic Algorithm / 共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリント基板やLSIの配線のGHz級高速信号伝送では,配線の伝送損失によって信号品質が大きく減少することが問題となっている.このため現在は,配線にイコライザやエンファサイザ等の能動回路を付加することで減衰劣化したディジタル信号を回復する技術が用いられている.一方,イコライザ等を用いることでコストと消費電力は増加し,実装密度も低下する.本研究では,既に我々が提案している新たな配線構造である“セグメント分割伝送線”をこの信号品質低下問題に適用する.これによりイコライザ等を用いず,配線構造の変更のみで信号品質を改善することが本研究の目的である. 平成26年度は,セグメント分割伝送線を伝送損失によって劣化した信号の品質改善に適用すべく,その基本スケールアッププリント基板設計を行った.ここで,セグメント分割伝送線について学会発表の場で関連研究者の方々から,“セグメント分割伝送線は,何故,波形を整形できるのかを解析すべきである”ことや“その解析にあたっては,周波数領域での評価が不可欠である”との指摘を受けた.このため,基本スケールアッププリント設計においては,そのsパラメータ解析ができることを条件とした設計を行った. 設計対象は,スケールアップ比を4.0として,1GHzクロック信号(振幅1V)とした.また,配線長は15cmとして,3~4pFの容量性負荷と3~4nHの誘導性負荷を持つ伝送系とした.この系では信号は大きく歪み,論理マージンは0.26V程度まで減少した.これに対して,設計したセグメント分割伝送線では,信号品質劣化を大幅に改善することができ,論理マージンは約0.84Vまで回復した(改善率は約3.2).また,この設計を元にプリント基板を試作し実測したところ,ほぼ設計と同じ改善率を得ることができた.これより,sパラメータの解析を行いつつ,スケールアップ評価ができることもわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究途中に学会で受けた指摘(“セグメント分割伝送線は,何故,波形を整形できるのかを解析すべきである”ことや“その解析にあたっては,周波数領域での評価が不可欠である”との指摘)を評価するために,当初研究目的の設計に加えて,sパラメータ評価ができる条件を加えてセグメント分割伝送線を設計できた.この点では,当初研究目的以上のセグメント分割伝送線を設計することができた. 一方,当初予定では,ランダム信号を対象とした基本スケールアッププリント基板を設計予定であったが,実際には,クロック信号を対象とした基本スケールアッププリント基板の設計に変更した.これは,セグメント分割伝送線の設計CADの一部動作不良が原因である.本来はランダム信号で評価する方が汎用性は高い.このため次年度は,あらためてランダム信号による基本スケールアッププリント基板を設計,試作予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に,sパラメータ評価を含めて信号品質を評価できるセグメント分割伝送線を設計できたことは,当初予定以上の前進であった.今後,sパラメータ評価をシミュレーションと実測の両面から含めた測定と解析を行っていく. さらに,ランダム信号を対象とした基本スケールアッププリント基板を設計を行うとともに,8Gbpsを目指した伝送損失回復のためのセグメント分割伝送線設計を行う.これは,LSI内配線を対象とした設計である.なお,セグメント分割伝送線は,LSI内配線だけではなは無く,近年着目されているシリコンインターポーザのにも適用可能であることがわかってきた.今後はプリント基板だけではなく,シリコンインターポーザ用配線も適応対象として設計と評価を行う予定である. シリコンインターポーザは,半導体であるシリコンを基板とするため,その伝送特性に“遅波モード”といった性質を含めた評価が不可欠になると考えられる.今後,このような特性について調査をするとともに,開発を進めている企業との意見交換を行い,研究開発を発展させる.
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Causes of Carryover |
当初予定よりも成果発表すべき結果が増えたため,実際の旅費(学会発表のため)が大幅に増えた.一方,実験に必要な物品価格減少や人件費の節約により,物品費と人件費・謝金の総額が当初予定よりも大幅に減少した.この増減により,わずかではあるが,5,799円の残額(次年度使用額)が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,必要実験項目の増加により,人件費が増加することが見込まれる.5,799円の残額(次年度使用額)については,次年度の人件費に当てる計画である.
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Research Products
(6 results)