2015 Fiscal Year Annual Research Report
都市環境負荷削減の施策立案支援に向けたハビタットシステム汎用モデルの構築
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26289201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤司 泰義 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60243896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高口 洋人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90318775)
住吉 大輔 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60432829)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球・都市環境 / 都市環境負荷削減 / ハビタットシステム / 汎用モデル / 未来シナリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会動態を包含した都市の全体系をハビタットシステムと定義し、多都市に適用できるハビタットシステム汎用モデルの構築によって、環境負荷削減方策の導入と普及に応じて都市環境負荷を長期に予測し、実効的な施策立案支援を可能にすることのできるシミュレータ開発を行うものである。今年度は研究期間の2年目に当たり、得られた成果は以下の通りにまとめられる。 1)初年度に残された課題、すなわち、様々な都市で比較的容易に入手でき、継続的に整備される統計データに基づいて、汎用モデルに利用できるセクタの変数や活動量を選定し、ストック平均の環境負荷原単位の経時変化も内蔵したハビタットシステム汎用モデルを完成させた。 2)大規模都市(福岡県福岡市)、中規模都市(千葉県柏市)、小規模都市(三重県熊野市)を対象に、都市の活動量に関する1990~2010年のハビタット汎用モデルによる計算値と実績値を比較し、その計算精度を検証した。 3)対象都市においてCO2排出削減の施策に関する共通シナリオ(省エネ基準義務化、ZEB普及、次世代自動車導入)および独自シナリオ(福岡市:高断熱改修普及、柏市:太陽光発電普及、熊野市:人口維持)を設定し、シナリオ別のCO2排出削減効果、および総合施策によるCO2排出削減効果を定量的に明らかにした。 4)初年度にも検討した、ハビタットシステム汎用モデルにおける多変数間のグラフ関数パラメータを遺伝的アルゴリズムによって自動同定する手法について、妥当性と利便性の観点からその手法の改良を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、1)平成26年度(初年度):ハビタットシステム汎用モデルの完成、2)平成27年度:ハビタットシステム汎用モデルの利便化、ハビタットシステム汎用モデルの妥当性検証、3)平成28年度(最終年度):環境負荷削減シナリオ提案と削減可能量となっている。 平成26年度の研究成果としては、ハビタットシステム汎用モデルの完成には至らなかったものの、平成27年度に予定していたハビタットシステム汎用モデルの利便化に関する研究内容について、シミュレータのグラフ関数パラメータを遺伝的アルゴリズムにより自動同定する手法の開発を進めた。さらに、平成28年度(最終年度)に予定していたハビタットシステム汎用モデルの複数連成活用の可能性に関する研究内容について、都市間人口移動に対応する全国モデルの試作とシナリオ検討を行った。 これらの研究成果を受けて、平成27年度では、ハビタットシステム汎用モデルを完成させ、特徴の異なる3都市(福岡市、柏市、熊野市)を対象にその妥当性の検証を行い、さらに、シミュレータのグラフ関数を自動同定する手法の改善を行うなど、当初予定の平成27年度までの研究計画をほぼ遂行することができている。すなわち、平成28年度の研究実施に向けて、必要な研究成果を得ることができていると評価でき、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、まず、平成27年度までの研究成果に基づいて、1)ハビタットシステム汎用モデルの妥当性と利便性を一層高めることが必要である。また、2)様々な環境負荷削減方策を組み合わせた2050年までの多様な環境負荷削減シナリオを生成し、その際の削減可能量を明らかにする。同時に、3)構築したハビタットシステム汎用モデルを複数都市で連成させ、ある都市の環境負荷削減方策が周辺都市にどのように波及するのかを事例的に明らかにし、将来的な研究課題への足掛かりとして、汎用モデルの複数連成活用の可能性について検討を進める。さらに、4)東京都や地方都市の施策立案に関わる実務者との情報交換を通して、施策立案支援ツールとしての有用性を評価し、今後の活用方法や課題などを協議する。 平成28年度が本研究の最終年度であることから、1)~3)については、これまでと同様に2か月に1回程度の定期的な研究会を開催し、全員の連携のもとで研究を進め、研究成果を国際会議等で発表する。また、4)については、施策立案支援ツールとしての有用性をアッピールするパンフレットや利用方法を記述したマニュアルの作成を行うと共に、実務者を交えたワークショップやミニシンポジウムを開催することを考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度の未使用分が平成27年度の未使用分にほぼ持ち越された。平成26年度の未使用分は、ハビタットシステム汎用モデル完成に向けた研究協力者(大学院生、各研究室1名、計3名)への追加的なアルバイト謝金(統計データの整理や文献調査など)と研究会参加旅費を予定していたが、研究者と研究協力者が一堂に会した数回×数日の集中的な作業が効率的な研究推進につながり、追加的な謝金と旅費が不要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費の減額に伴って国際会議への参加・発表費を削減していたが、本研究成果の国際的な発信が学術的な発展に寄与すると共に、それによって今後の研究展開に有意義な意見等が得られることが期待されることから、平成27年度の未使用分を平成28年度の国際会議への参加・発表費に充てることとする。
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Research Products
(11 results)