2015 Fiscal Year Annual Research Report
嫌気性膜分離リアクターを用いた下水処理技術の革新に関する研究
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26289179
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 玉友 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30201106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 俊昌 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10708598)
久保田 健吾 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80455807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 用排水システム / エネルギー回収型下水処理 / メタン発酵 / バイオマス / 膜分離技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低炭素社会に対応した革新的下水処理システムを開発することを目的として、嫌気性処理、機能性分離膜、凝集剤を融合させることで、水質確保とエネルギー回収の両立を実現できる創エネルギー型下水処理システムの研究を行う。具体的には、嫌気性古細菌群を分離膜によって高濃度に保持することで、下水処理の省エネルギー化、下水からの直接的なエネルギー回収、余剰汚泥の削減などの利点を持ちながら、良好な水質も確保できる、これまでなかった低炭素対応型革新的な下水処理システムを開発する。H27年度では次のように研究を進めた。 (1)処理水質のシミュレーション:AnMBRを用いた下水処理に及ぼす温度、滞留時間、汚泥濃度の影響について実験データに基づく動力学的解析を行い、得られた動力学定数を用いて異なる操作条件における処理水質のシミュレーションを行った。その結果、嫌気性膜分離法による下水処理は、温度とHRTの影響を受け、同一HRT条件で温度が低くなるほど、あるいは同一温度条件でHRTが短いほど分解率は低下した。また、シミュレーションモデル式から10-30℃の温度条件において汚泥濃度を高濃度に維持することで高い有機物除去率が達成できることを明らかにした。 (2)下水中に含まれる化学成分の影響評価:下水中には合成洗剤が含まれる。本研究では人工下水に代表的な界面活性剤であるPoly Oxyethylene Alkyl Ether(AE)を加えて、それによる処理性能への影響を評価した。実験ではラボスケール嫌気性MBRを用い、水理学的滞留時間(HRT)やAE濃度を変化させて運転を行った。その結果、COD除去率はAE濃度5-200 mg/Lの条件で96%以上であり、有機物除去への阻害は見られなかった。また、AE除去率は99%以上と高く、ほとんど分解されて最終的にメタンになることが分かった。一方AEの添加により、膜ファウリングの指標である膜圧増加速度の上昇が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画では、嫌気性膜分離法による下水処理に及ぼす重要な因子について動力学解析に基づくシミュレーションを行い、温度、HRTおよび反応槽内の微生物濃度の影響を把握することを計画したが、研究が順調に進み、様々影響因子に関するシミュレーションをできた。また、連続実験を通して界面活性剤の影響を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度と27年度はおおむね計画通りの成果が得られたので、平成28年度は、本システムの実用化を想定したシステムの最適化を軸として、研究を進めていく。具体的には次のように展開していく。 (1)トイレットパーパーの影響:下水には多くのトイレットパーパーが含まれることを考慮して、人工下水にトイレットパーパーを添加して処理水質、汚泥生成量およびバイオガス生成に及ぼす影響を把握するとともに、膜ファーリングへの影響も解析する。 (2)膜種類の影響に関する検討:本システムに最適な分離膜の選定を目的として、平膜、中空糸膜等の複数種の膜を用いた連続実験を実施し、それぞれの比較評価を行う予定である。これまでの研究では、塩素化ポリエチレン製のMF平膜を分離膜として使用してきたが、分離膜は形状、孔径、材質の違いによりさまざまな種類が存在する。その中で、分離膜毎の比較評価が充分に行われておらず、嫌気性処理との相性が良い分離膜が明らかになっていないのが現状である。分離膜を用いた排水処理においては、膜ファウリング(膜の性能低下)による運転性の低下が課題となっており、使用する分離膜により長期的な性能が大きく異なってくることから、種類を慎重に検討することが求められる。 (3)膜ファーリングの制御方法に関する検討:本研究では膜ファウリングを引き起こす因子の特定を行い、長期的な連続運転を可能とする運転方法、膜の洗浄方法の確立を目指す。 (4)システムの総合評価:各実験条件における処理水質、汚泥発生量、バイオガス生成量および膜フラックスを解析して水量、汚泥、ガスを含めた物質収支を把握するとともに、ケーススタディーを通して活性汚泥法と比較を行うことで、新しく開発したシステムの優位性を明らかにする。
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Research Products
(7 results)