2014 Fiscal Year Annual Research Report
水中の薬剤耐性菌による健康影響評価手法の開発と水再利用へのその適用
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26289180
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡部 徹 山形大学, 農学部, 准教授 (10302192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 了 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40422456)
伊藤 歩 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 健康影響評価 / 水再利用 / 定量的微生物リスク評価 / PK/PD理論 / 下水処理水 / 国際研究者交流 / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究項目1.抗生物質のPK/PDモデルに関する既存情報の整理】 水中に生息する病原微生物の中で,腸管感染症(一部は尿路感染症)を引き起こす代表的な種類である大腸菌と,呼吸器感染症を引き起こす緑膿菌を中心として,感染症の治療で通常用いられる抗生物質のリストを整備した。リストにある抗生物質のいくつかについて, PK/PD理論にもとづいた体内での動態解析に関する既存の研究情報の整理を行った。ただし,本年度ではすべての情報収集ができなかったため,次年度もこの項目を継続して行うこととする。また,大腸菌,緑膿菌に加えて,薬剤耐性が問題となる幾つかの細菌について,Dose-responseモデルの整備を行った。 【研究項目2.下水処理場(または畜産排水処理場)における耐性菌の調査】 処理場の規模や処理プロセスについてバラエティが高くなるように,国内の幾つかの下水処理場と畜産施設(処理水が放流される水環境も含む),そして,タイの首都バンコクの下水処理場(病院の排水処理施設も含む)を調査対象に選定した。国内のある処理場では,流入下水,初沈越流水,活性汚泥,返送汚泥,終沈越流水から,月1回の頻度で6種類の抗生物質に対する耐性菌の割合の変化を調べた。その結果,アモキシシリン耐性率は流入下水,初沈越流水では低く,活性汚泥,返送汚泥において高くなる傾向がみられたが,それ以外の薬剤については耐性率の変化に明確な傾向は見られなかった。国内のある畜産施設では,処理水中の大腸菌のテトラサイクリン系抗生物質に対する耐性率が,周囲の水環境からの分離株に比べて明らかに高かった。上記の現地調査では耐性試験にディスク拡散法を用いたが,この方法では菌株を死滅させるのに必要な抗生物質濃度(最小発育阻止濃度:MIC)を知ることができないため,幾つかの分離菌株についてはMICの測定も同時に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目1での抗生物質のPK/PDモデルに関する既存情報の整理では,一部アクセスが難しい情報もあり,本年度ではすべての情報収集が完了しなかったものの,その他については当初の計画の通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1での情報収集は次年度も継続して行う。その他については,研究計画を変更する必要はない。
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Causes of Carryover |
タイの処理場における調査について,研究代表者が受けている他の科学研究費補助金の研究課題の調査と合同で実施するように工夫したため,旅費の支出額が当初よりも少なかった。また,当初は外部専門機関での抗生物質の分析費用を見込んでいたが,研究分担者の所属機関で分析できる状況となり,「その他」の支出額が大きく削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は国内外での現地調査を充実させ,できるだけ多くの処理場で薬剤耐性菌のプロファイルを取得する(研究項目2)。主にそのための「物品費」と「旅費」として使用する。
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Research Products
(2 results)