2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26289191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (00335225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
簗瀬 佳之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00303868)
田中 圭 大分大学, 工学部, 助教 (00325698)
五十田 博 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40242664)
中川 貴文 国土技術政策総合研究所, その他部局等, その他 (60414968)
森 満範 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, その他 (60446341)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / 耐震診断 / モデル化 / 生物劣化 / シミュレーション / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
住宅の超長期使用への取り組みの主要な構造形態の一つは木質構造である。木質構造の長期使用において、木材や木質材料の生物劣化と強度に関する評価が重要であるが、その体系的な研究例は少なく、また木造住宅や大規模木造で多く使用されている接合金物を用いた場合の生物劣化と接合部強度に関する研究例も少ないのが現状である。そのため、これらのデータの蓄積、診断・取替えの判断基準の確立、そしてシミュレーションによる木造建築物の残存性能の評価などの研究を体系的に推し進めることを目的としている。 そこで、本研究では、課題1から4を設定して、この問題に対応している。本年度は、課題1として、既存の耐震診断プログラムに、生物劣化を仮定した荷重変形関係を接合部、耐力壁の値に入れることで、劣化をどこまで評価できるかについて検討し、耐力低下には耐力壁の値が占める割合が大きいことを明らかとした。今後、この耐力壁低下のモデル構築が重要となること、また課題2で準備を進めている耐力壁および接合部の劣化試験体との整合性を取ることが重要となることが確認された。課題2では実大試験体の生物劣化を始めており、試験体がある劣化状態になったところから随時試験を実施する予定である。課題3では、既往の文献調査をおこなっているが、事例が少なく、劣化した木材に新たに接合具を用いた場合についての実験的な評価が必要なことがわかった。課題4では、調査物件2棟しか得ることができなかった。来年度は、もう少し多くの事例を集められるようにしたい。 特に、課題1について、実験データの再整理を実施したことで、劣化した場合の耐力低下を盛り込んだ耐震性能評価に関する検討が進んだ。また、生物劣化を受けた接合具単体の耐力推定に関する結果も蓄積できたので、これらを組み合わせて、生物劣化を受けた木造の耐震性能に関する研究をより進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1については、耐震診断用のプログラムへの導入を実施し、その結果を学会発表に供した。しかし、使い勝手の良いデータベースの構築まではいっておらず、今後改良を進め、実験データを基にした生物劣化を受けた際の荷重変位の関係のモデル化を進める。 課題2については、実大耐力壁および接合部の生物劣化を始めており、予定通りである。今後、試験体の劣化が進んだところで実大強度試験に供する。 課題3については、木ねじを用いた接合具の耐力評価について、検討を進めており、学会発表や論文等を執筆し、順調に進んでいる。 課題4については、調査物件をあまり得られず2件の調査にとどまったが、文献調査を実施した。今後、より多くの調査ができるよう努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に対する大きな変更はなく、課題1については、プログラムのブラッシュアップとその入力データに関する考察を増やすことで、より上手に劣化を評価することが可能となると考える。また、データベースとしての機能性の向上を目指す。また、接合金物ごとの対応を目指した文献調査も拡充する必要があると考える。課題2については、生物劣化を受けた壁耐力壁の実験への挑戦、および接合部のデータの拡充を進める。これら実験をもとに、診断機器と試験結果の関係に関する多くのデータを蓄積する。さらに、補修でよいのか、取替えが必要なのかを判断するに関する知見の蓄積も図る。また、できるだけ安価な耐力壁等劣化手法の提案を進める。課題3については、課題2で用いた試験体を用いて、診断機器の計測値とあと施工時に補強用の金物を取り付ける木ねじや釘の劣化部材との関係を明らかにしていき、データベース化を目指す。また、これらより接合部の補強後の耐力推定を実施する。さらに、部材における劣化による耐力低下の影響範囲についても検討を進める。課題4については、引き続き調査物件を探し、できる限り実施してデータを蓄積し、簡易調査用の重要調査個所シートなどを確立したい。また、劣化個所における含水率や湿度の変化などのデータ蓄積も行ってみたい。そして、建物ヘルスモニタリング技術へとつなげて行きたい。
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Causes of Carryover |
年度末に、次の試験準備のために購入を考えていた試験体や機器の分が少し購入できなかったために、わずかの金額に違いが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験体の準備などを含めて、生物劣化させるために必要となるいくつかの消耗品などに、充当することで、早急に研究を開始する。特に大きな変更はない。
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