2014 Fiscal Year Annual Research Report
光導波路分光法を用いたオンサイト・リアルタイム網羅的環境中重金属分析技術の開発
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26289178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 久 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80326636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 幸司 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (30348825)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 助教 (40515334)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境分析 / マイクロ・ナノデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカドミウム分析システムの開発に着手した。本研究グループではこれまでにZn、Cd、Hgを選択的に検出する変色型蛍光色素(BDP-TPY)を開発した。この色素を用いてCdを分析するために、水中のCdを精製する技術を開発することとした。Kallmannらは、Zn、Hg、Cdの塩化物(Cl)イオン錯体(陰イオン)の安定度定数が異なることを利用して、陰イオン交換樹脂を用いてCdを精製する方法を報告している.この方法を参考に、以下の方法でCdを精製することを試みた.陰イオン交換樹脂(1×8 200-400、DOWEX)をカラム(Disposable Polypropylene Column、1-5 mL、Thermo)に0.5 mL充填した.Cl濃度を調整したCdと他の金属の混合液をこのカラムに通すと、Cdはカラムに保持され、他の金属はカラムから排出される. 0.1 M HClを用いて玄米からCdを抽出した。抽出液を上述のカラムに通しCd精製効率を求めた。玄米抽出液中のCd濃度は0.043 mg/L(量は0.86 ug)であった.流出液および洗浄液中にはCdは検出されず、溶出液中のCd量±標準偏差は0.90±0.04 ug (n=6)であり、回収率は105±4%であった.玄米抽出液中のZn、Cu、Fe量はそれぞれ83、9.0、24 ugであり、そのほとんどが流出液とともにカラムから排出された.回収液中のZn、Cu、Fe量はそれぞれ検出限界以下、0.01 ug、検出限界以下であった.この結果から、本精製法で玄米抽出液中のCdを極めて高純度に精製できることが明らかになった.この精製液をナノマテリアルと混合し、玄米中のCdを分析することに成功した。 このように、Cd特異的ナノマテリアルを開発することに成功し、当初の研究目的を達成した。さらには、玄米中のCdを分析することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「平成26年度の研究実施計画」では、Cd特異的ナノマテリアルを開発することが目的であったが、実際には、Cd特異的ナノマテリアルの開発に加えて、玄米中のCdを分析することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はナノマテリアル(NM)をセンサチップに固定化する。 NM-7への固定化部位の導入:メトキシカルボニル末端を有するアリールボロン酸エステルを鈴木‐宮浦クロスカップリング反応を用いてジクロロBODIPYの一方の塩素に導入する。その後、もう一方の塩素に第2級アミンであるジピコリルアミンを芳香族求核置換反応させることでキレートを導入する。最後にメトキシカルボニルのメチル基を脱保護することで固定化部位としてカルボキシ末端を持つNM-7が完成する。キレートの種類によらずセンサチップ上に定量的に固定化できる固定化部位をいくつか選定し、最適なものを決定する。環境サンプル分析の際に支障がないよう、日常光に対する耐光性、熱水に対する耐熱性、pH3~12までの範囲の耐pH性、酸アルカリなどに対する耐薬品性、を検討する。固定化部位の物理的柔軟性もセンサの検出下限値に多大な影響を及ぼす。従って、導入する固定化部位の分子量や構造を変え、NMの自由度を変更するとともに最適化する。さらに固定化量はセンサ特性に大きく影響を与える。ポリエチレングリコールを含む自己組織化単分子膜を一定の比率でセンサチップに固定することで、センサチップ上のNMの密度を制御するとともに、センサチップの疎水性を高める。 NM-7センサチップおよびセンサアレイチップの開発:光導波路(石英ガラス板)をピラニア溶液で処理することで光導波路表面の水酸基を活性化する。つづいて、シランカップリング剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のトルエン溶液に光導波路を浸漬し、加熱することで光導波路表面にアミノ末端を修飾する。最後に、前年度にした固定化部位を持つNM-7、EDCおよびNHSをジクロロメタンに溶解させ、この溶液に光導波路を浸漬する。この系内ではNM-7のカルボキシ末端が活性化され、光導波路表面のアミノ基と反応することで最終的に光導波路表面にNM-7が固定化される。
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Causes of Carryover |
実験アシスタント雇用期間が予定していた期間よりも短くなったために支出額が小さくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度、予定よりも1ヶ月長く実験アシスタントを雇用する。
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Research Products
(6 results)