2014 Fiscal Year Annual Research Report
水同位体比データ同化システムを用いた大気・陸面水循環過程の詳細解明
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26289160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳村 圭 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50376638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 元植 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境領域, 主任研究員 (40414502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水安定同位体比 / データ同化 / 分光分析 / 蒸発散フラックス / 成分分離 / 気候復元 / 大気循環 / 陸面過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳村ら(2013)が構築した局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)と水同位体大気大循環モデル(IsoGSM)で構成された水同位体比データ同化システムを利用し、各種観測データの時空間分布を用いた観測システムシミュレーション実験(OSSE)を執り行った。人工衛星Auraに搭載したTES(Worden et al., 2007)やEnviSatのSCIAMACHY(Frankenberg et al., 2009)、地上観測網としてレーザー分光計が世界各地のGNIP観測点に設置された場合のOSSEについて解析した論文がJGR-Atmos誌に掲載された(Yoshimura et al., 2014)。
また、申請者が分担者の金とともに2013年6月より行っているつくば市真瀬の試験水田での水蒸気同位体比観測を継続した。降水や土壌水分の同位体比分析を行うための新たなレーザー分光分析計(L2120-i)を導入した。世界で初めての水田上での年間を通した水蒸気同位体比観測を行い、蒸発散フラックスの成分分離を試みたところ、LAI(葉面積指数)の増加と共に蒸散寄与率FTが上昇するが、その上昇率はLAIが低い時により大きいことが分かった(FT=0.67*LAI**0.25)。この研究成果はWater Resources Research誌に投稿し、現在改訂中である(Wei et al., submitted)。
また、本研究の応用として、アフリカ西部ニアメで観測された水蒸気同位体比の時間変化について、モデルシミュレーションを行い、季節進行に伴った同位体比の変動がENSOの影響でパターンが変化することを発見した。このことは、この特徴を用いることでニアメ付近のプロキシーデータからENSO記録を復元できる可能性があることを示唆している。この研究は、Atmospheric Chemistry and Physics誌に掲載された(Okazaki et al., 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主だった論文(謝辞付)を3篇(うち投稿中1篇)、関連した論文を10篇以上出版することができたほか、水田での水蒸気同位体比観測及びその解析も順調に進み、概ね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル結果からシミュレートした理想的な観測ではなく、実際に上記の測器から得られた観測データを同化システムに投入し、現実の気象場の解析を行う。しかしながら、使用する同位体大循環モデルと衛星から得られる水蒸気同位体比データには無視できないバイアスが存在するため(Yoshimura et al. 2011)、その対処に多くの実験と根本的なシステム改良が必要になる可能性が考えられる。一つはアノマリ同化(バイアスは無視して偏差成分のみで同化する)手法の利用である。総観規模での大気場の時空間変動の再現を目的とするような場合はうまく働く可能性がある。 さらに、降水同位体比をデータ同化する手法について検討する。降水同位体比の観測は様々な場所で行われているが、データが時間平均値であることが水蒸気同位体比やほかの気象データと大きく異なる。データの時間間隔も、短くて1日、多くは月単位であり、そのような時間平均データを用いた同化システムの開発そのものは当該分野における大きな挑戦である。 さらに、つくば市真瀬の試験水田での水蒸気・表層水同位体比観測を継続する。そういったレーザー分光計を用いた水蒸気同位体比観測は世界各地にて行われており、それらのデータを収集し、データ同化システムへの投入データとして整備する。また、同位体領域モデル(IsoRSM)を用いた水同位体比データ同化システムを構築し、全球版で行った理想実験を実施する。
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Causes of Carryover |
研究費を効率的に使用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の論文投稿費用として使用する。
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Research Products
(16 results)