2014 Fiscal Year Annual Research Report
高周波電波パルスの空間分布計測及び波源探査に関する研究
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26289118
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
八木谷 聡 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (30251937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 光紀 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (70422649)
井町 智彦 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 准教授 (60372489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電磁環境計測 / 高周波電波パルス / 空間分布計測 / 可視化 / 波源探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
マッシュルーム型メタマテリアル構造を持つ薄型電波吸収板に入射した電波の電力は表面の電極間に挿入した抵抗で吸収されるが、このとき入射波は反射(散乱)されないため、各抵抗の両端に誘起される電圧の振幅・位相は入射電波(電界)の振幅・位相にそのまま比例するはずである。理論解析及び電磁界シミュレーションにより、平面波に対して、各抵抗の電圧振幅・位相を計測することで入射電波の強度・位相分布を求められることを確認した。このとき、有限サイズの吸収板を用いると端部における散乱により入射電波の分布が板面上で不均一となることが明らかとなったが、端部における抵抗値や電極形状を調整することで、散乱を抑制できることが分かった。 また、電波吸収板に球面波が入射したときに、板面上で如何に吸収されるかを、理論的に解析した。高速フーリエ変換を用いて球面波を平面波の合成として表すことで、平面波(斜め入射)の反射率・吸収率に基づいて球面波の反射・吸収を高速に計算する手法を開発し、近傍に置かれたダイポールアンテナ等から放射された球面波の吸収、計測特性を評価した。 遠方電磁波源からの平面波(2.4 GHz帯)を計測するための小型電波吸収板(30 cm×30 cm)を設計・試作し、電波暗室でその吸収特性を評価した。吸収板の裏面には8×8=64箇所の計測点を2次元状に配置し、各点から水平及び垂直偏波の信号を直接引き出して計測できるようにした。その際、高周波スイッチにより計測点を高速に切り替えることで、1台のスペクトラムアナライザにより入射波の2次元強度分布を高速(数秒程度)、高感度(-100 dBm以下)に計測できるシステムを構築し、動作を確認した。標準アンテナを用いて平面波を照射し、計測性能を評価した。 一方、吸収板面上の振幅・位相分布に対して、干渉計法及びMUSIC法を用いて、平面波の到来方向を推定する手法について検討を行い、精度を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小型電波吸収板による、遠方電磁波源から放射された平面波の吸収及び計測特性に関しては、理論及びシミュレーションによる解析が予定通りに進んでおり、併せて端部の散乱による影響の抑制対策も明らかにできるなど、順調に進展している。さらに、近傍から放射された球面波の吸収特性について、当初計画よりも前倒しで解析を進めており、従来理論解析が困難であった球面波の吸収特性を、高速に数値計算することに成功している。 また、小型電波吸収板(50 cm×50 cm)の試作については、計測回路を含めた多層基板の製作に当初の想定よりも多額の経費がかかることが判明したため、30 cm×30 cmのサイズに縮小したが、入射平面波の計測性能には問題がないことを確認している。一方、入射電波の分布を計測する回路としては、当初予定していた高周波振幅・位相差計測用ICを実装した際に寄生成分の影響等により必ずしも想定する感度及び精度が得られないことが判明した。そのため、高周波スイッチとスペクトラムアナライザを用いることで、高精度・高速に吸収板面上の入射電波分布を計測するシステムを設計、試作した。強度分布の計測は実施したが、位相計測には対応できなかった。この点については、2入力同時計測可能なスペクトラムアナライザを用いることで、平成27年度に振幅・位相を含めた入射波分布の計測が可能になる予定である。 一方、入射平面波の振幅・位相分布に基づく到来方向探査手法の検討は進んでいるが、上述のように位相計測が実施できていないため、平面波に対する方向探査及び波源の可視化を計測システム上に実装できていない。平成27年度には位相計測が可能となるため、平面波と球面波をまとめて、波源推定及び可視化システムを構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
メタマテリアル電波吸収板を用いることで、遠方波源からの平面波だけでなく、近傍波源からの球面波に対しても、振幅・位相分布を精度よく計測できることを理論及びシミュレーションにより検証する。 大型吸収板として60 cm×60 cm程度のものを設計・試作して、近傍球面波に対する電波吸収・計測性能を評価する。吸収体に8×8程度の計測点を配置し、まず高周波スイッチと2入力の振幅及び位相差を同時計測可能なスペクトラムアナライザを組み合わせることで、狭帯域入射波に対して、基準点と計測点を高速に切り替えながら吸収板面全体の振幅と位相差を計測できるシステムを構築する。最終的には、全計測点の波形そのものを同時に計測する回路を設けることで、パルス状の入射波に対しても、振幅・位相の2次元分布を計測できるようにする予定である。 波源推定手法としては、遠方平面波だけでなく近傍球面波に対して、計測された吸収板上の振幅・位相分布から、波源の方向及び位置を推定する手法を検討する。特に、波源が複数存在する場合や、波源が空間的に広がりを持つような場合に、精度良く波源推定を行える手法を検討する。その結果に基づき、上述の振幅・位相計測システムに実装することで、AR技術も利用した「その場で電磁波源が見える」システムを構築し、その性能を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
EBG板のサイズを当初予定の50 cm×50 cmから性能上同等の30 cm×30 cmに変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品(電子部品)の購入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)