2015 Fiscal Year Annual Research Report
覆屋とその周辺地盤が露出展示遺構の劣化に及ぼす影響に関する検討
Project/Area Number |
26289203
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鉾井 修一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80111938)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 大輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283868)
脇谷 草一郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (80416411)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 遺構展示 / 覆屋 / 地下水 / 蘚苔類 / 塩 / 酸化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
平城宮遺構展示館を具体的な対象として、文化財を保護しつつ公開するための施設が文化財に与える二次的な被害を分類・リストアップし、劣化の原因を定性的・定量的に明確にすることにより、露出遺構の劣化に関する基礎的な資料を収集整理し、適切な覆屋の設計法を提案することを目的として、以下の検討を行った。 1.劣化の現状把握:昨年度に引き続き定期的および集中的な目視観察により、水分流入、カビ・藻・苔の成長、塩の析出、土壌の浸食、赤錆などの劣化の性状を把握した。さらに基礎情報として展示館周辺の気象観測、展示館内部の温湿度を観測した。2.劣化の原因究明:①遺構面および法面への水分流入の位置・直近の降雨などより、展示館周囲のどこからの流入水かを推定した。②カビ、藻、苔の生育箇所・季節的変化と直近の降雨との関係、照度との関係を調べ、成長の原因をほぼ明らかにした。③塩の析出箇所とその季節的変化と水分流入・降雨・日射量との相関を調べ明確にした。これらも昨年に引き続き調査検討したもので、昨年度の推定を確認強化する結果となった。④遺構面・法面の小さな窪みの拡大・形成の観察、礫・小石の剥離の観察結果よりそれらの形成原因を探り、昆虫による可能性が大きいという結論に到った。⑤赤錆の発生箇所と規模、その季節変化の観察結果と降雨、地盤温度との相関を調べ、その発生メカニズムを推定した。⑥展示館内部の照度・日射量分布を測定し現状を把握し、それが藻の成長に及ぼす影響を明らかにした。⑦地盤内部の熱水分移動を含む解析モデルを作成し、展示室内の温湿度をほぼ再現できることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きなトラブルもなく、当初想定していたように進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.劣化の現状把握:26、27年度と同様の観測を継続し、季節変化、劣化の進行などを明確にする。2.劣化の原因究明:これについても26、27年度の検討を継続、展開する。①地盤内水分の流れ:26年度に作成した地盤内水分流解析モデルを改良し、測定値との一致度を改善する。②土壌の浸食:26、27年度の調査を継続し、推定した浸食原因、すなわち昆虫が劣化を惹き起こすプロセスを明確にする。④展示館内部の日射量・照度分布の測定と解析:各部の詳細な分布、ブラインドなどの日射遮蔽建具の設置や開閉による室内照度の変化をシミュレーションにより求める。3.酸化鉄発生メカニズムの解明:①27年度の検討結果を基礎として、現在の発生状況を再現する解析モデルを作成する。②少量の水を雨落ち溝に流し、酸化鉄の除去可能性を調べる。4.露出展示のための施設の設計法とメンテナンス:以上の結果をもとに、露出遺構の劣化を極力抑制する展示施設の設計法および建設後のメンテナンスのあり方を明確にする。
|
Causes of Carryover |
購入物品の金額が予定より低かったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品、旅費などに有効に使用する。
|