2015 Fiscal Year Annual Research Report
多点リアルタイム地震観測データを用いた地震防災システムの実用化
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26289187
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
源栄 正人 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90281708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 晋 東北大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40361141)
三辻 和弥 山形大学, 教育文化学部, 教授 (90292250)
王 欣 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90610626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震防災 / 早期地震警報システム / 構造ヘルスモニタリング / システム同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、研究代表者らが、宮城県域を中心に複数の建物に設置してきたリアルタイム観測装置から東北大学に伝送される観測情報を有効に利活用し、地震防災システムとして実用化することを目的に、東北地方太平洋沖の本心データや頻発する余震データを用いたリアルタイム地震動予測や建物の振動特性に関するシステム同定技術の向上とシステム共有化を目指している。 平成27年度は、まず、通常時振動特性の常時モニタリング機能の実現として、通常時の各観測点連続観測データに基づき、建物の固有振動数の日変化、季節変化等の振動特性を分析した。建物の固有振動数の温度依存性について、RC造とS造の構造種別による違いや方向による違いに関する研究成果をまとめた。次に、地震時観測データの解析及び建物システムの同定と損傷予測として、地震観測システムを設置した建物の振動特性、さらに大地震時には、振動特性から推定される建物の損傷度をリアルタイムに評価するシステムを開発に取り組んだ。建物オンラインへルスモニタリングシステムを構築し、建物内に設置した複数の地震計で得られるリアルタイム加速度波形データからシステム同定を行うプログラムの検討を行った。また、建物振動モデルからの動的縮約モデルと観測データの突合せにもとづく、建物の振動モデルの精度向上に繋げるための検討を行った。さらに、前線波形情報を用いたリアルタイム地震動予測手法の開発として、震源により近い観測点や伝播経路の途中にある観測点の波形情報(前線波形情報)を直接利用して、S波到来の前に高精度な地震動予測を行う手法の開発を行った。関連ベクターマシン(RVM)や同化手法用いたリアルタイム地震動予測法を用いた手法の開発を行った。 研究成果については、米国地震学会や日本地震工学会における招待講演、および早期地震警報に関する研究集会や自然災害科学研究集会等で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、観測システムの通常時(定時サンプリング)と地震発生時(イベントサンプリング)の観測データを用いた観測情報の利活用システムの開発と観測データの分析を行うとともに、伝播経路の途中の観測情報(前線観測情報)を用いたリアルタイム地震動予測の開発を行った。 地域版リアルタイム地震観測システムとその利活用に関する全体像は、2015年米国地震学会での招待講演と2015年地震工学会の国際セッションにおける招待講演を行った。 通常時の建物の振動特性の常時モニタリング機能を実現するとともに、これまで蓄積された観測データを用いた研究成果として、建物の固有振動数の温度依存性に関する分析(構造種別や方向別の分析)をまとめ研究論文としてまとめ発表を行った。地震時観測データについては、観測建物の振幅依存の振動特性について分析するとともに、建物のオンラインヘルスモニタリングシステムを開発した。蓄積された過去の観測データを用いた建物の振幅依存性を分析した。特に、東北地方太平洋沖地震の記録を用いたシステム同定、および震災前後、震災後の耐震改修前後における振動特性の変化を分析し、研究発表を行った。 前線波形情報を用いた早期地震警報のためのリアルタイム地震動予測高精度化の研究として、関連ベクトルマシーン(RVM)を用いた手法の提案と過去の観測データを用いた適用性の検証は、査読論文として採択に至った。また、同化手法に基づくリアルタイムスペクトル予測の検討を行い研究会での発表とともに、論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、27年度に引き続いて完読データの保存・管理・解析を行い、観測システムから得らたデータの利活用による以下の項目について推進する。まず、リアルタイム地震防災情報と建物損傷度評価結果の発信として、これまでの常時微動観測データや地震観測データに基づき建物の振動モデルの検証を行う。地震発生時には、リアルタイム地震防災のための観測情報と地盤構造や建物のシステム同定などの解析結果を発信するとともに、各階の相対変形量や構造部材の応力推定による建物損傷度の即時評価システムを開発する。次に、防災教育への利活用として、研究開発項目で得られるオンライン・リアルタイム地震観測データを学校での防災教育活動や建設関係の技術者教育に積極的に活用することを試みる。研究成果のまとめ、および情報の共有化と交流のために、構造ヘルスモニタリングと早期地震警報をテーマしたシンポジウムの開催を予定している。
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Causes of Carryover |
平成27年度には、各観測点におけるリアルタイム観測情報処理のためのPC5台の購入を予定していたが、平成28年度に行う予定のリアルタイム地震防災のための各観測点の観測情報と地盤構造や建物のシステム同定などの解析結果の発信と建物損傷度評価のための解析をするための最新機器を導入することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析用PCを購入して各観測点におけるリアルタイム地震情報と建物のシステム同定の解析結果を発信するとともに、各階の相対変形量や構造部材の応力推定による建物損傷度の即時評価システムの実装を行う。また、各観測点からのデータを大学のサーバにリアルタイム伝送するための回線使用、さらに研究成果の発表のための旅費や投稿料、およびシンポジウム開催のための旅費や謝金等を予定している。
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Remarks |
東北大学研究シーズ集の「社会基盤」分野9件のうちの1つとして「構造ヘルスモニタリング機能を有する早期地震警報システムの開発」(源栄正人教授)が紹介されている。
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Research Products
(10 results)