2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会インフラ施設再生に向けた既設コンクリート構造物の新しい補強方法
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26289142
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二羽 淳一郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60164638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 浩嗣 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (10573660)
三木 朋広 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30401540)
渡辺 健 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 構造物研究部, 副主任研究員 (40450746)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コンクリート構造 / 維持管理工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会インフラ施設の経年劣化に伴う耐力や変形能力の低下は深刻であり、国民の安全安心な生活を脅かす深刻な問題となっている。コンクリート構造物は、社会インフラ施設を構成する重要な役割を担っているが、経年劣化により、所定の耐力や変形能力が低下したと判断される場合は、適切な対策を講じる必要がある。しかしながら、公共事業費の大幅な増加が見込めない昨今の状況を考えると、これら経年劣化した施設の更新や新設は困難であり、したがって簡便かつ有効な補強方法が必要となる。 本研究は、低下した耐力を構造的に回復することのできる簡易で有効な新しい補強方法の開発を目指すものである。新しい補強方法として、1.破断したPC鋼材を有するPCはりに対するCFRPシート接着による曲げ補強、2.プレテンションUFC板を用いた損傷したRC部材の曲げ補強、3.細径ステンレス鉄筋を用いたRC板(SUS埋設型枠)とPCストランドを併用した、損傷したRC部材のせん断補強等を実施した。1.に関しては、ポストテンション方式のPCはりを対象に、配置されたPC鋼材の1/2がスパン中央で切断された(すなわち、PC鋼材量が1/2に減少した)際に、曲げ耐力は当初のほぼ1/2に低下するが、CFRPシートをPCはり下面に適当量接着することにより、PCはりの曲げ耐力が当初の水準にまで復元できることを見出した。2.のプレテンションUFC板接着による補強方法も期待できる耐力向上策であり、これを適当量配置することにより、損傷したRCはり部材の曲げ耐力を復元できることを見出した。さらに、3.の細径ステンレス鉄筋を用いたRC板(SUS埋設型枠)とPCストランドを併用して、損傷したRC部材にせん断補強を行った結果、十分にせん断補強効果があり、耐力の復元に寄与できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は、1.各種の新しい補強方法に関する基礎的な実験データの蓄積、2.解析的手法を用いた補強方法の評価、3.実用化に向けた設計・施工上の提言の、3ステップに分かれており、平成26年度はこの内の各種の新しい補強方法に関する基礎的な実験データの蓄積に注力した。その結果、(a)FRPシート接着による損傷したPC梁の耐力復元、(b)プレテンションUFC板接着による損傷したRC梁の耐力復元、(c)細径ステンレス鉄筋を用いたRC板(SUS埋設型枠)とPCストランドを併用した、損傷したRC梁のせん断耐力復元に関する実験的な検討を行い、それぞれ有用な実験データを蓄積することができた。その中の一部は既に論文に取りまとめて、外部に発表している。なお、上記以外の補強方法については、当初の予定からみて、やや物足りない面もあるが、研究全体としては十分に成果が挙がっており、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、26年度の実験によって得られた知見について、解析的な手法を併用することで、なぜ、コンクリート部材の耐力や変形能力を劣化前の状態に復元できるのかという点を明らかにしていく。解析ツールには、有限要素法の他、格子モデル解析等を用いる。解析的な検討においては、各種補強材料自体の力学特性に加えて、母材となるコンクリートと補強材料間の付着特性を考慮する。ここで、母材コンクリートが著しく劣化し、強度低下を示す場合には、その劣化状態を適切に考慮する。また、補強材料自体の特性や構造物と補強材料間の付着・定着特性、既存構造と補強材間の剛性比等をパラメータとした解析を系統的に実施し、補強方法の有効性を検証する。 なお、解析の結果、新たな知見を得たり、実験データに対する疑問が生じたりすることが想定されるが、この点についてはフレキシブルに対応する。つまり、解析検証によって、構造実験において見られた現象に疑念が出た場合には、2年目、3年目といえども、随時、追加実験を実施し、解析上の疑問点や問題点を解決していく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた3Dレーザースキャナが予想以上に安価であったため、予算に余りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に購入を予定している変位計の予算に充当する。
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