2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒューマンファクターを組み込んだ空調システム・制御システムの構築
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26289207
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
近本 智行 立命館大学, 理工学部, 教授 (60388113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 孝之 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30318894)
李 明香 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00734766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 建築設備 / 人体の温冷感 / ヒューマンファクター / 空調設備 / 省エネルギー / 快適性 |
Outline of Annual Research Achievements |
〇ヒューマンファクターの解析:人は一日の外気温変化を日常生活で感じている。外気温が高い時間帯では室内環境に対する期待が緩和され、快適感を損なわずに設定温度そのものを緩和することが可能である。今年度は、短期の時間スケールの設定に応じて人体周辺環境の温度の振れ幅を制御できる実験施設の整備を図り、性能を確認した。次年度は本施設を活用し、被験者実験を実施予定。また、今年度、パーソナル空調及び放射空調を用いた空間での被験者実験により、温度の変動・振れ幅の影響が快適性に与える影響に関して調査した。 〇個人が携帯できる超小型センサーの活用検討:被服内気候などを推測することができるか検討を実施。次年度は、室内のセンシング情報を人体温冷感モデルの境界条件として利用することで、その活用を検討する。 〇個人差に対応した空調システムの検討:空気砲から送出される渦輪気流は直進性が高く、噴出した空気を拡散せず直接ターゲットに当てることが可能である。そこで渦輪を連続放出可能で、かつ送出間隔も調整可能なパルス気流送出ユニットを作成し、高速度カメラおよび高機能流体解析ソフトを用いたPIV(粒子イメージ流速計測法)により、渦を巻きながら進行し、進行方向と異なるベクトルを持つ流れを内包している渦輪気流を、各種条件下で進行速度、到達流量の計測を実施した。到達流量の定量的な計測にあたっては、送出装置内にトレーサーガスを充填しサンプリングボックスに向かって送出し、濃度変化を測定することで算出した。今年度は等温流体での実験であったが、次年度は非等温流体を用い、比熱が明確なサンプルに渦輪を衝突させ、サンプルの表面の温度変化から到達した熱量を算出することで、渦輪による熱搬送能力の測定を行う。またSTREAM解析用Workstationを用いたCFD(コンピュータによる流体解析)を実施しており、定量化及び実験結果の検証を予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では制御の中心に人間を置くことで「空間を対象とした環境制御」から「人間の環境制御」へと、より制御対象の焦点を絞ることを検討することとしている。省エネルギーな空調の運用を継続・定着させるためには、個人の人体レベルの生理反応や心理状態に応じた自然な運用を行うことが大切である。例えば、人体の熱的適応能力であるアダプティブ性能や、人体の余剰熱を取り去る工夫により、不快感による作業効率の低下などを招かないことが可能となり、冷やしすぎ、暖めすぎによる自律神経への影響も防ぐ。本研究では、室内の快適性を維持・向上させつつ、省エネを実現する次世代型空調システム制御の実現を目指すものである。 本研究では、個人の温冷感を把握する技術としてアダプティブをベースにしたヒューマンファクターの解析とモデルへの組み込みを行うこととしている。同時に建物への実装につながる技術開発としてパルス気流制御技術の開発をベースにした空調システムとその制御方法の研究を実施するものである。 このために、研究期間内に、①ヒューマンファクターの解析、②ヒューマンファクターの人体モデルへの組み込み(平成27年度からスタート)、③BEMS 利用の温冷感申告に対する空調のフィードバック(平成27年度からスタート)、④個人が携帯できる超小型センサーの活用検討、⑤個人差に対応した空調システムの検討、を実施予定であるが、研究実績にも記述の通り、研究計画書に従い、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
①ヒューマンファクターの解析:短期の時間スケールの設定に応じて人体周辺環境の温度の振れ幅を制御できる実験施設を活用し、被験者実験を実施。短いタイムスケールに対するヒューマンファクター検討として、時間周期として10~30 分の環境振動を与えた場合の人体の生理量変化を脳血流量、発汗センサーなどで計測し、その心理量変化の解析を行う。また、パルス変化に対するヒューマンファクター検討として、渦輪をパルス的に人体にあて、パルス幅を制御することで、人体への冷却量を自由に制御することを検討する。 ②ヒューマンファクターの人体モデルへの組み込み:ヒューマンファクターによる温冷感修正情報を、既往の人体温冷感モデルに組み込み、人体熱モデルと快適温度への導出を可能とするモデルを検討。 ③BEMS利用の温冷感申告に対する空調のフィードバック:ヒューマンファクターを組み込んだ制御ロジックの開発を進め、実建物での運用と、被験者の満足度調査から、最適なフィードバック制御を検討。 ④個人が携帯できる超小型センサーの活用検討:室内のセンシング情報を人体温冷感モデルの境界条件として利用することで、被服内気候などを推測することを検討。 ⑤個人差に対応した空調システムの検討:平成26年度に渦輪を連続放出可能で、かつ送出間隔も調整可能なパルス気流送出ユニットを作成し、渦輪の性状を検証したが、27年度には空調機設置を前提としたユニット開発を目標とし、モックアップを作成する。送出ユニットは在来の天井カセット型ビルマル室内機のフェース面をイメージしていたが、冷気溜まりの確保も踏まえ、空調機吹出口全般に対象を広げ検討。また非等温流体を用い、比熱が明確なサンプルに渦輪を衝突させ、サンプルの表面の温度変化から到達した熱量を算出することで、渦輪による熱搬送能力の測定を行う。またCFDによる定量化及び実験結果の検証を予定。
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Causes of Carryover |
短期の時間スケールの設定に応じて人体周辺環境の温度の振れ幅を制御できる実験施設の性能検証、および渦輪を連続放出可能で送出間隔も調整可能なパルス気流送出ユニットによる渦輪の性状検証が、年度末まで実施され、被験者の確保が十分に行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被験者実験及び実験実施に必要な消耗品費用として利用。
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