2015 Fiscal Year Annual Research Report
人体頭部・眼球の情報獲得行動による超高速人体装着型アンテナ系通信資源統合管理機構
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26289122
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 忠彦 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40351324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 拓 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00388133)
陳 強 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30261580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移動体通信 / 高信頼性ネットワーク / 情報通信工学 / スマートセンサ情報システム / 先端的通信 / アンテナ / 人体等価ファントム / ウエアラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
端末用アンテナとしてブロードサイド型では直列給電方式の最適化を図るために給電回路の動作メカニズムの分析を進め,エンドファイヤ型アンテナではビームのチルト角の制御法と広帯域化について検討を進めた.基地局アンテナではスルーホール型八木・宇田アンテナの先端部分に拡張誘電体を装荷する構造を検討し,チルト角と利得を制御する方式を提案した.また人体に近接したアンテナの電気特性を評価する実験に対応するための人体等価ファントムの自動組成合成システムに対する研究を進め、組成自動設計システムのプロタイプを作成した.
人体近傍に設置するウエアラブルデバイス用偏波ダイバーシティアンテナを設計し,アンテナの試作,特性評価を行うことでウエアラブルデバイスの受信感度改善を評価した.また,昨年に引き続き,アンテナを人体表面及び人体内部に設置した場合,人体の吸収と遮蔽による電波の伝搬損失を検討し,VHF帯からマイクロ波帯までの広い周波数範囲における電波伝搬のモデリング解析を行い,周波数や偏波などの電波の要素による人体近傍エリアにおける電波伝搬の影響を明らかにした.
眼鏡型デバイスに装着された高利得・狭指向性アンテナを用いてアドホックネットワークを構成するため,前年度に提案した,端末位置およびユーザの姿勢情報を考慮した経路制御プロトコルに最適化機構を付加した.提案方式の有効性を計算機シミュレーションにより検証し,既存方式と比較して,通信成功率を悪化させることなく冗長トラヒックを30%削減し,さらに経路構築遅延を20%低減可能なことを明らかにした.さらに,提案方式の経路制御アルゴリズムの応用として,センサネットワークおよびネットワークコーディングと組み合わせた場合の検証を行い,提案方式の応用領域について明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り,眼鏡フレーム部およびテンプル部に実装するアンテナの基本設計を完了した.特に、レンズ周囲に配置することを想定した直列給電型ブロードサイドアレーアンテナでは8素子配列構造の中央給電アレーアンテナを検討し,主ビーム放射方向の寸法を 5 mm 以下に抑え, 60 GHz帯 (57-66 GHz) においてVSWR 2以下,利得 14 dBiを実現する構造を開発した.一方,エンドファイア型アンテナでは眼鏡型ウエアラブルデバイスのテンプル部開き角を5°から15°と想定し,ビームチルト角10°程度のビーム形状を実現する構造で広帯域化を実現した.また,複数の人体組織のファントム組成を単一周波数毎に自動設計できるソフトウエアの開発を完了した. 研究計画の通り,ウエアラブルデバイス用アンテナの性能向上のため,偏波ダイバーシティ設計法を確立した.また,実環境における人体に設置するアンテナの特性評価や無線センサーの無線通信の性能評価などの実験的検討を行うことにより,ウエアラブルデバイスのアンテナの放射特性に対する人体の影響やその影響を低減するための技術手法などを理論と実験の両面から評価した.これらの結果は,今後の人体近傍における無線通信やセンサシステムの設計に欠かせない電波伝搬モデルを明らかにした. 前年度に提案した経路制御プロトコルを多様なネットワーク環境で効率的に動作させるための最適化機構を提案し,眼鏡型デバイスに装着された高利得・狭指向性アンテナを用いたアドホックネットワーク構成技術を確立できた.一方で,当初は,第2年度に提案経路制御プロトコルを遅延耐性ネットワークへ適用する予定であった.しかし,事前検証により不安定なユーザ間接続環境での提案プロトコルの性能が要求条件に満たなかったことから,多様なネットワーク環境下で提案プロトコルを動作させるための最適化機構の検討を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
直列給電方式に関しては,スルーホール型折返し放射器の構造パラメータをアンテナユニット毎に設定することで所望のインピーダンス変換と電力分配比を同時に実現するアレーアンテナ構成法に注力し,電力分配比の周波数特性の変動を低減する放射素子構造の最適化を進める.また,眼鏡型デバイスは人体頭部,特に眼球近傍に近接して配置されるため、近接する人体の指向性に対する影響含めたアンテナシステムの評価を進める.さらに,人体装着型デバイス用の複合アンテナシステムの主要構成要素として導電性繊維で構成した放射素子に注目し,導電性繊維型放射素子の放射特性を人体の影響を含めて解析・評価する研究を推進する.
ウエアラブルデバイスは,生体に直接に触れるため,金属ではなく,親生体性の材料でアンテナを製造する必要がある.そのため,親生体性の材料の高周波特性を評価し,それを用いた小形,高効率のアンテナの設計法の検討が必要である.今後は,これまでの研究成果を用いて,親生体性の材料を用いた体表面に設置するアンテナの設計と評価方法の確立を目指す.
H27年度の成果により,高利得・狭指向性アンテナによって構成したアドホックネットワーク上で実用可能な経路制御プロトコルの開発が完了した.今後は,提案経路制御プロトコルを遅延耐性ネットワーク(Delay Tolerant Networking: DTN)へ適用し,蓄積型マルチキャスト転送を行うことで,ユーザ間の動画情報配信・収集を実現する方式を提案する.また,蓄積型マルチキャスト転送の伝送特性を改善するための技術として,ネットワーク内部で情報を符号化し転送することでネットワークの大容量化を実現するネットワークコーディングを用い, DTN型動画情報配信方式の高度化を図る.スマートフォン・タブレットなどの実機を用いて提案方式の各応用における性能評価も行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初,アンテナビーム制御・通信リソース制御並列処理システムを構築するための計算・処理機材と,この処理を実行するためのソフトウエア・コンパイラーを複数導入する予定であったが,実験試験局の設備に故障が発生したため,これの保守のために予算を使用した.また、今年度はスペクトラムアナライザやネットワークアナライザなどの測定機器の老朽化のために測定機材の不具合が発生し,修理関連の予算が必要であった.この様な背景から,今後の研究執行に必要となる重要測定装置に故障が発生した場合の予算上のリスク回避として平成27年度での予算の執行を控え,次年度に予算を繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の状況を踏まえて、今年度使用する予定の測定・評価装置に不具合が発生している機材があるため,これらの機材の補修や校正に予算を充当する予定.またビーム制御・通信リソース制御の評価を実現するために,市販のミリ波帯搬送伝送機材を購入・分解し,構成部品とし試作することで研究を進める.また、眼球組織への電磁波吸収制御の実験的研究を目的とする人体等価ファントム組成自動設計システムの広帯域化に向けた試薬データベースとシステム開発のための試薬に予算を充当する.
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